髪は復活する?抜けた髪や傷んだ髪を復活させる方法を解説!
髪は見た目の印象を大きく左右します。「髪のボリュームがなくなってきた」「抜け毛が増えた」「髪が傷んでいる」という人の中には、髪を復活させたいと考えている人もいるのではないでしょうか?
抜けた髪を再び生えるようにしたり、髪のハリコシを取り戻すなど、髪を復活させることはできるのでしょうか?もし可能であるなら、どのようにすればいいのでしょうか?
この記事では、髪が生え変わる仕組みや復活するための条件、髪を復活させる方法、髪を健康に保つ方法などについて解説します。
髪が生える仕組み
髪を復活させるためには、まず髪が生える仕組みについて理解することが大切です。
髪はヘアサイクルを繰り返す
髪は毛周期(ヘアサイクル)という、抜けては生えるというサイクルを繰り返します。ヘアサイクルは、髪が伸長する成長期、成長が止まり毛が抜ける準備をする退行期、毛が抜け落ちる休止期で構成されます。そして、髪は休止期から成長期に移る時に抜け落ちます。
これらのプロセスの期間としては、成長期が2〜6年、退行期が2週間、休止期が3〜4ヶ月程度とされています。この周期を繰り返すことで、髪が抜け落ちてもまた生えてくるのです。
髪のほとんどは成長期の状態であり、約1%が退行期、約10〜15%が休止期の状態であると言われています。
毛母細胞が髪を生やす
髪が生えるには、毛母細胞の働きが欠かせません。
毛母細胞とは、毛根の一番奥の毛球と呼ばれる場所にある細胞です。この毛母細胞が毛細血管から栄養を吸収し、毛乳頭からの指示を受けて分裂・増殖することで髪が成長します。
退行期になり毛母細胞の働きが止まると、毛母細胞が毛乳頭から離れ、成長しなくなります。
抜け落ちた髪は復活できる?
ヘアサイクルにおいて、一定期間をすぎると髪が抜け落ちることがわかりました。それでは、抜け落ちた後は再び髪が生えてくるのでしょうか?
結論から述べると、毛母細胞が繰り返し再生されるうちは、抜け落ちたあとにも髪は復活します。資生堂ライフサイエンスセンターの岸本治郎氏によると、毛周期における退行期のあとは「やがて休止期を経て、再び毛母細胞は活性化され新しい周期の成長期へと向かう」とされています1)。
AGA(男性型脱毛症)などによって薄毛が発生する場合も同様で、髪がない状態でも毛母細胞を活性化させられれば再び髪が生えるようになります。しかし、髪を復活させることができないケースもあります。
1)岸本治郎, 毛髪の科学:蘇る不思議. 日本農芸化学会誌. 2013, 77-6,566−569.抜けた髪が復活しない場合とは
それでは、どのような場合に髪が復活しないのでしょうか?
毛母細胞が活動していない場合
毛母細胞が完全に機能しなくなると髪は生えてきません。
男性の薄毛の大きな要因であるAGAは、男性ホルモンの一種であるジヒドロテストステロン(DHT)が毛母細胞の分裂を抑制し、成長期を短縮させます。この症状が進むと、最終的に毛母細胞が活動しなくなります。
その場合は、髪を作る毛母細胞が完全に働かなくなるので、髪を復活させることができなくなるのです。AGAが進行して時間が経っていたり、薄毛がかなり進行したりしている場合には復活は難しいかもしれません。
AGA治療を行うのであれば、髪を復活させられる早期での治療が推奨されています。
毛包の矮小化が進んでいる場合
加齢やAGAなどでは、ヘアサイクルを繰り返していくうちに毛包が小さくなることがわかっています。毛包が小さくなるということは、生えてくる髪が細く短くなるということです。
西村栄美氏らの研究では、「毛包自体が矮小化(ミニチュア化)するため、生えてくる毛が細くなって失われていくことが明らかになりました」と説明されています。
毛包は小さくなり続け、最終的に髪は生えてこなくなります。こうなってしまうと、治療を行っても髪を復活させることはできません。
復活しない場所に髪を生やすには、植毛などで毛を移植するしかありません。植毛による薄毛治療については、以下の記事で解説しています。
抜け落ちた髪を復活させる方法
では、毛母細胞を復活させるとともに、毛包の矮小化を防ぐにはどうすればいいのでしょうか?
AGA治療薬
AGAなどによって薄毛が進行し毛母細胞が機能していない場合、毛母細胞を復活させるためのAGA治療薬が有効です。
利用される治療薬としては、血管拡張作用や発毛・育毛促進効果があるミノキシジルや、脱毛を促す酵素である5αリダクターゼの働きを抑制するプロペシアやデュタステリドを含んだ薬剤があります。
こういったAGA治療薬は、AGAクリニックなどの医療機関で処方してもらえます。個人輸入では、より含有量が多いものなどを利用することもできますが、副作用のリスクがあるので推奨されていません。
頭皮マッサージ
頭皮マッサージを行うことで、髪を復活させられる可能性があります。
Dクリニックの研究では、「頭皮をマッサージすることによって、毛の本数や伸びに変化は見られなかったものの、毛髪の太さが増大することが確認された」としています。その仕組みとしては、「毛乳頭細胞において、毛周期に関連する遺伝子(BMP4、 Noggin、SMAD4)の発現増加と、脱毛を誘導するIL6の発現抑制を確認した」とされています。
つまり、頭皮マッサージによって髪を生やす司令を出している毛乳頭細胞に力学的刺激を加えることで、脱毛の原因となる遺伝子を抑えられるのです。それによって、成長期が短くなることで細く短くなっている髪を復活させられる可能性があります。
LED・低出力レーザー
LEDや低出力レーザーでも細く短くなってきた髪を復活させられる可能性があります。
日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版2)」では、「LED および低出力レーザーの発毛効果に関しては、有用性を示す十分な根拠があり、副作用も比較的軽微であることから、適切な機材を使用して行うよう勧めることにする」とされています。低出力レーザーに関しても、Skin Appendage Disordに掲載された論文3)で、その有用性が明らかにされています。
この仕組みとしては、LEDによって毛乳頭細胞が活性化されるとともに発毛促進因子の分泌が増加することで、髪がより成長し復活するようになります。
2)眞鍋求, 坪井良治, 板見智 他, 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版. 日皮会. 2017, 127, 2763–2777. 3)Egger A, Resnik SR,Aickara D other, Examining the Safety and Efficacy of Low-Level Laser Therapy for Male and Female Pattern Hair Loss: A Review of the Literature. Skin Appendage Disord. 2020, 1259-267.発毛剤
市販されている育毛剤の中には、毛母細胞の活性化を促す成分が含まれたものが販売されています。血行促進効果のあるものも販売されており、髪を復活させるのに効果的です。
例えば、ミノキシジルやアデノシンを含む発毛剤・外用ローションは頭皮に直接塗布することで、毛母細胞を活性化させて、細胞分裂を促進することができます。クリニックでのAGA治療で用いられる外用薬よりも濃度などは低いことが多いですが、一定の効果が期待できるでしょう。
ただ、アルコールが含まれているなどの刺激が強い発毛剤は、頭皮のトラブルを引き起こす可能性があるので注意が必要です。
非接触振動圧刺激装置
非接触振動圧刺激装置という装置でも、髪を復活させられる可能性があります。非接触振動圧刺激装置は、超音波によって非接触で頭皮に振動圧刺激を与える装置です。
ピクシーダストテクノロジーズと日本医科大学形成外科教室・Dクリニックが共同で行った研究では、超音波を用いて非接触で頭皮に振動圧刺激を与える技術により発毛を促進することが認められました。臨床試験では、非接触振動圧刺激を頭皮に週1回、20分間照射することによって成長期毛割合が増加し、休止期毛割合が減少することを確認しています。
さらに、発毛治療に使用する塗り薬と併用することで、通常よりも早いスピードでの発毛が期待できます。
非接触振動圧刺激と発毛治療に使用する塗り薬を併用した治療は、薄毛・AGA治療を行っているDクリニックで試験的に導入されています。
髪はなぜ傷む?
ここまでは、抜けた髪を復活させる方法について説明してきました。ここからは傷んだ髪について説明していきます。まず、髪はなぜ傷むのでしょうか。
加齢
加齢は髪を傷める原因のひとつです。
株式会社ミルボンの資料によると、「⽑髪内脂質を構成する成分は加齢によって変化し、それに伴いツヤの低下が引き起こされる」とされています。
萩原基文氏の論文においても、「加齢によって構造や物性が変化し、毛髪の感触や美しさは損なわれていく」と説明されています4)。さらに同研究では、加齢によって髪のハリやコシが損なわれるのは、キューティクルに発現するケラチン関連タンパク(KAP5)が関与しているとされています。
このように、加齢によりツヤやハリ、コシが失われ傷みが出てきます。
4)萩原基文, 毛髪を美しく健康的にするヘアケア技術. 日本化粧品技術者会誌. 2016, 50-1, 2–7.外的刺激によるダメージ
外的刺激によるダメージでも髪は傷んでしまいます。
永山升三氏と西尾宏氏の論文5)では、「毛髪損傷の原因を分類しますと、摩擦、熱、乾燥などの物理的要因と、酸、アルカリ、酸化剤、還元剤などの化学的要因に分けられます」と記載されています。
こういった原因となるものとしては、以下のようなものが紹介されています。
パーマネントウェーブ
ヘアブリーチ
洗髪後のドライヤーの熱
整髪時のブラッシング
ヘアダイ(染毛剤)
このような外的な刺激は毛髪の損傷を引き起こす可能性があります。外的な刺激によって髪が傷つくと、新しい髪を生やす以外に復活させることは難しいので日頃から注意しましょう。
5)永山升三, 西尾宏, ヘアケアの科学. ライオン家庭科学研究所. 1987栄養不足
髪は摂取した栄養から生み出されるので、栄養不足だと健康的な髪を成長させることができなくなってしまいます。
若林萌氏の論文では、「キューティクルが正常な毛髪を維持するためにはバランスの摂れた食事が必要」「摂取する栄養素の量は、毛髪の状態を左右する」と説明されています6)。
髪を復活させるには、バランスの整った食事を十分な量摂るように心がけることが大切です。
6)若林萌, 走査型電子顕微鏡観察により明らかになった毛髪の損傷形態と栄養状態との関連. 金城学院大学大学院人間生活学研究科論集. 2014ストレス
ストレスは毛髪の傷みに影響を与えます。
モルモットを利用した実験ですが、「ストレスは肉眼的に被毛成長を低下させると共に、毛長、毛径の有意な低下を引き起こすことが明らかになった。加えて、ストレスを受けた動物の成長毛は筋状の模様が形成され、被毛の質的な変化も引き起こすことが確認された」とされています7)。
また、株式会社マンダムは頭皮に関する研究で、ストレスが毛髪や頭皮に悪影響を与えることを発見しました。
このように、髪の状態はストレスによって様々な影響を受けます。髪の傷みを軽減しするためにも、ストレスケアを行うとよいでしょう。
7)神永博子, 臼井俊博, 四宮達郎, ストレスが被毛成長に及ぼす影響について, 日本皮膚科学会雑誌. 111 (1), 21-26, 2001傷んだ髪を復活させる方法
傷んだ髪を復活させるには、具体的にどうすればいいのでしょうか?生活習慣の見直し
傷んだ髪を復活させるには、生活習慣を見直すことが重要です。
食事は髪の成長に深く関わっているので、バランスの良い食事を心がけましょう。さらに、ビタミンやミネラルが豊富な食材はタンパク質の生成をサポートするので摂取するのがよいです。
また、動物性タンパク質の摂り過ぎには注意が必要です。「動物性タンパク質の適正な摂取は毛髪を正常に保つが、多量に摂取すると結果的に脂肪摂取量も高くなり、キューティクルの損傷につながる可能性が示された6)」とされています。
また、十分な質と量の睡眠を確保することも重要です。睡眠中には成長ホルモンが分泌されるので、睡眠によって髪を整え復活させることができます。さらに、摂取した栄養素などを髪に行き渡らせるためには、血行を促進することも大切です。ジョギングやウォーキング、ヨガなどの運動は血行促進に効果的なので、日頃の生活に取り入れてみましょう。
ストレスケア
傷んだ髪を復活させるためには、ストレスケアも重要です。ストレスは髪だけでなく、体内に至るまで悪影響を及ぼします。
ストレスを溜めない工夫をするとともに、ストレス解消なども行うようにしましょう。趣味の時間を設けたり、ウォーキングやジョギングなどの運動を取り入れたりしてケアをすることが重要です。
頭皮環境の改善
傷んだ髪を復活させるためには、頭皮環境を整えるのもよいです。
堀部一平氏の論文8)では、「外部刺激により毛髪に含まれる脂質や頭皮の皮脂が変化し、それらが媒介することで間接的に毛髪に損傷を与える可能性も考えられる」と説明されています。
1日1回程度シャンプーをして過剰な皮脂を落とし、頭皮環境を清潔に保ちましょう。また、刺激の少ないアミノ酸系のシャンプーを選んだり、指の腹で優しく撫でるように洗ったりして、ダメージを与えないようにしましょう。
さらに、洗髪のあとはドライヤーで乾かすのがよいです。濡れたままにすると菌が繁殖してしまいます。オイルや保湿液などでケアするのもよいでしょう。ドライヤーをする際には、熱によって髪が傷む可能性があるので、同じ場所に長時間風を当てない、頭皮に近づけすぎないなどに気をつけましょう。
8)堀部一平, 外的因子が毛髪構成要素に及ぼす影響. 2020.まとめ:適切なケアで抜けた髪や傷んだ髪を復活させよう
髪が抜け落ちたり、傷んでパサついたりする原因は様々です。原因に合った適切なケアをすることで、髪を復活させられる可能性があります。
ただ、抜け毛が増えて薄毛が進行している場合には注意が必要です。こういった症状の原因の多くはAGAですが、このAGAの症状が進行してしまうと、最終的に髪がまったく生えてこないということになります。そうなってしまうと髪を復活させることができないので注意しましょう。
AGAによる抜け毛や薄毛の前兆が出ている場合は、専門のクリニックを受診する、セルフケアを始めるなど、なるべく早く髪を復活させるための対策を始めましょう。AGAの前兆としてあらわれる症状については、以下の記事で紹介しているので、参考にしてください。