【ドクター監修】AGAの外用薬にはどのようなものがある?種類や効果を解説
生え際の後退や抜け毛など、男性型脱毛症(AGA)の症状が出てきた場合、外用薬での治療を考える人も多いと思います。外用薬を塗ることで、AGA抑制などの効果が期待できます。
ただ、外用薬にはどのような種類があるのか、どの外用薬を選べばいいのか、どこで入手できるのかなどがわからないかもしれません。この記事では、ドクター監修のもと、ガイドラインや論文などの信頼できる情報を参考に、AGA外用薬の種類やその効果、外用薬の選び方、入手先について解説します。
AGA外用薬とは?
AGA外用薬とは、頭皮に薬剤を直接塗布するタイプの治療薬です。基本的には液体のリキッド・ローションタイプと半固形の軟膏・ゾルタイプに分類されます。
AGA外用薬に含まれている成分は様々で、特定の成分は日本皮膚科学会のガイドライン1)でも推奨されています。発毛促進などの効果が認められていることから、AGA専門のクリニックなどでも使われています。
また、AGA外用薬には医療用医薬品と一般用医薬品があります。医療用医薬品はクリニックなどの医療機関で処方してもらう必要がありますが、一般用医薬品はドラッグストアなどで購入することができます。
1)眞鍋求, 坪井良治, 板見智 他, 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版. 日皮会. 2017, 127, 2763–2777.AGA外用薬の成分・種類
日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」1)で紹介されている、AGA外用薬に利用される成分は以下の5つです。
ミノキシジル
アデノシン
カルプロニウム塩化物
t-フラバノン
ケトコナゾール
ガイドラインでは、各成分についての推奨度が示されており、それぞれ以下のように設定されています。
成分 | 推奨度 |
---|---|
ミノキシジル | A |
アデノシン | B |
カルプロニウム塩化物 | C1 |
t-フラバノン | C1 |
ケトコナゾール | C1 |
※A:行うよう強く勧める、B:行うよう勧める 、C1:行ってもよい
それぞれの成分の特徴やその効果を詳しく解説していきます。
ミノキシジル
ミノキシジルは、血管拡張作用や毛乳頭細胞の増殖作用、発毛・育毛促進などの効果があるとされている成分です。ガイドライン1)での推奨度は「A:行うよう強く勧める」となっており、AGA治療薬の代表的な成分です。
日本皮膚科学会のガイドライン1)では、「ミノキシジル外用の発毛効果に関して、高い水準の根拠があるので、男性型脱毛症に5%ミノキシジル、また女性型脱症に1%ミノキシジルを外用するよう強く勧める」と説明されています。
ミノキシジルは、もともと1979年に血圧降下薬として米国で承認された薬でしたが、臨床試験で多毛の副作用が見られたことから、外用発毛薬としての開発が進むようになりました2)。
そして1988年に米国で2%ミノキシジル外用薬が認可され、日本では1996年に1%ミノキシジル外用薬が一般用医薬品として承認・販売されました。現在でも多くの薬に利用されています。
2)小友進, ミノキシジルの発毛作用について. 大正製薬(株)セルフメディケーション開発研究所. 2002アデノシン
アデノシンは体内におけるほとんどの細胞が産生する成分であり、細胞のエネルギー代謝や細胞機能の抑制・調整に深く関わっています。AGA治療については、発毛促進因子であるFGF-7の産出を高めることにより発毛を促進すると考えられています。
株式会社資生堂の論文3)では、「アデノシンは細った毛髪を太く成長させることにより太い毛の割合(太毛率)を高めて男性におけるAGAを改善する」と説明されています。
また、ガイドライン1)には、「アデノシンの発毛効果に関しては、男性に対する有効性を示す十分な根拠があるため、外用療法を行うよう勧める」と記載されており、推奨度は「B:行うよう勧める」となっています。
この成分は資生堂が研究開発した成分であり、外用薬への利用に関しても資生堂が特許を得ています。
3)江浜律子, 岩渕徳郎, 飯野 雅人 他, 女性の薄毛とアデノシンによる改善効果. 株式会社資生堂リサーチセンター 他. 2011.カルプロニウム塩化物
カルプロニウム塩化物とは、血流改善や発毛促進などの効果があるとされている成分です。
厚生科学審議会の資料では、「発毛促進作用を有し、機能低下状態にある毛嚢に作用して、発毛を促進する」と説明されています。AGAの治療だけでなく、保険適用となる円形脱毛症をはじめ各種脱毛症における脱毛防止にも使われています。
ガイドライン1)では、「カルプロニウム塩化物の外用での有用性は、現段階では十分に実証されていない」と記載されているものの、長年にわたり保険適応となっていることや膨大な診療実績があることから、推奨度は「C1:行ってもよい」とされています。
t-フラバノン
t-フラバノンとは、花王株式会社が独自に開発した育毛成分です。
毛母細胞の増殖や毛髪の成長を抑制するTGF-βという物質の活性を抑える働きがあり、ヘアサイクルにおける成長期を長く維持すると考えられています。
また、育毛促進や抜け毛防止などの効果も確認されています。花王株式会社が実施した試験では、AGAの男性に1日2回30週にわたってt-フラバノン配合の育毛剤を塗布したところ、洗髪時の抜け毛が減少し髪の毛が太くなったという結果が出ています。
ただ、日本皮膚科学会のガイドライン1)では、「男性型脱毛症に対する t-フラバノンの発毛効果に関しては、有効性を示す弱い根拠が存在するので、外用を行ってもよいことにする」と、弱い根拠とされています。それもあって推奨度は「C1:行ってもよい」です。
ケトコナゾール
ケトコナゾールは、皮膚炎の原因となりうるマラセチアなどの真菌(カビ)に対して抗真菌作用を発揮する成分です。真菌が繁殖することで引き起こされるフケやかゆみ、炎症などを改善する効果があり、主に白癬(はくせん)やカンジダ症、脂漏性皮膚炎などの治療に用いられます。
ケトコナゾールには、AGAの原因となる男性ホルモン「ジヒドロテストステロン」を抑制する働きがあるとも考えられており、AGAの外用薬に使われることがあります。
ガイドライン1)では、「男性型脱毛症に対するケトコナゾール外用の発毛効果に関しては、有用性を示す弱い根拠があるので、外用を行ってもよいことにする」と説明されており、推奨度はC1です。
AGAに利用するのがよい外用薬とは?
ここまで、様々なAGA外用薬の成分を紹介しましたが、AGAに対して信頼できる効果があると強く推奨されているのは、ミノキシジルとアデノシンを含む外用薬です。
ガイドライン1)では、5%ミノキシジルの外用が強く推奨されていますし、アデノシンについても「0.75%アデノシン配合ローションは男性型脱毛症の治療薬として市販されている5%ミノキシジルローションと同等の有用性があることが示唆された」と説明されています。
AGAを改善したい場合は、ミノキシジルやアデノシンが配合されている外用薬を使うのがよいでしょう。
ミノキシジル配合の外用薬
現在市販されている5%ミノキシジル配合の外用薬としては、主に以下などがあります。
スカルプD メディカルミノキ5
リアップX5
ミノファイブ
ミノグロウ
リグロEX5
ミノアップ
ミノキシジルローション5%「JG」
これらのミノキシジル外用薬は、厚生労働省から発毛剤としての承認を受けた第一類医薬品です。購入時には薬剤師への相談が必要となります。
市販品は濃度規制があり5%以内となりますが、海外製の外用薬や医療用医薬品には高い濃度の外用薬があります。これらを処方してもらえるAGA専門クリニックなどもあるようです。
アデノシン配合の外用薬
アデノシンが配合されている外用薬としては、株式会社資生堂が販売している「薬用アデノゲンEX」や「薬用スカルプトニック」などがあります。
育毛・発毛促進成分としてのアデノシンは資生堂が日本、欧米、韓国などで特許を取得(国際公開番号WO 2005/044205 A1, 2005年)しているため、他社が資生堂への許可なくアデノシンを使用することはできません。そのため、アデノシンを配合した外用薬の種類はミノキシジルと比べて少なめとなっています。
一方、資生堂プロフェッショナルは、アデノシンや和漢植物成分などを配合した「アデノバイタル」をアジア8つの国と地域(日本・韓国・香港・台湾・シンガポール・タイ・マレーシア・インドネシア)で本格発売しています。
AGAの外用薬はどこで手に入れられる?
AGA外用薬には、医療用医薬品と一般用医薬品の2種類があります。医療用医薬品は濃度が高いなどメリットがありますが、皮膚科やAGA専門のクリニックなどの医療機関で処方してもらう必要があります。
一方、一般用医薬品は濃度規制に従った成分の配合となっており、ドラッグストアや通販などで購入できます。ただ、一般用医薬品のなかでも第一類医薬品に分類されるものは、薬剤師が在籍しているドラッグストアなどでしか購入できないので注意しましょう。
海外製のものにはより高い濃度の製品があります。こういったものは個人輸入で購入することができますが、副作用などその安全性は定かではありません。もし高い濃度のものを購入したい場合には、AGA専門のクリニックなどに相談するのがよいでしょう。
AGA外用薬を利用するときの注意点
AGA外用薬を利用する際は、いくつか注意すべきことがあります。その注意点を4つ紹介します。
副作用の可能性がある
AGA外用薬を使うことで、なんらかの副作用が生じる可能性があります。
ガイドライン1)では、「ミノキシジルの有害事象として、男女を通して瘙痒、紅斑、落屑、毛包炎、接触皮膚炎、顔面の多毛などが報告されている」と説明されています。かゆみや頭皮の炎症、顔の多毛などの副作用が現れる可能性があるのです。
また、カルプロニウム塩化物を使用すると、塗布直後の全身発汗や悪寒、戦慄、嘔気、嘔吐などの副作用が見られることがあるとも書かれています。
AGA外用薬を使ってこのような副作用が出たら、病院やAGA専門クリニックなどで医師に相談しましょう。副作用については以下の記事で詳しく解説しています。
併用してはいけないものや使用上のルールがある
AGA外用薬には、併用禁忌や併用注意のものなど使用上のルールがあるので、使用前に必ず確認するようにしましょう。他の製品と併用したり正しく使用しなかったりすると、作用の減弱や副作用の増強などを引き起こす可能性があります。
ミノキシジルを含むAGA外用薬では、他の育毛剤や外用剤との併用が推奨されていません。実際に、ミノキシジルローション5%「JG」の説明書には、「本剤を使用する場合は、他の育毛剤及び外用剤(軟膏、液剤等)の頭皮への使用は避けてください」と記載があります。他の育毛剤や外用剤を併用することで、ミノキシジルの外用薬の吸収に影響を及ぼすことが示唆されています。
アデノシンを含むAGA外用薬を利用する場合は、ジピリダモールやペルサンチン、メチルキサンチン類、カフェインを含む飲食物との併用を避けましょう。
効果が出るまでに個人差がある
AGA外用薬を使用したとしても、すぐに効果が現れない可能性があります。効果が実感できるまでに数か月といった時間がかかることがあるのです。
例えば、初期のAGA患者に対して2%ミノキシジルを使って実施された研究4)では、ミノキシジルの使用を始めてから24週目になってから発毛などの効果が確認されています。
このようにすぐには効果が出ないため、AGA外用薬は継続して使用する必要があります。
4)Anderson CD et al: Topical minoxidil in androgenetic alopecia. Scandinavian and middle east experience, Int J Dermatol, 1988; 27: 447―451.初期段階で脱毛が発生する場合も
ミノキシジル外用薬を使うと、使用を始めてからしばらくすると脱毛が発生する可能性があります。日本皮膚科学会のガイドライン1)でも、「男女ともにミノキシジル外用初期に休止期脱毛がみられることがあり」と説明されています。
髪の毛は成長期・退行期・休止期のサイクルで成り立っており、ミノキシジルには休止期から成長期への移行を促進する働きがあります。成長期への移行が促進され、休止期にある毛髪が通常よりも早く抜け落ちてしまうことで初期脱毛が起こるのです。
初期脱毛は新しい髪の毛を増やすために必要なプロセスですが、脱毛がひどかったり脱毛が長期間継続したりする場合は医師に相談することをおすすめします。
AGA外用薬の効果を高める方法
AGA外用薬を使うことで発毛促進などの効果が期待できますが、利用時に行うことでよりその効果を高められるポイントがあります。
用法・用量を守る
基本的なことですが、AGA外用薬を使用する際は用法・用量を守りましょう。表記されているよりも多く使ったからといって、効果が高まるわけではありません。逆に用法・用量を守らないと副作用が出る可能性が高まってしまうため注意しましょう。
用法・用量は使用するAGA外用薬によって異なるので、医師の指示や説明書を確認して適切な量を守りましょう。
頭皮環境を整える
AGA外用薬の効果を高めるには、頭皮環境を整えるのも有効です。AGA外用薬は、頭皮の毛穴や毛根に成分が浸透することでその効果が期待できます。頭皮に皮脂や汚れが溜まっていると、外用薬が頭皮に浸透しにくくなり、十分に効果を発揮できなくなる可能性があります。
頭皮環境を整えるためには1日1回などの頻度で洗髪を行い、頭皮の皮脂や汚れを洗い流しましょう。洗髪後には雑菌の繁殖を防ぐため、ドライヤーで乾かすことも大切です。
他にも質の良い睡眠や栄養バランスのとれた食事、適度な運動などを心がけ、頭皮を健康な状態に保ちましょう。
頭皮環境の改善方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
頭皮マッサージをする
ミノキシジルなどのAGA外用薬を使う場合は、頭皮マッサージをすることでその効果を高められる可能性があります。
Dクリニックの発表では、ミノキシジル塗布とマッサージを併用することで相乗効果が生まれ、発毛を促す毛乳頭細胞が活性化することが確認されています。
育毛剤の塗布と同時に頭皮マッサージをすることで発毛や育毛促進効果が期待できるので、ミノキシジルの外用薬を利用する場合には取り組むのとよいでしょう。
ミノキシジルの塗布時に行う頭皮マッサージの方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
非接触振動圧刺激装置を同時に利用する
非接触振動圧刺激装置は、超音波によって非接触で頭皮に振動圧刺激を与える装置です。
ピクシーダストテクノロジーズと日本医科大学形成外科教室・Dクリニックが共同で行った研究では、超音波を用いて非接触で頭皮に振動圧刺激を与える技術により発毛を促進することが認められました。この装置はその研究をもとに開発されました。
臨床試験では、非接触振動圧刺激を頭皮に週1回、20分間照射することによって成長期毛割合が増加し、休止期毛割合が減少することを確認しました。
この装置は、薄毛・AGA治療を行っているDクリニックに試験的に導入されています。
まとめ:AGA外用薬を効果的に利用しよう
AGA外用薬を使用することで、発毛や育毛促進などの効果が期待できます。外用薬には様々な種類がありますが、ガイドラインなどで推奨されている成分を含むものを利用するようにしましょう。
ただ、AGA外用薬を使うとかゆみや頭皮の炎症などの副作用が起きる場合があります。副作用が心配な人は、専門のクリニックなどで処方してもらうのがよいです。
また、頭皮マッサージや非接触振動圧刺激装置を併用することで、AGA外用薬の効果を高められる可能性があります。AGAによる薄毛をより効果的に改善したい場合は、こういった方法の併用利用も検討してみましょう。