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AGA対策

枕元の抜け毛は将来の薄毛の予兆?本数の基準や改善方法を解説

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監修ドクター
高田弘弥
日本医科大学形成外科学教室・抗加齢予防医学講座教授 医学博士・工学博士 【略歴】京都大学大学院工学研究科,名古屋大学大学院医学系研究科修了後,イギリス・ウォーリック大学,フランス国立科学研究所へ留学,日系化粧品会社所長代理・フランス系化粧品会社マネージャを経て,2018年より日本医科大学付属病院形成外科講師,現在同教授 【受賞歴】第11回世界毛髪研究会議(国際毛髪会議)最優秀賞(口頭発表部門),バルセロナ(スペイン),2019年など

「朝起きたときに枕についている抜け毛が増えた」「将来薄毛になる前兆かもしれないと心配」など、枕につく抜け毛に対して不安を感じている方もいるのではないでしょうか?

通常、私たちの髪の毛は抜けては生えるということを繰り返しています。ですので、枕に抜け毛がつくというのは不自然なことではありません。ただ、枕につく抜け毛が異様に多い場合やその状態が長期的に続いている場合は、AGA(男性型脱毛症)を発症しているかもしれません。

枕に付着した抜け毛やその数の増加は将来の薄毛につながるのでしょうか?また、抜け毛を改善するにはどうすればいいのでしょうか?今回の記事では、枕に抜け毛が付着する原因や枕につく抜け毛の本数の基準、AGAとの関係性、改善方法などを説明します。

枕につく抜け毛はどれくらいが正常?

枕に付着する髪の毛の本数はどれくらいが正常なのでしょうか?

松山淳氏の論文1)によると、毛髪は「1日50〜100本くらいは抜けても生理的範囲内である」とされています。平均で約68本の毛が抜けるというデータもありますが、抜け毛の本数には個人差があります。

アンファー株式会社の調査では、起床時に枕に残った抜け毛で不安を感じるボーダーラインは合計本数が13.7本を超える場合でした。これ以上の本数が抜けるというときには、通常よりも抜け毛が多いかもしれません。

1)松山淳. 臨床発毛医学の現状と展望 2018. 国際抗老化再生医療学会雑誌第一号. 2018, 25−30.

抜け毛が起こる仕組み

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では、枕につくような抜け毛はどのような仕組みで発生するのでしょうか?

髪の毛は、生えてから抜け落ちるまでに、毛周期(ヘアサイクル)という以下のようなサイクルを繰り返しています

  • 成長期:2~6年

  • 退行期:2~3週間

  • 休止期:3~4 ヶ月

成長期は、髪を作る毛母細胞が分裂・増殖して髪の毛が成長する期間です。この成長期には毛髪は成長しつづけますが、一定期間ののちに退行期に移ります。退行期に移行すると髪の毛の成長は止まり、毛根の短縮化が始まります。その後、休止期に入り毛根が完全に退化し脱毛が起こります。そしてまた成長期が訪れ髪の毛が生えます。

このように、毛髪は成長し脱毛するというサイクルを繰り返しており、脱毛するのは髪の毛が生え変わるプロセスにおいて普通のことなのです。

枕に抜け毛が大量に付着する原因とは?

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枕に髪の毛が付着するのは、上で説明した毛周期において毛髪が休止期を迎えるからです。しかし、大量に髪の毛が枕についているという場合は、何かしらの異常が起きている可能性があります。ここでは、枕に大量の抜け毛が付着する原因を説明します。

AGAを発症している

枕に付着する抜け毛が増えたと感じる方は、男性型脱毛症(AGA)を発症しているかもしれません。アメリカ脱毛症協会によると、男性にみられる薄毛の95%はAGAであることがわかっています2)

AGAでは、毛髪の成長期が短くなることで脱毛が増え、最終的に生えなくなる髪の毛の割合が多くなってしまいます。日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版3)では、AGAは「毛周期を繰り返す過程で成長期が短くなり、休止期にとどまる毛包が多くなる」「前頭部や頭頂部の頭髪が、軟毛化して細く短くなり、最終的には頭髪が皮表に現れなくなる現象」と説明されています。

AGAを発症すると毛が抜ける期間が長期化するため、抜け毛の量が増えてしまうのです。

薄毛の大きな原因はAGAなので、枕の抜け毛が増えたという人はAGAを疑うのがよいでしょう。AGAを自分でチェックする方法は以下で説明しているので参考にしてください。

2)Paul J. McAndrews, American Hair Loss Association(アメリカ脱毛症協会) 3)眞鍋求, 坪井良治, 板見智 他, 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版. 日皮会. 2017, 127, 2763–2777.

病気を発症している

薄毛や脱毛の大きな原因はAGAですが、AGA以外の病気を発症している可能性もあります。

脱毛を伴う病気には、脂漏性脱毛症や円形脱毛症、粃糠性脱毛症などが挙げられます。これらは様々な原因によって起こります。

木下美咲氏の論文4)では、「脱毛症はその種類、原因により特徴的な分布や形状を呈しやすい」「脱毛症のパターンからそれに関連する全身・他臓器疾患を推測することが可能」とされています。そのため、医療機関で頭皮の状態や脱毛パターンを確認してもらい、病気の診断をしてもらうのがよいでしょう。

4)木下美咲, 毛髪と全身・他臓器疾患. 杏林医学会雑誌. 2018, 49-2, 163–167.

頭皮環境の悪化

頭皮環境が悪化すると、通常よりも抜け毛が多く発生することがあります。

頭皮は全身のなかでも最も皮脂腺が集中している場所です。皮脂が多く出ることで頭皮環境が悪化しやすいといえます。また、成人男性の頭皮の皮脂量は女性よりも多く、皮脂によるトラブルが起こりやすいです。

このように男性の頭皮は状態が悪化しやすいため、湿疹や痛み、かさぶたなどの頭皮トラブルを引き起こすことがあります。それによって健康的な髪の毛が成長せずに脱毛が増加する可能性があります。

健康な頭皮の状態に関しては、以下の記事で紹介しています。

洗髪の有無

就寝前に洗髪をしていなかったことで、枕に抜け毛が付着している可能性もあります。洗髪をすることで退行期の抜けやすい毛は落ちますが、洗髪をしないとその分の毛髪が睡眠中に抜け落ち枕につくのです。

北史男氏らの論文5)では、「抜け毛はブラッシングなどによっても生じるが、洗髪時の方がはるかに多いように思われる」とされています。退行期の髪の毛は自然と抜け落ちますが、洗髪時の摩擦がきっかけで抜けることも多いです。

寝る前に洗髪していない人は退行期の髪の毛が抜け落ちていない状態なので、枕に抜け毛が付着しやすくなるのです。

5)北史男, 金田宣, 渡辺靖, 抜け毛の動態を指標とした育毛剤の評価法. 1989, 31-4, 548-562.

睡眠環境

睡眠環境がよくないことで抜け毛が発生する場合があります。

寝具が清潔でないと雑菌が繁殖してしまいます。枕の菌が頭皮に移って繁殖すると、頭皮環境が悪化して脱毛を引き起こしてしまうことがあります。枕は皮脂や汗が付着しやすいため、定期的に洗うことが大切です。

また、寝相が悪いと髪の毛が強く引っ張られてしまい、髪の毛が抜けてしまう可能性があります。寝室の環境が悪いと睡眠の質が低下してしまい、寝返りが多くなることがあるので注意しましょう。寝相が悪いという方は、温度や湿度、明るさなどにも注意して、睡眠環境の改善を行うのがよいかもしれません。

季節的要因

枕に付着する抜け毛は、季節的要因によって起こる場合があります。

また、British Journal of Dermatologyに掲載された論文6)によると、2004年から2016年にかけて実施された8カ国に対する調査で、「抜け毛」と検索する人の数はすべての国で夏や秋に多くなることがわかっています。

そして、ショーン・クワトラ医学博士は、本来髪の毛は暖をとるためや頭を守るために生えているが、夏になると冬に少し多めに生えた分の髪が不要であると体が判断して抜けるのではないかと推測しています。

季節を問わずに抜け毛が続くという場合は、脱毛症など他の原因を疑いましょう。

6)E.Y. Hsiang, Y.R. Semenov, C. Aguh, S.G. Kwatra, Seasonality of hair loss: a time series analysis of Google Trends data 2004–2016. British Journal of Dermatology. 2017, 178, 978-979.

ストレス

ストレスは毛髪の成長に影響を及ぼすため、ストレスが大きくなると抜け毛を増加させる可能性があります。

神永博子氏らの論文7)によると、「ストレスは肉眼的に被毛成長を低下させると共に、毛長、毛径の有意な低下を引き起こすことが明らかになった」とされています。

ストレスは成長ホルモンの分泌にも影響するので、抜け毛の増加だけでなく、健康的な髪の毛が成長しにくくなるという作用も及ぼします。

7)神永博子, 臼井俊博, 四宮達郎, ストレスが被毛成長に及ぼす影響について. 2001,111-1, 21-26.

枕に付着する抜け毛を改善する方法

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では、枕に付着する抜け毛を減らすにはどうすればいいのでしょうか?

医療機関に相談する

枕に大量の抜け毛が付着する場合、AGAやそれ以外の脱毛症を発症している可能性があります。こういった原因を調べ治療をしたいなら、まずは医療機関に相談するとよいでしょう。

AGA専門クリニックや病院の皮膚科では、遺伝子検査や血液検査などを行ってもらえますし、医師に診断をしてもらえます。こういった医療機関では、症例データを豊富に保有していますし、最新情報に基づいた治療を行ってもらえます。

抜け毛を放置したり、自己判断によるケアを行ったりすると、抜け毛の状態が改善されない可能性があります。専門知識をもつ医師に診断してもらうことが重要です。

抜け毛や薄毛の相談先に関しては以下の記事で詳しく解説しています。

正しい方法で洗髪する

枕の抜け毛を改善するためには、正しい方法で洗髪するのもよいです。

洗髪によって退行期の毛髪を落とすことができますし、汗や皮脂、菌などをシャンプーでしっかりと落とすことができます。こういった汚れをしっかりと落とすためには、髪と頭皮を濡らした後に適量のシャンプーを泡立て、指の腹で頭皮をマッサージするように洗髪しましょう。

1日に何度も洗髪してしまうと、必要な皮脂まで取り除かれてしまいます。1日1回、就寝前にシャンプーをするとよいでしょう。また、細菌が増えないように髪の毛を乾かしてから寝るようにしましょう。

睡眠環境を見直す

抜け毛を改善したい方は、睡眠環境を見直すのがよいです。

枕カバーやシーツは清潔な状態か、定期的に洗っているかどうかを確認しましょう。

また、寝相が悪くならないためにも質のよい睡眠をとることが大切です。枕の高さを自分に合ったものにする、寝室の温度や湿度を調整する、入眠時に光を浴びない、自分に合ったマットレスを使用するなどがよいでしょう。

頭皮マッサージを行う

頭皮マッサージを実施することで、抜け毛を改善できるかもしれません。

Dクリニックによる研究では、24週にわたって頭皮マッサージマシンで刺激を与えたところ、健常男性の毛径が増大することがわかりました。

これは、「毛髪の成長をコントロールする毛乳頭へ伝わった力学的刺激が毛周期に関与する遺伝子の発現に影響を及ぼしている可能性」によるものとされています。現在は頭皮ケア専用のマッサージ機なども数多く展開されているので、ケアの一環として取り入れてみるとよいでしょう。

まとめ:枕の抜け毛は放置せずに早めの対策を

枕についた抜け毛が気になるという方は、まず原因を明らかにすることが大事です。AGAなどの脱毛症を発症している可能性がありますし、他の病気が原因かもしれません。もしAGAなどの脱毛症を発症している場合は、放置してしまうと状態が悪化し、薄毛が進んでしまう恐れがあります。早めに原因を特定し対策を行いましょう。

季節を問わずに枕につく抜け毛がひどい場合や、軟毛化などAGAの症状がみられる場合は、医療機関を受診しましょう。専門的な知識に基づいた診断と適切な治療を受けることができます。

枕の抜け毛の増加は将来の薄毛を招く可能性があります。早めに診断をし、治療をスタートすることで悪化を防ぐことができるはずです。枕の抜け毛は放置せず、薄毛などのサインだと思って病院などで診察してもらいましょう。

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