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AGA対策

ヘアサイクルとは?その仕組みと薄毛や抜け毛との関係、改善方法を解説!

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監修ドクター
高田弘弥
日本医科大学形成外科学教室・抗加齢予防医学講座教授 医学博士・工学博士 【略歴】京都大学大学院工学研究科,名古屋大学大学院医学系研究科修了後,イギリス・ウォーリック大学,フランス国立科学研究所へ留学,日系化粧品会社所長代理・フランス系化粧品会社マネージャを経て,2018年より日本医科大学付属病院形成外科講師,現在同教授 【受賞歴】第11回世界毛髪研究会議(国際毛髪会議)最優秀賞(口頭発表部門),バルセロナ(スペイン),2019年など

抜け毛や薄毛に悩む人の中には、「ヘアサイクルの乱れが薄毛を引き起こす」という話を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。では、へアサイクルとはどのようなもので、髪に対してどのような影響を与えるのでしょうか。また、ヘアサイクルが乱れたとして、正常に戻すことはできるのでしょうか。

この記事では、ヘアサイクルとは何か、その仕組みや薄毛との関係性、ヘアサイクルが乱れる原因を解説するとともに、ヘアサイクルを正常に保つケア方法を紹介します。

ヘアサイクルとは

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ヘアサイクルとはどのようなものなのでしょうか。まずはヘアサイクルの意味や働きを紹介します。

ヘアサイクルの意味

ヘアサイクルとは、髪が生えてから成長した後に抜け落ち、また生えるという循環のことを言います。

髪の毛は、頭皮にある「毛包」という器官から作られています。この毛包は成長したあとに成長を止め、抜け落ちることになります。「毛包は再生と退行を繰り返す独特な器官であり、毛が伸びる成長期(Anagen)、毛が抜ける準備をする退行期(Catagen)、毛が抜け落ちるまでの時期である休止期(Telogen)があり、この一連のサイクルを毛周期(Hair cycle)と呼ぶ」とされています1)

この期間としては、「2~7年の成長期の後、約3週間の退行期を経て休止期となり、 約3か月後に抜け落ちる」と説明されています2)。そして、頭皮には多くの毛包があり、「一斉に生え変わりすることがないようにそれぞれの毛包で別々に毛周期を回って」います。 日本化粧品技術者会によると、「約85〜90%の頭髪が成長期にあり、10〜15%が休止期に、1%が退行期にある」とされています。

このように、ヘアサイクルには成長期・退行期・休止期があります。それぞれにどのような特徴があるのか、詳しく紹介します。

1)行方昌人, 毛周期選択的な毛乳頭細胞における転写因子Meis1の核内移行と毛成長制御, 2020 2)横山大三郎, 男性型脱毛症と育毛有効成分, 油化学1995年44巻4号 p.266-273

成長期

成長期は、髪の毛が成長して伸び続ける時期です。成長期では、「毛根にある毛母細胞が活発に分裂を繰り返して最奥を押し上げることで、太く長い毛を成長させる」とされています3)

ヒトの頭髪の場合、成長期は2〜7年と言われており、ヘアサイクルのほとんどの期間を占めています。

成長期には早期・中期・後期があります。早期では頭皮の下に新しい毛が生まれ、古い毛を押し出すことで毛が抜け落ちます。中期には、毛根が成長することで新しい毛が頭皮に出てきます。後期でその毛が成長し太い毛として成長します。

3)影山達斗,毛髪再生医療を目指した毛包原基の大量調製に関する研究, 横浜国立大学大学院. 2017

退行期

成長期が終わると、髪の毛の成長が止まる「退行期」に入ります。

退行期になると髪を成長させる指示を出す毛乳頭の活動が止まり、髪を作り出す毛母細胞の細胞分裂が停止します。それによって髪の毛の成長が止まります。

ヘアサイクルにおける退行期は約3週間ほどと言われています。この間に毛母が徐々に小さくなり、新たな髪の毛を作り出す準備を行います。

休止期

休止期は毛髪の成長が止まり、新しい髪を作る準備をする時期です。休止期では古い毛の成長は止まりますが、毛穴の奥では毛乳頭が再び活動を始め、新たな毛が生み出されます。この休止期は約3ヶ月ほどと言われています。

その後、成長期に移り古い毛が押し出されるようにして自然と抜け落ちます。毛髪にはそれぞれにヘアサイクルがあるので、1本1本の毛が生え変わるタイミングは異なります。頭髪全体では成長期の毛が85〜90%を占めているので、ヘアサイクルが正常であれば、抜け毛があっても見た目に変化は起こりません。

ヘアサイクルと薄毛の関係

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ヘアサイクルの仕組みについて説明してきましたが、薄毛の症状とヘアサイクルには関係があります。ここでは、ヘアサイクルと薄毛の関係性を紹介します。

ヘアサイクルは乱れることがある

ヘアサイクルでは成長期・退行期・休止期を繰り返しますが、このサイクルは常に一定ではありません。ヘアサイクルは、様々な原因で乱れることがあります。

ヘアサイクルが乱れると、髪の成長期間が短くなってしまいます。通常、成長期は約2〜7年ほど続きますが、頭皮環境の悪化や毛根の活力低下などが起こることで、数ヶ月〜1年程度に短縮されてしまいます。

ヘアサイクルの乱れによって髪が成長しない

ヘアサイクルの乱れで成長期が短くなると、髪が十分に成長できなくなります。本来、太く長く成長するはずの髪の毛が未熟な状態のままになり、細く短い毛が増えます。この状態がAGA(男性型脱毛症)です。男性の薄毛の9割以上は、AGAによるものとされています4)

「男性型脱毛では、通常 2~7 年の成長期間が徐々に短くなり、毛髪が十分に太く長く成長できない “うぶ毛化”という現象が起こっている」とされています5)。AGAでは成長期の短縮により、うぶ毛のように細く短い毛の割合が増え、その髪の割合が増えると頭皮が透けて薄毛になるのです。

4)McAndrews PJ, American Hair Loss Association(アメリカ脱毛症協会) 5)相馬 勤,毛包の退縮機構の解明と育毛薬剤開発への応用, 2007

脱毛も引き起こす

ヘアサイクルの乱れは脱毛も引き起こします。

日本皮膚科学会によるAGAのガイドライン6)では、男性型脱毛症とは「臨床的には前頭部や頭頂部の頭髪が、軟毛化して細く短くなり、最終的には頭髪が皮表に現れなくなる現象である」と説明されています。

ヘアサイクルが乱れると、成長期が短くなるとともに毛根が縮小し、最終的には毛根が消滅して毛髪が生えなくなってしまうのです。多くの髪が抜けている場合には、AGAが起こっている可能性があります。

正常な人の場合、1日に抜ける髪の毛は50〜100本程度とされています2)。これ以上抜けている場合は、ヘアサイクルの乱れから脱毛が起こっているかもしれません。

このようにヘアサイクルが乱れることで、髪が成長しないのと同時に抜け毛が増えることで薄毛が起こります。

6)眞鍋求, 坪井良治, 板見智 他, 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版. 日皮会. 2017, 127, 2763–2777.

ヘアサイクルが乱れる原因

では、薄毛を引き起こすヘアサイクルの乱れはなぜ起こるのでしょうか?ここでは、その主な原因を紹介します。

AGA(男性型脱毛症)

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ヘアサイクルが乱れる原因のひとつがAGAです。

AGAを発症すると、テストステロンが男性ホルモンであるジヒドロテストステロン(DHT)に変化し、頭皮の毛乳頭細胞にある男性ホルモン受容体と結合します。それによってTGF-βなどの脱毛因子が増加し、毛乳頭や毛母細胞の活動を抑制します。それによって、ヘアサイクルの成長期が乱れます。

ジヒドロテストステロンについては、『DHTは男性ホルモンの1種である「テストステロン」を前頭部から頭頂部にある毛乳頭細胞や毛母細胞から産生される5α還元酵素により変換することで生成される』と説明されています3)

このように、AGAに限らずヘアサイクルの乱れは、ホルモンバランスが崩れることで起こることが多いです。

生活習慣

ヘアサイクルの乱れは、生活習慣によっても引き起こされます。ヘアサイクルが乱れる生活習慣としては、以下があります。

  • 睡眠不足

  • 運動不足

  • 栄養バランスの悪い食事

  • 過度な飲酒

  • 喫煙

これらの生活習慣は、ホルモンバランスや自律神経の乱れにつながります。それによってヘアサイクルが乱れて髪の毛の成長が妨げられる可能性があるのです。

また、健康な髪を作るには毛根に栄養を届けるための頭皮の血行も大切ですが、タバコに含まれるニコチンには血管を収縮させる作用があるので注意が必要です。

さらに、脂肪分の多い食事は薄毛を招く可能性があることもわかっています。東京大学医学研究所の研究では、「毛包において、肥満の環境要因や遺伝学的要因が幹細胞内でのシグナルへと収束して再生シグナルを抑制し、これが幹細胞の枯渇と器官の機能低下に対して決定的に働くこと」が明らかになっています。

このように生活習慣の乱れによっても、ヘアサイクルは乱れる可能性があります。

ストレス

過度なストレスがヘアサイクルの乱れや薄毛を引き起こす可能性も、専門家の研究によって示唆されています。

モルモットを用いた実験7)ではありますが、「ストレスは肉眼的に被毛成長を低下させると共に、毛長、毛径の有意な低下を引き起こすこと」が明らかになっています。また、マウスを用いた研究でも、「ストレスホルモンが毛包幹細胞の調節を介して発毛を抑制すること」がわかっています。

同じように、人間でもストレスホルモンによって発毛が抑制される可能性があります。

7)神永博子,臼井俊博,四宮達郎,ストレスが被毛成長に及ぼす影響について, 日本皮膚科学会雑誌. 111 (1), 21-26, 2001

頭皮環境の悪化

頭皮の乾燥や過剰な皮脂などによる頭皮環境の悪化もヘアサイクルの乱れにつながります。

頭皮環境が悪化すると、髪の成長を担う毛乳頭や毛母細胞の働きが阻害されてしまいます。過剰な皮脂やフケ、湿疹などが起こると、毛母細胞の働きが弱くなり、髪がうまく成長しない可能性があるのです。

髪の毛を生み出すのは頭皮にある細胞です。ヘアサイクルを正常に保ち健康的な髪を維持するためには、頭皮環境を健やかに保つことが大切なのです。

ヘアサイクルを正常にする方法

ヘアサイクルの乱れを防いだり、乱れが起こった場合に正常に戻したりするにはどうすればよいのでしょうか。ここでは、ヘアサイクルを正常にする方法を紹介します。

頭皮マッサージ

ヘアサイクルを正常にするには、頭皮マッサージが有効です。Dクリニックの研究8)では、「毛乳頭へ伝わった力学的刺激が毛周期に関与する遺伝子の発現に影響を及ぼしている可能性」があることがわかっています。毛乳頭は髪の成長のコントロールを担っています。毛乳頭に刺激を与えることで、毛周期に関する遺伝子に影響を及ぼし、毛周期を正常にする可能性があるのです。

頭皮マッサージにも様々な種類がありますが、「頭皮における血流量変化は、圧迫法が最も大きく上昇し、持続性も比較的高かった」という研究9)もあります。

頭皮マッサージの具体的な手順は以下の記事で解説しています。

8) Koyama T, Kobayashi K, Hama T, Murakami K, Ogawa R. Eplasty. 2016 Jan 25;16:e8. eCollection 2016. 9)曽我元, 森田康治, 新井賢二, 地肌マッサージの頭皮への作用, 日本化粧品技術者会誌, 2014, 48, 97–103.

生活習慣改善

ヘアサイクルを正常に保つためには、食事や運動、睡眠、喫煙などの生活習慣を見直すことも必要です。

ヘアサイクルの乱れはホルモンバランスが崩れることで起こることが多いので、良質な睡眠を十分な時間とるとよいでしょう。また、適度な運動や禁煙に取り組むことも大切です。

食事では、「毛髪はタンパク質でできているため、種々のアミノ酸を含んだタンパク質(大豆、小魚、牛乳、肉、卵など)をバランスよく摂取することが必要」とされています10)

また、海外の研究では、活性型持続ビタミンCが脱毛の原因となるDHT誘導DKK-1発現を減衰させるとされている11)ので、ビタミンCを積極的に摂るとよいでしょう。

10)若林萌,走査型電子顕微鏡観察により明らかになった毛髪の損傷形態と栄養状態との関連, 金城学院大学. 2014 11)Kwack MH, Kim MK, Kim JC, Young Kwan Sung YK,L-ascorbic acid 2-phosphate represses the dihydrotestosterone-induced dickkopf-1 expression in human balding dermal papilla cells.2010, 19,1110-2.

ストレス対策

ヘアサイクルの乱れによる薄毛を防ぐには、ストレス対策を行うのもよいでしょう。

ストレスを溜め込まないようにしたり、定期的にストレスを解消したりするのがよいです。

ストレス解消法としては、運動や読書、趣味を行うなどだけでなく、頭皮に刺激を与えるとともに頭皮環境も整えられるヘッドスパや美容院でのヘッドマッサージなども有効でしょう。

治療薬

すでに抜け毛が増えている場合や、薄毛が進行しているように感じる場合は、専門のクリニックで診察を受けるのもよいでしょう。AGAの専門クリニックでは、専門の医師にマイクロスコープなどで頭皮の状態を詳しく診察してもらえ、治療薬などで治療をしてもらえます。

ヘアサイクルを整えるのに有効な治療薬の成分としては、ミノキシジルやフィナステリド、デュタステリドなどがあります。ミノキシジルは外用薬で、その他は内服薬です。

例えば、ミノキシジルは「成長期期間を延長して、矮小化毛包を改善する」とされており12)、ヘアサイクルを整えることができます。

こういった治療薬を利用して、ヘアサイクルを整えて薄毛対策を行いましょう。

12)小友進, ミノキシジルの発毛作用について. 日薬理誌. 2002, 119, 167-174.

LED

ヘアサイクルを整えて発毛を促すケアとしては、LEDもあります。

ガイドライン6)では、LEDの発毛効果には十分な根拠があることから、AGAの治療法として推奨されています。また、アデランスの資料でも、「赤色LEDは毛乳頭からの増殖因子の分泌を刺激し、毛成長を促進」するとされています。つまり、LEDにはヘアサイクルにおける成長期を延ばす働きがあるのです。

赤色LEDによる治療はAGA専門のクリニックなどで受けることができます。

まとめ:ヘアサイクルを整えて薄毛や抜け毛を改善しよう

ヘアサイクルが乱れると、抜け毛が増え薄毛が進行することになります。薄毛対策を行う上でも、ヘアサイクルは重要なポイントといえます。ヘアサイクルを正常に保つために、頭皮の血行を促すケアや生活習慣の見直しなどを行うとともに、治療薬やLEDなどの治療も受けるのがよいでしょう。

AGA専門のクリニックなどでは専門的な治療を行ってもらえるだけでなく、最新の機器を利用した治療を行ってもらえます。

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