Pixie Dust Technologies Inc.

発毛・育毛

女性ホルモンで髪は増える?薄毛との関係や改善方法を解説

/
監修ドクター
高田弘弥
日本医科大学形成外科学教室・抗加齢予防医学講座教授 医学博士・工学博士 【略歴】京都大学大学院工学研究科,名古屋大学大学院医学系研究科修了後,イギリス・ウォーリック大学,フランス国立科学研究所へ留学,日系化粧品会社所長代理・フランス系化粧品会社マネージャを経て,2018年より日本医科大学付属病院形成外科講師,現在同教授 【受賞歴】第11回世界毛髪研究会議(国際毛髪会議)最優秀賞(口頭発表部門),バルセロナ(スペイン),2019年など

薄毛や抜け毛に悩んでいる人の中には、「女性ホルモンで髪が増える」という話を聞いたことがある人もいるかもしれません。

はたして、女性ホルモンを増やすことで髪の毛を増やすことはできるのでしょうか?また、髪の毛を増やして薄毛を改善する方法にはどのようなものがあるのでしょうか?

今回の記事では、女性ホルモンの働きや女性ホルモンと髪の関係性、薄毛を改善する方法を解説します。​​

女性ホルモンとは

そもそも、女性ホルモンとは一体どのようなものなのでしょうか?

ホルモンとは、体内における特定の器官で合成・分泌され、血液などの体液を通して全身を循環している生理活性物質です。内臓の機能や身体の調子を整えるなど様々な働きがあり、生命機能を維持するのに必要です。

人間の体内には100種類以上ものホルモンがあるとされており、そのうち女性の卵巣で作られるものを女性ホルモンと呼びます。女性ホルモンは、少量ではあるものの男性の身体でも分泌されています。

女性ホルモンは、大きく「エストロゲン」と「プロゲステロン」の2種類があります。これらの女性ホルモンは体にとって重要な役割を担っています。例えば、内田さえ氏の論文1)では、「エストロゲンは女性らしさをつくり、受精や妊娠のために働くだけでなく、皮膚の張りや骨を強くし、血管壁を柔軟にし、脳の認知機能を維持するなどさまざまな働きをもっており、高齢期の健康維持においても重要なホルモン」と説明されています。

また、プロゲステロンの働きについても、「妊娠が可能となるような、また妊娠を維持するのに必要な身体の変化を促す」と記載されています。

1)内田さえ, エストロゲンの機能とストレス~生涯を通じて健康を維持するために〜. 国際抗老化再生医療学会雑誌. 2019, 2, 11−18.

女性ホルモンが増えると髪は増える?

female-hormone-hair-increase-1

では、女性ホルモンを増やすことで髪の毛は増えるのでしょうか?論文などの資料をもとに、女性ホルモンと髪の毛の関係性について解説します。

女性ホルモンの髪への影響

女性ホルモンには、髪の成長や増加を促す働きがあると考えられています。

さわこ形成外科クリニックの資料では、「女性ホルモンのうち、エストロゲンは毛髪の成長期を長くする働きがあり、抜け落ちにくい状態を保てます」と説明されています。

また、株式会社ミルボンの資料によると、『女性ホルモンの一種である「エストラジオール」が、血管新生を促進して毛髪の成長を促す遺伝子「VEGF-A*1」の発現量を調節していることを見出しました』とされています。

さらに、ライオン株式会社の研究においても「女性ホルモンの減少が発毛促進にかかわる遺伝子発現を低下させる」ことが発表されています

このように、女性ホルモンは髪の毛を維持・増加させるのに重要であることがわかります。ここまでは女性についての話ですが、男性の髪との関係はどうなのでしょうか?

男性の髪と女性ホルモンの関係

女性ホルモンが男性の髪の毛に与える影響は少ないと考えられます。というのも、男性の身体で分泌される女性ホルモンの量は少ないですし、男性の髪の増減に影響を与える大きな原因は遺伝や男性ホルモンとされているからです。

アメリカ脱毛症協会によると、男性における薄毛や抜け毛の95%はAGA(男性型脱毛症)が原因です2)。日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版3)」でも、「男性型脱毛症の発症には遺伝と男性ホルモンが関与する」と説明されています。

AGAの発症にはテストステロンやジヒドロテストステロン(DHT)という男性ホルモンが深く関係しています。

AGAと男性ホルモンの関係については、以下の記事で詳しく解説しています。

2)McAndrews PJ, American Hair Loss Association(アメリカ脱毛症協会) 3)眞鍋求, 坪井良治, 板見智 他, 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版. 日皮会. 2017, 127, 2763–2777.

男性に女性ホルモンは投与できる?

男性に女性ホルモンを投与することで、髪の毛を増やすことは可能なのでしょうか?

結論から述べると、髪を増やすという目的で女性ホルモンを投与するのは避けるべきといえます。女性ホルモンを男性に投与すると、血中の男性ホルモン値が低下して以下のような副作用が見られることがあります。

  • 男性機能の低下

  • 性欲減退

  • 肝機能障害

  • 体の女性化

AGA専門クリニックなどでは女性ホルモンを用いた治療は行われていません。ガイドライン3)でも、AGAの治療法として「女性ホルモンを増やす」という治療法は挙げられていません。そのため、男性が髪を増やしたい場合は女性ホルモン以外の方法を検討するのがよいでしょう。

女性ホルモン以外で髪を増やして薄毛を改善する方法

female-hormone-hair-increase-2

男性は女性ホルモンによって髪を増やすことは難しいため、別の手段を検討する必要があります。また、女性においても女性ホルモン以外の方法で髪を増やせる可能性があります。

ここでは、女性ホルモン以外で髪を増やして薄毛を改善する方法を紹介します。

治療薬

女性ホルモン以外で髪を増やすには、薄毛治療で用いられる治療薬を利用するのが有効です。

発毛や薄毛の改善に有効とされているのは、フィナステリド、デュタステリド、ミノキシジルなどの成分を含んだ内服薬と外用薬です。

フィナステリドやデュタステリドには、AGAの原因となるジヒドロテストステロンの生成を抑え、抜け毛を改善する効果が認められています。ミノキシジルには、血管拡張作用や発毛促進効果があるとされています。

ただ、フィナステリドとデュタステリドについて、ガイドライン3)では「男性型脱毛症にはフィナステリドの内服を行うよう強く勧める。一方、女性型脱毛症には行うべきではない」と書かれているため、女性は服用しないようにしましょう。「妊婦に投与するとDHTの低下により男子胎児の生殖器官等の正常発育に影響を及ぼす恐れがあり、妊婦または妊娠している可能性のある女性、授乳中の女性への投与は禁忌である」という説明もあるため、妊婦の女性は特に注意が必要です。

髪を増やすための治療薬は、AGA専門のクリニックなどの医療機関で処方してもらえます。

LED・低出力レーザー

髪を増やして薄毛を改善する方法としては、LED・低出力レーザーによる治療もあります。LED・低出力レーザーは発毛効果が期待できる方法であり、男性と女性の脱毛症治療に用いられています。

ガイドライン3)では、「LED および低出力レーザーの発毛効果に関しては、有用性を示す十分な根拠があり、副作用も比較的軽微であることから、適切な機材を使用して行うよう勧めることにする」と説明されています。

LEDの育毛効果については、以下の記事で詳しく解説しています。

頭皮マッサージ

頭皮マッサージを行うことで薄毛を改善できる可能性があります。

Dクリニックの研究では、「頭皮をマッサージすることによって、毛の本数や伸びに変化は見られなかったものの、毛髪の太さが増大することが確認された」と説明されています。

また、髪の成長をコントロールする役割をもつ毛乳頭細胞に対して、適切な強さと時間で力学的刺激を加えれば、発毛促進や脱毛の抑制につながる遺伝子の発現を促せる可能性も示唆されています。

現在は頭皮専用のマッサージ機なども販売されているので、日々の頭皮ケアの一環として取り入れてみるとよいでしょう。頭皮マッサージの方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

非接触振動圧刺激装置

髪の毛を増やして薄毛を改善するには、非接触振動圧刺激装置を使うという方法もあります。非接触振動圧刺激装置は、超音波によって非接触で頭皮に振動圧刺激を与える装置です。

ピクシーダストテクノロジーズと日本医科大学形成外科教室・Dクリニックが共同で行った研究では、超音波を用いて非接触で頭皮に振動圧刺激を与える技術により発毛を促進することが認められました。発毛治療に使用する塗り薬と併用することで、通常よりも早いスピードでの発毛が期待できます。

臨床試験では、非接触振動圧刺激を頭皮に週1回、20分間照射することによって成長期毛割合が増加し、休止期毛割合が減少することを確認しました。

非接触振動圧刺激と発毛治療に使用する塗り薬を併用した治療は、薄毛・AGA治療を行っているDクリニックに試験的に導入されています。

女性ホルモンを増やす対策とは?

female-hormone-hair-increase-3

髪の成長や増加を促すために女性ホルモンを増やすことは、女性に対してのみ有効と考えられています。では、どのような方法で女性ホルモンを増やせばいいのでしょうか?

女性ホルモンの分泌量は20代から30代がピークであり、それ以降は分泌が減少していく傾向にあるので、早めに対策をしておきましょう。

ホルモン補充療法

女性ホルモンを増やす方法としては、ホルモン補充療法があります。ホルモン補充療法とは、内服薬や外用薬などにより、エストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンを増やす方法です。

更年期の女性に用いられることが多く、ほてりや発汗、のぼせなどの更年期障害を改善し、更年期の抜け毛を防ぐ効果も期待できます。また、女性ホルモンの分泌低下などによって起こるFAGA(女性男性型脱毛症)の治療に用いられることもあります。

ただ、ホルモン補充療法では乳房の張りや性器出血などの副作用が出ることもあるため、治療を受ける場合は定期的に乳房と子宮の検査を受けることが重要です。

ストレスを減らす

女性ホルモンを増やす方法は上で紹介したホルモン補充療法のみですが、髪を増やしたい場合は女性ホルモンを減らさないことも重要です。

女性ホルモンの減少を抑えるには、ストレスを溜めないようにしましょう。東京都健康長寿医療センター研究所の資料には、「ストレスによって交感神経が高まることで、エストロゲンが減少する」と説明されています。つまり、ストレスを減らすことで女性ホルモンのエストロゲンの減少を抑えられる可能性があるのです。

仕事やプライベートなどでストレスを感じることが多いという場合には、好きなことを楽しむ時間を作ったり、しっかりと休養したりしてストレスを溜めないようにしましょう。

生活習慣を見直す

女性ホルモンのバランスを整えるには、食生活や睡眠、運動などの生活習慣を見直すことも重要です。

食事では、女性ホルモンのバランスを整えるタンパク質や女性ホルモンと似た働きをするとされている大豆イソフラボン、女性ホルモンの分泌を促すビタミンEなどの栄養を摂りましょう。食事から摂ることが難しい場合は、サプリなどを活用するのもよいです。

また、睡眠不足になると女性ホルモンのエストロゲンの分泌が低下してしまう恐れがあるため、十分な睡眠をとるようにしましょう。

血行と代謝を改善することで女性ホルモンを増やすことができるので、ジョギングやウォーキング、ヨガなどの運動も取り入れるとよいでしょう。

まとめ:男性の薄毛には女性ホルモン以外のケアが大切

女性ホルモンには様々な働きがあり、髪の毛の成長を促す働きがあると考えられています。

一方で、男性の薄毛治療には女性ホルモン投与などは行われていません。副作用のリスクもあるため、男性は女性ホルモン以外の方法で髪を増やし、薄毛を改善する必要があります。

男性が薄毛を改善したい場合は、AGA専門クリニックを受診するのもよいでしょう。クリニックでは医師による診察が受けられますし、自分に合った治療法も提案してもらえます。

自宅で薄毛をケアできるデバイスなども販売されているので、クリニックの受診に抵抗がある人はそういった機器を活用するのもよいでしょう。

また女性の薄毛には、ホルモン補充療法やストレスを減らす、生活習慣を見直すといった方法で女性ホルモンを補い、髪の成長や増加を促すことができると考えられます。

関連記事