薄毛治療は病院の何科に行くべき?AGAクリニックと皮膚科の違いも解説
薄毛の治療や相談をしたいとき、行く場所としては病院が頭に浮かぶと思います。ただ、病院では何科を受診すればよいかわからないという人も多いのではないでしょうか?
病院では体の器官ごとに担当する科が分かれており、様々な科が存在しています。また、薄毛の原因はいくつか考えられるので、それぞれの要因に合った科に行かなくてはなりません。
この記事では、薄毛の症状ごとの原因とそれぞれで何科を受診するべきかを説明するとともに、その科で受けられる薄毛治療について解説します。また、病院以外で専門的な薄毛治療を受けられる医療機関についても解説します。
受けるべき病院の科は症状で異なる
薄毛を引き起こすものとしてはいくつかの原因が考えられます。だからこそ、その原因ごとに症状や治療方法が異なりますし、受けるべき病院の科も変わってきます。
毛髪が生えているのは頭皮であり薄毛は頭皮に問題があることが多いので、薄毛の相談や治療をするのは基本的に皮膚科です。しかし、薄毛の原因が頭皮ではない場合もありますし、その場合には皮膚科とは別の科を受けたほうがよいでしょう。
薄毛を引き起こす病気とその症状
薄毛は、男性型脱毛症(AGA)・脂漏性脱毛症・円形脱毛症・粃糠性脱毛症・抜毛症などの様々な病気によって起こります。それぞれの症状を簡単に解説しますので、自身の薄毛の症状がどの病気に当てはまるかを判断しましょう。
薄毛の原因 | 症状 |
男性型脱毛症(AGA) | 前頭部や頭頂部の頭髪が軟毛化して細く短くなり、頭髪が皮表に現れなくなる。 |
脂漏(しろう)性脱毛症 | 皮脂の過剰分泌が原因で起こる脱毛。頭皮環境が悪化し炎症や湿疹、フケなどが発生する。 |
円形脱毛症 | 後天的に類円形の脱毛を生じる疾患。頭部全体に広がるケースもある。 |
粃糠(ひこう)性脱毛症 | 頭全体に乾いた細かいフケが発生して毛髪が薄くなる。皮脂の分泌によって頭皮に炎症を起こすことも。 |
抜毛症 | 自分で毛髪やまつ毛を抜いてしまう習癖異常のひとつ。無意識に抜毛を行う行動形態。 |
それぞれの症状とその原因について詳しく解説します。
男性型脱毛症(AGA)
男性型脱毛症は日本皮膚科学会のガイドラインによると、以下のように定義されています。
男性型脱毛症とは、毛周期を繰り返す過程で成長期が短くなり、休止期にとどまる毛包が多くなることを病態の基盤とし、臨床的には前頭部や頭頂部の頭髪が、軟毛化して細く短くなり、最終的には頭髪が皮表に現れなくなる現象
AGAのメカニズムは、男性ホルモン一種であるテストステロンが5αリダクターゼによってジヒドロテストステロン(DHT)になり、このDHTが男性ホルモン受容体と結合することで起こります。DHTの結合した男性ホルモン受容体によって、毛母細胞の増殖が抑制され成長期が短縮し、毛髪の成長が不十分で細く短くなるのです。その結果、抜け毛が増加し薄毛が進行します。
日本人男性の発症頻度は全年齢平均で約30%であり1)、年齢別の発症頻度は20代で約10%、30代で約20%、40代で約30%、50代以降で約50%となっています。
1)Takashima I, Iju M, Sudo M, Alopecia androgenetica. Its incidence in Japanese and associated condition. In: Orfanos CE, Montagna W, Stuttgen G, eds. Hair Research,Berlin: Springer Verlag. 1981, 287-293.脂漏(しろう)性脱毛症
脂漏性脱毛症とは、脂漏性皮膚炎から起こる脱毛症のことです。脂漏性皮膚炎は皮脂の分泌が多い部位に起こりやすい皮膚炎であり、頭皮では炎症やフケなどの症状が現れます。
清佳浩氏と中林淳浩氏の論文2)では、脂漏性皮膚炎の発症に関与している要因のひとつとして、常在菌のマラセチア(カビの一種)を挙げています。マラセチアは皮脂をエサにして異常繁殖し、その刺激により頭皮に炎症を起こします。
株式会社資生堂の調査では男性は女性よりも皮脂量が約2倍以上多いことが明らかになっており、脂漏性脱毛症のリスクが女性よりも高い可能性があります。
2)清 佳浩, 中林 淳浩, 脂漏性皮膚炎. 日本醫事新報. 1998, 3853, 33-36.円形脱毛症
円形脱毛症とは、類円形の脱毛斑を生じる後天性脱毛症です。頭部の一部分だけに現れる場合もあれば、頭部全体に脱毛が広がる場合もあります。
日本皮膚科学会の「日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン2017年版」によると、脱毛前やヘアサイクルの活動期に、軽いかゆみや違和感、赤みのある発疹が出ることもあるようです。
円形脱毛症を発症するメカニズムはいまだ解明されておらず、ガイドラインでは「免疫に関わる分子の遺伝子多型を背景にして、疲労や感染症など肉体的、精神的ストレスが引き金となるとされるが、実際には明らかな誘因がないことも多い」とされています。
米国ミネソタ州での調査3)によると、円形脱毛症の発症頻度は1万人あたり20.2人(0.2%)であり、平均年齢は33歳とされています。円形脱毛症はAGAに比べて発症頻度は低いものの、各年齢階級において大きな差はみられず、全年齢で発症する可能性があります。局所的に円形の抜け毛が見られる場合は、円形脱毛症の可能性を疑いましょう。
3)Safavi KH, Muller SA, Suman VJ others. Melton LJ 3rd: Incidence of alopecia areata in Olmsted County, Minnesota, 1975 through 1989. Mayo Clin Proc. 1995, 70, 628-633.粃糠(ひこう)性脱毛症
粃糠性脱毛症とは、頭全体に細かいフケが発生して脱毛が起こる病気のことです。頭皮に炎症が生じることでフケが大量に発生し、頭皮の毛穴を塞ぐことで髪の育成に影響を与え薄毛を引き起こしてしまうのです。
主な症状は頭皮の炎症やかゆみ、フケの発生などで、炎症が強いと頭皮にかさぶたが付着することもあります。思春期以降の男性で多く、幅広い年齢で発症します。
薄毛の症状とともにフケの増加を感じている場合は、粃糠性脱毛症を疑いましょう。
抜毛症
抜毛症は一種の癖であり、毛髪を自分で繰り返し引き抜いてしまうことで起こる脱毛症です。
ネガティブな感情をコントロールしたり、毛髪を引き抜く刺激を得たりするために起こるとされ、精神的要因によるものが大きいと言われています。
抜毛症を発症している人の多くに、繰り返し皮膚をむしったり、爪や頬の内側を噛むなど、体に関連する反復行為4)が見られます。また、抑うつを発症しているケースもあります。
「典型的には、抜毛は思春期の直前または直後に始まる」とされています。
4)境 玲子, 飯田 美紀, 皮膚・毛髪への”身体集中反復行動”:-抜毛症,皮膚むしり症,皮膚の掻破行動-. 児童青年精神医学とその近接領域. 2016, 57(2), 298-309.薄毛の原因ごとの病院の科
ここまで説明したように薄毛の原因は様々であり、それぞれ対処法が違うので受診すべき科も異なります。
薄毛の原因である病気ごとに受診すべき病院の科を紹介しますので、自身の症状が該当する病気ごとに受診しましょう。
薄毛の原因 | 病院の科 |
AGA(男性型脱毛症) | 皮膚科 |
脂漏性脱毛症 | 皮膚科 |
円形脱毛症 | 皮膚科、心療内科 |
粃糠性脱毛症 | 皮膚科 |
抜毛症 | 心療内科 |
円形脱毛症や抜毛症に関しては、ストレスや強迫症などが関係する場合があるので、心療内科の受診が必要な場合があります。
薄毛専門のクリニックも
薄毛に関する悩みは皮膚科や心療内科で相談できますが、男性型脱毛症(AGA)による薄毛が疑われる場合は、AGA専門のクリニックを受診したほうがよいかもしれません。
ここでは、AGA専門のクリニックで受けられる治療や受診するメリットを解説します。
AGA専門クリニックとは
AGA専門クリニックとは、男性型脱毛症(AGA)の治療・予防に特化した医療機関のことです。
AGA専門のクリニックでは、内服薬や外用薬、専用の機器などを用いた本格的な治療を行ってもらえます。薄毛や毛髪に関する専門知識を持った医師が、AGAに特化した治療を行います。
AGA専門のクリニックのメリット
AGA専門のクリニックを受診することで、以下のようなメリットが期待できます。
AGA治療に関するデータが豊富
薄毛の症状・原因に合った治療が受けられる
最新の技術・機器を用いた治療が受けられる
皮膚科などの病院は、AGAだけでなく皮膚に関する幅広い症状に対応している分、AGA・薄毛には詳しくない可能性があります。
一方、AGA専門クリニックでは薄毛の症状に特化して治療を行っているため、豊富な症例データを保有しています。専門医によるカウンセリングや頭皮検査、遺伝子検査、血液検査などが受けられるので、薄毛の原因をより正確に特定できます。検査を行ったうえで治療薬の処方などをしてもらえるので、自身の症状や原因に合った薄毛対策を行うことが可能です。
また、AGA専門のクリニックは薄毛治療に関する新しい技術や研究データを日々取り入れています。最新の機器による治療を行っているクリニックもあるので、より高い効果が期待できるでしょう。
AGA専門クリニックで導入されている最新の治療方法
最新の技術を用いた治療を受けられるクリニックには、どのような治療方法があるのでしょうか。ここでは、AGA専門のクリニックで導入されている最新の治療方法を2つ紹介します。
非接触振動圧刺激装置
「非接触振動圧刺激装置」は、超音波によって非接触で頭皮に振動圧刺激を与える装置です。
ピクシーダストテクノロジーズと日本医科大学形成外科教室・Dクリニックが共同で行った研究では、超音波を用いて非接触で頭皮に振動圧刺激を与える技術により発毛を促進することが認められました。
そこで、ピクシーダストテクノロジーズは日本医科大学形成外科学教室、Dクリニックと共同で非接触振動圧刺激装置を開発しました。
臨床試験では、非接触振動圧刺激を頭皮に週1回、20分間照射することによって成長期毛割合が増加し、休止期毛割合が減少することを確認しました。
この装置は、薄毛·AGA治療を行っているDクリニックに試験的に導入されています。
併用療法
併用療法とは、内服薬・外用薬・注射薬など複数の方法を適切に組み合わせた治療法のことです。治療では主に、ガイドラインで推奨されている経口フィナステリドといった内服薬やミノキシジルを含んだ外用薬などが併用され、場合によっては注射薬も用いられます。
アジア人男性における男性型脱毛症の治療」という論文では、アジア人男性18,918人に対して併用療法を行ったところ、6~12ヵ月後のアンケートにおいて80〜96%という高い割合で「治療に満足した」という結果が示されています。
併用療法による薄毛の治療は、AGAスキンクリニックなどで受けることができます。
薄毛治療においてはこれら以外にも様々な新しい方法が研究されています。最新の薄毛治療については以下の記事で詳しく解説しています。
薄毛治療に保険は適用されるのか?
皮膚科などの病院で薄毛の治療を受ける場合、保険は適用されるのでしょうか?保険適用の可否は薄毛の原因によって異なりますが、基本的にAGAによる薄毛の場合は保険が適用されません。AGAの治療は健康保険が適用されない「自由診療」となり、治療にかかる費用はすべて自己負担となるので注意しましょう。
ただし、脂漏性脱毛症や円形脱毛症、粃糠性脱毛症などにより薄毛となっている場合は、保険が適用される可能性があるため医師に相談してみましょう。また、頭皮にかゆみや赤みなどの炎症が見られる場合は、皮膚の炎症に対する治療に保険が適用されます。
まとめ:薄毛を改善するには早めの受診が大切
薄毛について相談や治療をしたい場合は、その症状や原因によって何科を受診すべきかが異なります。薄毛の悩みは基本的に皮膚科の病院で相談できますが、円形脱毛症や抜毛症などの症状が出ている場合は心療内科も受診するとよいかもしれません。
なお、「前頭部・頭頂部の薄毛が進行している」「細く短い毛髪が増えている」など、男性型脱毛症(AGA)が疑われる場合は、AGA専門のクリニックを受診するのもよいです。
AGAの専門クリニックでは医師による精密な検査を受けることができ、症状・原因に合った治療を行ってもらえます。最新の方法による治療も受けられるので、本格的に薄毛を改善したい場合は専門クリニックの受診も検討してみましょう。