健康な頭皮の状態とは?健康を保つ方法や薄毛との関係性を解説
頭皮のかゆみが気になる、乾燥している気がする、頭皮が赤い気がするなど、頭皮トラブルが起こっていると感じる人は、健康な頭皮がどのような状態なのか、どうやったら健康な頭皮になるのか知りたいのではないでしょうか。
また、現時点で頭皮にトラブルが生じていない人でも、健康な頭皮を保ち将来の薄毛や抜け毛を防ぐためにどんな頭皮ケアをしておけばいいのかを知りたいかもしれません。
この記事では、健康な頭皮について説明するとともに、健康な頭皮になるために必要な対策について解説します。
頭皮に悩みを持っている人の割合とは?
頭皮に悩みを持っている人はどれくらいいるのでしょうか?頭皮の状態に悩みを抱えている人は多くいるというデータがあります。
全国の20歳~69歳の男女2,000人に聞いた「頭皮ケアに関する意識調査」によると、頭皮に関して悩みや気になることを抱えている人は、7割以上もいました。その悩みや気になることは、以下のようなものでした。
抜け毛が多い(多くなってきた):29.4%
髪が薄い(薄くなってきた):25.5%
かゆみがある:23.9%
髪が細い(コシがない):23.4%
頭皮がべたつく:19.0%
においが気になる(気になることがある):16.5%
フケがでる(でやすい):15.3%
多くの人が頭皮に関する悩みを抱えており、頭皮を健康に保つことの重要性がわかります。
健康な頭皮の状態とは
では、健康な頭皮の状態とはどのような状態なのでしょうか。
簡単に言うと、健康な頭皮とは疾患が起こっておらず、髪が健康に育ち薄毛や脱毛などが起こらない頭皮のことです。このような健康な頭皮の状態について解説します。
青白い色
アンファー株式会社によると、健康な頭皮は「青白い色をしている」と説明されています。健康な頭皮か判断するのに、自分の頭皮が青白いかどうかを確認するのもよいでしょう。
では、健康ではない頭皮はどのような色をしているのでしょうか。同じ資料で、頭皮に異常が起こると「ピンクもしくは赤茶色などの色味」を帯びるとされています。これは頭皮が日焼けをしたり、炎症を起こすことによって起こります。
ホーユー株式会社の発表では、20~39歳の被験者、男女計82名を観察したところ、男性で約8割が頭皮に赤みを生じていたとのことです。そして、この頭皮の赤みは乾燥性の異常脱毛につながる可能性があるとされています。
頭皮が赤みを帯びていないか、青白い状態を維持できているかを確認しましょう。
皮脂が多すぎない
健康な頭皮は皮脂が多すぎることはなく、ベタベタしていません。頭皮を触った手が皮脂でベタベタしていたら、その皮脂にホコリや汚れが混じって毛穴を塞いだり、皮脂をエサにしてマラセチア菌が繁殖したりする可能性があります。
清佳浩先生の論文1)によると、増殖したマラセチア菌は脂漏性皮膚炎の原因になるとあります。脂漏性皮膚炎では脂っぽいフケが発生することがあるので、フケが出ていないかも確認しましょう。
また、頭皮の皮脂分泌量に関する研究2)によると、前頭部と頭頂部の皮脂の分泌量は、側頭部および後頭部の2倍以上と説明されています。そのため、頭皮の皮脂量は前頭部および頭頂部を手で触ってチェックしてみましょう。
1)清佳浩, マラセチア関連疾患. 帝京大学医学部附属溝口病院皮膚科. 2012, 53, 97-102. 2)中村雅子, 頭皮皮脂分泌量に関する研究 (第1報)洗髪後の頭皮皮脂分泌量の回復について. 日本化粧品技術者会誌. 1994, 27, 546-549.やわらかい
健康な頭皮はやわらかいです。頭皮が硬くなっているということは、何らかの異常が起こっているかもしれません。手の指で頭皮を触ったときに指と頭皮が一緒に動かなかったり、頭皮に突っ張るような感覚がある場合には、頭皮が硬くなっている可能性があります。
また、ライオン株式会社は薄毛と頭皮の関連性について検証を行ったところ、薄毛の程度と頭皮の硬さは相関していました。頭皮が硬くなるということは薄毛につながる可能性があるので注意しましょう。
乾燥していない
健康な頭皮は乾燥しておらず、適度に水分を保持しています。
頭皮が乾燥しているのは、血行不良や頭皮の洗いすぎ、雑菌の繁殖によるターンオーバーの乱れなどが原因と考えられます。そして、ポーラ化成工業株式会社の論文3)では、年齢を重ねるにつれて皮脂量は減少するともあり、加齢によっても起こります。
頭皮が乾燥していると、かゆみやフケ、炎症などを引き起こす恐れがあります。上のライオン株式会社の検証でも、頭皮の水分量を測定したところ薄毛では水分量が少なく、頭皮が乾燥した状態であることがわかりました。乾燥もまた、薄毛に関係する可能性があるので注意が必要です。
頭皮が乾燥しないように適切に予防するとともに、状態によっては保湿などの対策をするのがよいでしょう。
3)黒田秀夫, 吉浜桂一 郎, 笹川光子, 鈴木正巳, 頭皮頭髪の年代変化について. 日本化粧品技術者会誌. 1993, 26, 254-261.毛穴がつまっていない
健康な頭皮は毛穴がつまっていない状態といえます。皮脂角栓などで毛穴がつまってしまうと、血行不良や雑菌の繁殖の原因になり、腫れや炎症などさまざまなトラブルを引き起こします。
頭皮はもともと皮脂量が多い場所です。洗髪が不十分で皮脂が残ったままだと、皮脂に老廃物や角質、汗などが混じり、毛穴の中で凝固して角栓になってしまいます。この角栓が毛穴を塞ぎ、毛髪の成長を妨げたり、頭皮に悪い影響を与えてしまうのです。専門のクリニックなどで、毛穴がつまっていないかを確認してもらいましょう。
頭皮のつまりに関して詳しく知りたい方は、以下のページを参照ください。
できものがない
できものがないというのも、健康な頭皮の特徴です。頭皮に何らかのトラブルが生じていると、湿疹やニキビなどのできものができることがあります。
このようなできものができる原因としては、皮脂や汗、ストレス、シャンプーや整髪料などのアレルギー、病気など、様々なものが考えられます。
特に、頭皮に湿疹が発生する病気としては、脂漏性皮膚炎や接触性皮膚炎などがあります。脂漏性皮膚炎は赤みを帯びた湿疹、接触性皮膚炎はヒリヒリとした痛みや赤み、腫れ、水ぶくれなどの症状を伴います4)。このような症状が出たときは、その原因を突き止めることが大切です。
4)高山かおる, 横関博雄, 松永佳世子 他, 接触皮膚炎診療ガイドライン 2020. 日皮会. 2020, 130, 523-567.頭皮の健康状態と薄毛の関係
では、頭皮の健康状態と薄毛には関係があるのでしょうか?
男性に起こる薄毛の95%が男性型脱毛症(AGA)であると言われており5)、AGAの81%が遺伝によるものとされています6)。
このように、薄毛のほとんどは遺伝的要因によって起こると考えられますが、頭皮の健康状態が損なわれることでも薄毛や抜け毛が進行する可能性があります。
大正製薬株式会社と明治薬科大学薬学部の杉田隆教授の共同研究では、「トリグリセリド、アクネ菌、マラセチア属菌がAGAの原因や進行に影響している可能性がある」とされています。つまり、頭皮の皮脂成分や細菌などによって、AGAによる薄毛が進行する可能性があるのです。
また、頭皮が不健康な状態になり脂漏性皮膚炎が起こっていると、悪化して脂漏性脱毛症を招く恐れもあります。
AGAや脂漏性脱毛症などによる薄毛・抜け毛を防ぐために、健康な頭皮状態を保つことが重要です。
5)Paul J. McAndrews, American Hair Loss Association(アメリカ脱毛症協会) 6)Nyholt DR, Gillespie NA, Heath AC, Martin NG, Genetic Basis of Male Pattern Baldness, J Invest Dermatol. 2003, 121, 1561-1564.健康な頭皮を保つためにはどんな対策が必要?
では、健康な頭皮を保つためにはどんな対策が必要なのでしょうか?健康な頭皮を保つために行ったほうがよい対策について解説します。
毎日シャンプーする
頭皮の健康状態を保つには、毎日シャンプーをしましょう。洗髪をすることで過剰な皮脂や汚れ、細菌などを洗い流すことができ、頭皮環境を清潔に保てます。
頭皮の皮脂分泌量に関する研究2)では、「皮脂は洗髪後直ちに分泌を開始し、24時間後にはほぼ洗髪前のレベルまで回復することが認められた」と説明されています。1日1回の頻度でシャンプーすることが重要です。
シャンプーをする際は、頭皮を傷つけないようにこすったり爪を立てたりしないようにしましょう。また、頭皮が濡れたままだと雑菌が繁殖しやすくなるため、洗髪後はドライヤーを使って乾かすようにします。
より効果的に頭皮を健康にするなら、頭皮をケアするために開発されたスカルプシャンプーを使うのもよいです。スカルプシャンプーには頭皮に優しい成分が使われているので、頭皮への刺激を抑えて乾燥を防ぎながら洗浄できるでしょう。
保湿をする
頭皮が乾燥していると感じる場合は、頭皮の保湿を行いましょう。
株式会社マンダムの調査によると、頭皮用の化粧水を使用することで角質水分量が増加して頭皮が潤い、頭皮の伸張性が増加して頭皮が柔らかくなることが明らかになっています。頭皮用の化粧水を選ぶ際は、セラミドやブチレングリコールなどの保湿成分が含まれているものを選ぶのがよいでしょう。
また、頭皮の乾燥を防ぐには室内を加湿し、空気の乾燥を防ぐ対策も有効です。
頭皮マッサージをする
健康な頭皮状態を保つためには、頭皮マッサージも有効です。頭皮マッサージをすることで、血行促進や育毛などの効果が期待できます。
花王株式会社ヘアケア研究所の研究7)では、独自に創案した方法でマッサージを行ったところ、即時的な血行促進作用が確認されました。
また、薄毛の治療を行っているDクリニックの研究では、市販の頭皮マッサージ器によって6ヶ月間マッサージを行ったところ、毛髪の太さが増大することが確認されました。
頭皮の健康状態だけでなく薄毛の改善も期待できるので、定期的に頭皮マッサージを行いましょう。
頭皮マッサージの方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
7)曽我元, 森田康治, 新井賢二, 地肌マッサージの頭皮への作用. 花王株式会社 ヘアケア研究所. 2014, 48, 97-103.紫外線を防ぐ
頭皮の健康状態を維持するには、紫外線対策も行いましょう
アンファー株式会社の発表によると、頭皮が紫外線を浴びすぎると健康状態が悪化し、炎症や乾燥、抜け毛などの症状を引き起こす可能性があります。
紫外線は頭皮の健康だけでなく毛髪の成長にも影響を及ぼすため、外出時には帽子や日傘、日焼け止めを使って紫外線を防ぐことが大切です。
十分な睡眠をとる
頭皮を健康な状態にするには、良質な睡眠をとることも重要です。
睡眠時間が短いと交感神経が優位になり、血行が悪くなります。血行が悪いと頭皮や毛根に栄養素が届きにくくなり、頭皮が荒れたりヘアサイクルが乱れたりする可能性があります。
また、頭皮や毛髪の健康を維持するには、睡眠中に分泌される成長ホルモンが欠かせません。睡眠が不足すると成長ホルモンの分泌量が低下し、頭皮の新陳代謝や毛髪の成長が十分に行われなくなる可能性があります。
頭皮の健康を保つために、睡眠の量と質を確保しましょう。
食生活を見直す
健康な頭皮状態を保つためには、食生活を見直しバランスの良い食事を心がけるようにしましょう。
糖分を過剰摂取して高血糖状態が続くと、頭皮の老化が進む可能性8)があります。
糖分や脂質を含んだ食事は摂りすぎないようにし、タンパク質やビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、亜鉛などを含むものを普段の食事に取り入れるようにしましょう。
8)横田麻美, 糖化表皮のバリア機能に関する研究. 城西大学薬学部薬科学科 皮膚生理学研究室.2017.たばこを控える
喫煙は頭皮の健康状態を損なう可能性があるので、減煙や禁煙に取り組むのもよいです。
たばこに含まれているニコチンには、毛細血管を収縮させる作用があります。毛細血管が収縮すると血流が悪くなり頭皮の健康維持に栄養が届きにくくなってしまいます。
また、たばこの煙には活性酸素を産生する物質が多く含まれています。体内で活性酸素が増えると細胞が傷つき、肌荒れや抜け毛を引き起こす可能性があります。
喫煙習慣があり頭皮の健康状態が悪化していると感じている場合は、減煙・禁煙に取り組むことも検討しましょう。
ストレスを溜めない
頭皮や毛髪を健康な状態にするには、ストレスを溜めないことも重要です。
ストレスを溜めすぎると、「交感神経」と「副交感神経」の2つからなる自律神経のバランスが乱れてしまい、交感神経の働きが優位になりやすくなります。交感神経が優位になると血管の収縮を招くことがあり、それによって頭皮の血行不良を引き起こす可能性があります。
このように、ストレスは頭皮環境に関係しているため、ストレスを溜めないように休息や適度な運動を心がけましょう。
ここまで、頭皮を健康な状態を保つための様々な対策を紹介しましたが、これらを行っても改善しない場合は、医療機関に相談するようにしましょう。
まとめ:薄毛を予防するためにも健康な頭皮を維持する
頭皮の健康が損なわれると、頭皮トラブルや薄毛、抜け毛を引き起こす可能性が高まります。だからこそ、頭皮の健康状態は定期的にチェックするようにしましょう。
また、日常生活の中でセルフケアを心がけることで、頭皮の健康状態を改善し維持できるはずです。ただ、すでに頭皮環境が悪化している場合や薄毛や抜け毛が増えてきたなと感じている場合には、医療機関を早めに受診するのがよいでしょう。
医療機関では、医師によるカウンセリングやマイクロスコープでの頭皮検査、遺伝子検査や血液検査などが受けられます。頭皮の健康状態を正確に調べてもらえるとともに、自分に合ったケア方法を提案してもらえます。