【ドクター監修】AGAの治し方とは?その流れや効果を高めるためのポイントを紹介!
アメリカ脱毛症協会によると、男性にみられる薄毛の95%は男性型脱毛症(AGA)が原因とされています1)。
前頭部やおでこが広がった、頭頂部の髪が薄くなったなどの症状があり、自分がAGAではないかと感じる方のなかには、どのように治療を始めればいいかわからない方も多いのではないでしょうか。
AGAの治し方には様々な方法がありますし、自分で取り組めるものもあります。自分に合った治療法を判断するためにも、まずはAGAの治し方についての理解を深めておくことが重要です。
本記事ではAGAの治し方を網羅的に解説します。AGAの仕組みやAGA治療の流れ、治療効果を高めるためのポイントを紹介するとともに、治療できる場所、AGAは自分で治せるかという点についても説明します。
1)Paul J. McAndrews, American Hair Loss Association(アメリカ脱毛症協会)AGAは治せる?
まず、「AGAは治せるのか」という疑問があるかもしれませんが、AGAは治すことができます。ただ、AGAを治すためには、AGAが起こる仕組みを理解する必要があります。
AGAの仕組み
AGAとは、髪が生えて成長し抜け落ちるまでのヘアサイクル(毛周期)が乱れることで起こる脱毛症です。毛髪は髪が伸びる成長期、成長が止まり抜け落ちる退行期、髪が生えなくなる休止期という流れを繰り返しています。AGAでは髪を太く長く成長させる成長期が短くなり、通常よりも早く髪の毛が抜けることで薄毛が進行します。
AGAによってヘアサイクルの乱れが起こる詳しい仕組みは以下の通りです。
テストステロン(男性ホルモン)が前頭部、頭頂部に局在する5αリダクターゼ(還元酵素)と結合する
テストステロンがジヒドロテストステロン(DHT)という男性ホルモンに変換される
ジヒドロテストステロンが頭皮の毛乳頭細胞にある男性ホルモンレセプター(受容体)と結合することで、TGF-βやDKK1などの脱毛因子が増加する
脱毛因子によって髪の成長を短縮する指示が毛母細胞に対して出される
細く短い髪の毛、抜け毛が増加する
AGAはこのような仕組みによって起こり、細く短い髪の毛が増加し、最終的には脱毛や薄毛を引き起こします。
AGAは治せるのか
AGAの仕組みを理解したところで、次はAGAを治せるということについて解説します。まず、ここでのAGAを治すという意味は、AGAの症状を完全になくすということではありません。AGAによる脱毛の進行を遅らせるとともに発毛を促進することで、AGAによる症状を改善するということになります。
これは、ヘアサイクルにおける成長期の短縮を抑えるとともに、脱毛を減らすということになります。そして、細く短くなった髪の毛を太く長い状態にして頭皮が見えない状態にします。
田中洋平先生らの論文2)によると、2011年から2017年の間にAGAスキンクリニックが18,918人のAGA患者に対して治療を行い、治療前後の頭部のデジタル写真を比較したところ、すべて患者で有意な改善が観察されました。また患者の満足度を評価したところ、治療開始から6カ月後、12カ月後にそれぞれ患者96%、80%の患者が治療の結果に満足しているという結果となりました。
このように、適切な治療を行うことでAGAの症状を改善し治すことができるのです。
ただし、AGAの治療では、治療を継続しないと再びAGAが進行し、元の状態に戻ってしまいます。そのため、AGAによる薄毛を防ぎ続けたい場合は治療を続ける必要があります。
2)Yohei Tanaka, Toru Aso, Jumpei Ono, Ryu Hosoi,Takuto Kaneko ,Androgenetic Alopecia Treatment in Asian Men. 2018.AGAの治し方
では、AGAはどのように治すのがよいのでしょうか?ここからは、AGAの治し方を解説します。
日本皮膚科学会のガイドライン3)では、AGAの治し方として以下のような方法が推奨されています。
内服薬
外用薬
LEDおよび低出力レーザー照射
AGA専門のクリニックなどでは、これらの治療法が複合的に利用されます。
3)眞鍋求, 坪井良治, 板見智 他, 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版. 日皮会. 2017, 127, 2763–2777.内服薬
内服薬による治療は、AGAの進行を抑制する成分を含んだ薬を服用することで治療する方法です。
日本皮膚科学会のガイドライン3)で推奨されている内服薬の成分は「フィナステリド」と「デュタステリド」です。これらの成分には、AGAの進行に影響を及ぼす5αリダクターゼの働きを阻害する効果が認められています。
フィナステリドを含む薬としては「プロペシア」が代表的であり、デュタステリドが使用されている内服薬としては「ザガーロ」などがあります。こういった薬は市販されていないため、一般病院もしくはAGA専門クリニックなどで処方してもらう必要があります。
AGAの内服薬については以下の記事で詳しく解説しています。
外用薬
ガイドライン3)では、外用薬も推奨されています。これは発毛効果のある成分を含んだ外用薬を頭皮に直接塗布することで、AGAによる薄毛を改善する方法です。
同ガイドラインで推奨されている外用薬の成分は、「ミノキシジル」と「アデノシン」です。これらの成分には、発毛を促進する効果があることがわかっています。
ガイドラインでは、「ミノキシジル外用の発毛効果に関して、高い水準の根拠があるので、男性型脱毛症に5%ミノキシジル、また女性型脱毛症に1%ミノキシジルを外用するよう強く勧める」と記載されています。また、「アデノシンの発毛効果に関しては、男性に対する有効性を示す十分な根拠があるため、外用療法を行うよう勧める」と説明されています。
これらの成分を含む薬は市販されているので、ドラッグストアなどで手に入れることができます。市販薬のミノキシジル外用薬には濃度規制があり、1%〜5%までのものしか販売されていませんが、専門クリニックではより濃度の高いものが処方されることもあります。
なお、外用薬の成分としてカルプロニウム塩化物やt-フラバノン、サイトプリン・ペンタデカンなどもありますが、これらは先述した成分と比較すると推奨度は低いので注意しましょう。
AGA治療に用いられる外用薬については、以下の記事で詳しく解説しています。
LED・低出力レーザー照射
内服薬や外用薬といった治療薬だけでなく、LED・低出力レーザーを使った治し方もあります。LEDの光や低出力レーザーなどを頭皮に照射することで発毛を促し、AGAによる薄毛を改善します。
ガイドライン3)には、「LEDおよび低出力レーザーの発毛効果に関しては、有用性を示す十分な根拠があり、副作用も比較的軽微であることから、適切な機材を使用して行うよう勧めることにする」と記載されています。
LEDを用いた治療では、頭皮に高輝度LEDの光を照射することで毛乳頭細胞を活性化させ、育毛や発毛を促します。
一方で低出力レーザーは、ヘアサイクルにおける休止期の状態にある毛包を成長期に移行するよう刺激したり、成長期を延長したりすることで、発毛を促すと考えられています4)。
LEDを用いた治療については、以下の記事で解説しています。
4)Avci P, Gupta GK, Clark J, Wikonkal N, Hamblin MR. Low level laser (light) therapy (LLLT) for treatment of hair loss.Lasers Surg Med. 2014; 46: 144-151.AGA治療はどこでできる?
AGAには様々な治し方がありますが、こういったAGA治療はどこで受けられるのでしょうか?
AGA専門クリニック
AGAを本格的に治したい場合は、AGA専門クリニックで治療を受けるのが一般的です。
AGA専門クリニックは、AGA治療に特化した医療機関であり薄毛治療の専門医による治療が受けられます。内服薬や外用薬による治療はもちろん、クリニックによってはLED・低出力レーザーなどの最新技術を用いた治療も行っています。市販されているものよりも成分の濃度が高い外用薬などを処方してもらえることもあり、よりAGAに対して効果的な治療を受けられます。
また、AGA専門クリニックでは血液検査や遺伝子検査、マイクロスコープによる診断なども行ってもらえます。治療の前に自分の薄毛の原因がAGAであるか、将来AGAになる可能性があるか知ることもできますし、自分に合った治療を受けることができます。
一般病院の皮膚科
一般病院の皮膚科でもAGAの治療が受けられます。病院の皮膚科では、内服薬や外用薬を用いた基本的な治療が受けられます。
ただ、他の皮膚の病気なども診療しているのでAGA治療に特化しているわけではありません。薬を使った基本的な治療を受けられますが、より発毛効果の高い治療や、最新技術を使ったAGA治療などは行っていない場合もあるので注意しましょう。
皮膚に関する幅広い症状の治療を行っているので、薄毛だけでなく頭皮の炎症やフケ、かゆみなどの症状が出ている場合などに皮膚科を受診するのがよいかもしれません。
症状ごとに何科の病院を受診するべきかについては、以下の記事で解説しています。
AGAは自分で治せる?
専門クリニックや皮膚科を受診せずとも、AGAは自分で治すことができるのでしょうか?内服薬やLEDを用いた治療は医療機関でなければ受けられませんが、市販の外用薬などを利用すれば自分で治療することも可能です。
ただ、市販の外用薬はクリニックで処方されるものよりも成分の濃度が低いため、治療効果としては医療機関よりも低いと考えられます。
また、自分で治療する場合は血液検査や遺伝子検査などが受けられないので、自分にあった治療法はわかりませんし、治療薬を使用することによる副作用のリスクなども知ることはできません。より安全かつ効果的に治療をしたい場合には医療機関を受診しましょう。
AGAの症状が初期段階である場合やクリニックに行く時間が取れないなどの場合は、一時的に市販の外用薬で対処するのも一つの手段といえるでしょう。
AGAの治療にはどれくらいの期間がかかる?
では、AGAの治療を始めたとして、どれくらいの期間がかかるのでしょうか?
一般的にAGA治療の効果が出始めるのは、治療を始めてから約6ヶ月後ほどといわれており、遅い場合だと1年ほどかかることもあります。ガイドライン3)では、フィナステリドの内服に関して「少なくとも6ヶ月程度は内服を継続し効果を確認すべきである」と記載されています。
また、初期段階のAGA患者に対してミノキシジルを使って行われた研究では、使用開始から24週目の時点で薄毛改善などの効果が確認されています5)。治療を始めたとして、これくらいの期間は必要と思っておきましょう。
なお、AGAによる薄毛の進行を抑え続けるためには、効果が出た後も治療を続ける必要があります。効果が現れたからといって治療を中断すると、抜け毛や薄毛などの症状が再び進行してしまう可能性が高く、増えた髪の毛を維持したい場合は継続的に治療を行っていく必要があります。
5)Anderson CD et al: Topical minoxidil in androgenetic alopecia. Scandinavian and middle east experience, Int J Dermatol, 1988; 27: 447―451.AGA治療の効果を高める方法
ここでは、AGAの治療の効果を高める方法を解説します。
早い段階での治療開始
AGAの治療はなるべく早い段階で治療を始めることが大切です。早い段階で治療を始めておくことで、AGAを発症した場合の症状の進行を緩和できますし、毛根が死滅し髪の毛が生えなくなるのを防ぐことができます。
ガイドライン3)では、AGAの発症率について「20代で約10%、30代で20%、40代で30%、50代以降で40数%と年齢とともに高くなる」と説明されています。若い世代でもAGAを発症する可能性がありますし、年齢を重ねるごとに発症リスクが高まるので、抜け毛の増加などが気になり出したら早めに治療を始めるのがよいでしょう。
食生活の見直し
AGAの治療効果を高めるには、食生活を見直すことも大事です。
基本的に髪の毛の栄養は食事から取り込まれます。食生活が乱れて栄養バランスが偏っていると、髪の毛を成長させるのに必要な栄養が不足してしまい、治療効果を十分に感じられなくなる可能性があります。
髪の毛の主成分であるタンパク質やビタミン類、亜鉛などの栄養素をバランスよく摂取しましょう。
また、悪玉コレステロールが増えると動脈硬化を引き起こし、頭皮に栄養素が届きにくくなるため注意しましょう。高脂肪食も過剰摂取すると脱毛が進行する可能性があるので、摂り過ぎないようにしましょう。
ストレスケア
AGA治療の効果を高めて髪の毛の成長を促すには、ストレスケアも大事です。ストレスは髪の毛の成長に影響を与えるので、AGA治療効果にも悪影響を及ぼすかもしれません。
神永博子先生らの論文6)では、「ストレスは肉眼的に被毛成長を低下させると共に、毛長、毛径の有意な低下を引き起こすことが明らかになった」とされています。
ストレスによって髪の毛の成長を阻害させないためにも、運動や読書、入浴など自分なりのストレス解消を実施することをおすすめします。
6)神永博子, 臼井俊博, 四宮達郎, ストレスが被毛成長に及ぼす影響について. 2001, 111–1, 21–26.良質な睡眠を取る
AGAの治療効果を高めるには、良質な睡眠を取ることも重要です。
髪の毛を成長させたり頭皮環境を整えたりするには、成長ホルモンが欠かせません。この成長ホルモンは徐波睡眠中、いわば深い眠りについた際に多く分泌されるとされています。
そのため、良質な睡眠が取れていないと成長ホルモンの分泌が減少し、髪の毛が十分に成長できなくなる可能性があるのです。
睡眠の質を良くするには、就寝3時間前までに夕食を済ませる、就職前にスマートフォンやパソコンを使用しないなどの対策を行いましょう。
禁煙
喫煙者の方は、AGA治療の効果を高めるために禁煙を検討してみてもよいかもしれません。禁煙することで、AGAによる薄毛の進行を抑えられる可能性があります。
Lin-Hui Su氏らの論文7)では、喫煙状況や現在の喫煙量、喫煙強度がAGAを引き起こす要因になりうることが書かれています。
また、タバコに含まれるニコチンには血管を収縮させる作用があるので、頭皮に栄養素が届きにくくなり、毛髪の成長をさまたげてしまう可能性があります。
AGAの進行を抑えて治療効果を高めるためにも、喫煙を控えることも視野に入れましょう。
7)Lin-Hui Su, Tony Hsiu-Hsi Chen, Association of androgenetic alopecia with smoking and its prevalence among Asian men: a community-based survey. 2007.頭皮環境を整える
AGA治療の効果を高めるには、頭皮環境を整えるのも有効です。頭皮に汚れや過剰な皮脂が残っていると、外用薬などを使用しても頭皮に成分が浸透せず、十分な効果が得られない可能性があります。
また、頭皮環境が悪化していると、よりAGAや薄毛が進行してしまう可能性もあります。大正製薬株式会社と明治薬科大学薬学部教授の共同研究では、「トリグリセリド、アクネ菌、マラセチア属菌がAGAの原因や進行に影響している可能性がある」と発表されています。頭皮にこういった菌が多い状態だと、よりAGAが進行してしまうのです。
AGAの進行を抑えて治療効果を高めるためにも、1日1回など定期的に洗髪し、頭皮をドライヤーでしっかりと乾かすなどして、頭皮を清潔に保ちましょう。頭皮環境をケアする方法については、以下の記事で詳しく紹介しています。
頭皮マッサージ
AGAによる薄毛を改善するには、頭皮マッサージを行うのも有効です。
Dクリニックの研究では、市販の頭皮マッサージ器を使って6ヶ月間マッサージを行うことで、健常男性の毛径が増大したことが確認されています。つまり、頭皮マッサージを実施することでAGAで細く短くなった毛を太くできる可能性があるのです。
また、頭皮マッサージ器だけでなく「非接触振動圧刺激装置」を使って頭皮に刺激を与えるのもよいです。非接触振動圧刺激装置は、超音波によって非接触で頭皮に振動圧刺激を与える装置です。発毛治療に使用する塗り薬と併用することで、通常よりも早いスピードでの発毛が期待できます。
ピクシーダストテクノロジーズと日本医科大学形成外科教室・Dクリニックが共同で行った研究では、超音波を用いて非接触で頭皮に振動圧刺激を与える技術により発毛を促進することが認められました。現在もAGA患者による臨床試験が継続されています。
非接触振動圧刺激と発毛治療に使用する塗り薬を併用した治療は、薄毛・AGA治療を行っているDクリニックに試験的に導入されています。
効果の定かではない治療方法に注意
AGAには様々な治療方法がありますが、インターネットなどでは信頼性が低い治し方なども紹介されています。医学的エビデンスのない治し方は根拠や効果などが定かでなく、治療効果が得られるとは限らないので注意が必要です。
今回紹介していないAGAの治療法として、ミノキシジルの内服や細胞移植療法など様々なものがありますが、これらに関しての効果は定かではないですし、ガイドライン3)では行うべきでないとされています。信頼性の低い治療法は行わないようにしましょう。
また、AGA治療の外用薬や内服薬は海外などから個人輸入することもできますが、安全性が保証されていない場合があるので使わないようにしましょう。厚生労働省の公式ページには、「医薬品等の個人輸入は健康被害などの危険性があります」と記載されています。
AGAを治したい場合は、医学的根拠のある治療法や専門的な知識を兼ね備えた医師の判断に基づいた治療を行うことが大切です。
まとめ:AGAは有効な治し方で早期に対策を
AGAの症状は完全になくすことはできませんが、有効な治療法を行うことで脱毛の進行を抑えたり薄毛を改善したりといったことが可能です。信頼性の高い治し方としては、AGAによる薄毛は内服薬や外用薬、LED・低出力レーザー照射などがあります。
AGA治療の外用薬は市販されているので、自分でAGA改善に取り組むこともできます。ただ、専門のクリニックなどで処方されるものと比べて成分の濃度が低いので、治療効果は低いと考えられます。
より確実にAGAを改善したい場合は、AGA専門のクリニックで専門的な知識をもつ医師に相談するとよいでしょう。クリニックでは薄毛の進行度やAGAのリスクなどを検査してもらえますし、内服薬や最新の機器などを用いた治療が受けられます。