【ドクター監修】頭皮が赤いと抜け毛が増えるって本当?抜け毛との関係や原因、対処方法を解説
最近、頭皮が赤くなっていると感じていませんか?頭皮が赤いと何か病気なのかもしれないと心配になると思います。また、頭皮が赤いことによって抜け毛が増えて薄毛になるのではないかと思うかもしれません。
ホーユー株式会社の研究によると、20〜39歳の被験者、男女計82名に対する調査で、男女共に8割近くで何らかのトラブルが見られ、そのなかでも頭皮に赤みを生じているのは男性で約8割(女性では約7割)ということがわかっています。頭皮の赤みは多くの人にみられる症状だということがわかります。
頭皮が赤い場合、頭皮トラブルが起こっている可能性があります。そのまま放置すると毛髪の成長に悪影響を及ぼしたり、抜け毛を引き起こしたりするかもしれません。
この記事では、頭皮が赤い原因を説明するとともに、頭皮の赤みと抜け毛の関係性、赤みの対処方法について解説します。
頭皮が赤いのは「抜け毛」のサイン?
まず、頭皮が赤いのは抜け毛や薄毛の前兆なのでしょうか?結論から述べると、頭皮が赤いという症状は将来の抜け毛や薄毛を引き起こす可能性があります。
というのも、頭皮に赤みがみられるということは、毛根細胞の活性や皮膚のバリア機能が低下しているということを表しています。そのような状態の頭皮は抜け毛を起こしやすく、抜け毛や薄毛を誘引する可能性があります。
先ほどのホーユー株式会社の研究では、「頭皮の広い範囲で赤みがある方ほど、洗髪中に抜け毛に異常な毛根が多く認められた」とも説明されています。
また、株式会社ミルボンが実施した頭皮と毛髪に関する調査では、「頭皮が赤い人ほど白髪の割合が多く、毛髪の本数は少ない傾向が確認されました」と言及されています。さらに、頭皮が赤い人ほど太い毛髪と細い毛髪が混在しており、毛髪の太さが不揃いであることも観察されています。
このように、頭皮の赤みと抜け毛は密接に関わっていることがわかると思います。
ただ、毎日頭皮の色を確認するのも大変ですし、頭皮の赤みにはなかなか気づかないかもしれません。自分で頭皮の赤みに気づくにはどうすればいいのでしょうか?
頭皮の赤みがみられるときの症状とは?
頭皮が赤くなっている場合、別の症状も同時に出現する可能性があります。こういった症状が出た場合、頭皮が赤くなっている可能性があります。以下で紹介する症状がみられる方は、鏡などを使用して頭皮に赤みがないか確認してみましょう。
かゆみ
頭皮に赤みがある場合、かゆみを伴う可能性があります。かゆみがあるということは頭皮に細菌が繁殖しており、頭皮トラブルが生じている可能性が高いです。
汗をそのままにしたり、髪の毛を乾かさずに放置したりすると、細菌が繁殖しやすくなります。その細菌がかゆみを起こすのです。
また、頭皮の皮脂が過剰に分泌されるなどによって頭皮の毛穴をつまらせると、かゆみを起こすことがあります。脂質の多い食べ物を多く摂る、頭髪や頭皮の洗浄が不足しているとこれらの症状が起こってしまう可能性があります。
このような習慣に心当たりがあり、頭皮にかゆみが生じている方は赤みに注意しましょう。
炎症
頭皮に赤みがみられる場合には、湿疹などの炎症が起きることがあります。頭を触ったときに感触に違和感がある、かゆみや痛みを感じる場合は炎症が起きている可能性があります。
こういった炎症は、カラー剤やシャンプーなどに対するアレルギー反応や皮脂の過剰分泌、乾燥、細菌感染などが主な原因として起こることが多いです。
炎症をそのまま放置してしまうと、脂性のかさぶたやフケ、脱毛などの症状に発展する可能性があるので、医療機関で頭皮の状態を診てもらうのがよいでしょう。
脱毛
抜け毛が増えたという方は、頭皮に赤みが生じている可能性があります。株式会社ミルボンの調査では頭皮が赤い人ほど毛髪の本数が少なくなりやすいことが確認されていますし、頭皮が赤い場合はバリア機能の低下によって抜け毛が起こりやすいと言えるでしょう。
抜け毛の本数は1日で100本以内であれば正常といわれています1)。枕に付着する抜け毛やシャンプー時の抜け毛がそれ以上だと感じる場合は、頭皮に赤みがないかチェックしてみましょう。
1)植木理恵, 髪の健康を考える〜美しい髪で過ごすには〜,2013頭皮が赤くなる原因
では、頭皮の赤みはどうして発生するのでしょうか?ここでは、頭皮が赤くなる原因を紹介します。
病気
頭皮に赤みが見られる場合、なにかしらの病気になっているかもしれません。以下のような病気となっている場合は、頭皮の赤みを起こす可能性があります。
脂漏性皮膚炎
接触皮膚炎
アトピー性皮膚炎
蕁麻疹
それぞれの病気の特徴や原因について解説します。
脂漏性皮膚炎
脂漏性皮膚炎とは、頭皮や鼻、外耳の周辺など皮脂の分泌が盛んな部位に生じる皮膚炎です。
頭皮で脂漏性皮膚炎が起こると、炎症や発赤(皮膚の赤み)、フケなどの症状が見られるようになります。
脂漏性皮膚炎の症状が悪化すると、抜け毛の増加を招く脂漏性脱毛症という病気を引き起こすことがあります。
清佳浩先生と中林淳浩先生の論文2)では、脂漏性皮膚炎の発症には皮脂の異常やストレス、皮脂をエサにして繁殖する常在菌のマラセチアなど様々な因子が関与していると考えられています。
2)清佳浩, 中林淳浩, 脂漏性皮膚炎, 昭和大学藤が丘病院皮膚科.Jpn, J. Med. Mycol. Vol. 40 , 1999接触皮膚炎
接触皮膚炎とは、アレルギーの原因となるものが皮膚に接触することで生じる皮膚炎です。発症するとヒリヒリとした炎症や赤み、かゆみを伴う紅斑などの症状が見られるようになります。
接触皮膚炎は化粧品や薬用化粧品、医薬品など様々な物質によって発症すると考えられており3)、具体的な製品としては以下が挙げられます。
染毛剤・パーマ剤
シャンプー
化粧水・美容液
市販薬
こういった製品を使い始めてから頭皮の赤みが見られるようになった場合は、接触皮膚炎によって頭皮が赤くなっているかもしれません。
3)高山かおる, 横関博雄, 松永佳世子 他, 接触皮膚炎診療ガイドライン2020. 日皮会. 2020, 130, 523–567.アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎とは、身体や頭皮にかゆみのある湿疹が現れ、悪化と改善を繰り返す病気です。
アトピー性皮膚炎が起こると、皮膚のバリア機能や免疫力が低下し、細菌・ウイルスなどに感染しやすくなることがあります。細菌やウイルスなどに感染すると、皮膚が赤くなったり炎症が起こったりなどの症状が見られるようになります。
日本皮膚科学会の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021」4)では、「アトピー性皮膚炎は多病因性の疾患である。アトピー素因(体質)とバリア機能の脆弱性等に起因する」と説明されています。つまり、アトピー性皮膚炎は遺伝による体質や皮膚のバリア機能のもろさなどによって発症すると考えられているのです。
頭皮の炎症やかゆみを長期にわたって繰り返している場合や、家族にアトピー素因を持っている人がいる場合は、アトピー性皮膚炎によって頭皮が赤くなっている可能性があります。
4)佐伯秀久, 大矢幸弘, 古田淳一 他, アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021. 日皮会. 2021, 131, 2691-2777.蕁麻疹
蕁麻疹とは、皮膚に膨疹と呼ばれる赤い盛り上がりが見られる病気です。全身のいずれにも出現する可能性があり、多くの場合は皮膚の赤みに加えてかゆみが生じます。蕁麻疹では、皮膚の中にある小さな血管が膨らむことで頭皮や皮膚の表面が赤くなります。
日本皮膚科学会の「蕁麻疹診療ガイドライン 2018」5)では、「蕁麻疹では、1つの基礎疾患、食物、生活環境因子などが症状出現のための決定的因子となることがあるが、いずれの因子もそれだけでは蕁麻疹の病態の全容を説明できない」と記載されており、発症には様々な原因があると考えられています。
考えられている原因としては、食べ物やウイルス・細菌感染、物理的刺激、ストレス、疲労、発汗などがあります。
5)秀道広, 森桶聡, 福永淳 他, 蕁麻疹診療ガイドライン2018. 日皮会. 2018, 128, 2503-2624.外部からのダメージ
頭皮が赤くなる原因のひとつとして、外部からのダメージもあります。
頭皮を強く掻いたり爪を立ててシャンプーしたりすると、頭皮を傷つけてしまい炎症を引き起こす恐れがあるのです。また、頭皮に合わないシャンプーや洗浄力の強すぎるシャンプーなどを使うと、頭皮へダメージを与えてしまい赤みを招く可能性があります。
頭皮は外部からのダメージを受けやすいものの、痛みなどに対する感覚が鈍いとされています。知らないうちにダメージを与えてしまい、赤みや炎症を引き起こす可能性があるので、日常生活のなかで頭皮に過度な刺激を加えないことが重要です。
乾燥
頭皮が赤くなる原因として、頭皮の乾燥も挙げられます。
ライオン株式会社の論文6)では、「乾燥した皮膚ではバリア機能の低下が推定される」と説明されています。バリア機能が低下していると外部からのダメージを受けやすくなり、頭皮の赤みや炎症が起こりやすくなります。
また、「頭皮は水分量が少なく乾燥しており、多くの人で肌荒れや紅斑が起こっている」という記載もあります。
頭皮の乾燥は、空気の乾燥や冷暖房の風などによって引き起こされる可能性があるので、生活環境に注意を払いましょう。
6)柏井利之,毛髪・頭皮にやさしい洗浄技術, 日本化粧品技術者会誌, 2013, 47, 3–8.紫外線
頭皮が紫外線を浴びると、赤みを引き起こす可能性があります。紫外線は頭皮にダメージを与えてしまい、浴び続けると頭皮の炎症や乾燥、毛根の萎縮などの症状を招く恐れがあるのです。
アンファー株式会社の発表では、「健康的な頭皮は青白い色をしていますが、頭皮が日焼けすると、ピンクもしくは赤茶色などの色味を帯びてきます」と説明されています。
また、頭皮が紫外線を浴びると毛根がダメージを受けて髪の毛が成長しにくくなってしまい、抜け毛や薄毛を引き起こす可能性があります。このように、紫外線は頭皮の赤みだけでなく薄毛・抜け毛の原因にもなりうるのです。
血行不良
頭皮の血行不良が起こることで、頭皮が赤くなることもあります。
血行不良になると頭皮の健康維持に必要な栄養が届きにくくなり、バリア機能の低下を引き起こす可能性があります。バリア機能が低下することで頭皮がダメージに弱くなり、炎症や赤みが生じやすくなるのです。
また、ライオン株式会社の資料では、血行不良によって頭皮の乾燥を引き起こすと考えられています。頭皮の乾燥は頭皮トラブルや脱毛などにも影響を与えるので注意が必要です。
頭皮の血行不良は、喫煙、ストレス、生活習慣の乱れなど様々な要因によって起こるので注意しましょう。
頭皮が赤いときの対処法とは?
では、頭皮の赤みが出たときにはどのように対処すればよいのでしょうか?
医療機関に相談
頭皮が赤くなっている場合は、皮膚科の病院などの医療機関に相談するのが確実でしょう。頭皮の赤みを引き起こす原因は様々であり、改善するにはその原因や症状に合った正しいケアを行う必要があります。
専門の医療機関なら医師による診察が受けられますし、マイクロスコープなどを使用して頭皮の状態を調べてもらえ、頭皮が赤い原因を突き止めることができます。症状に合った治療や、頭皮の赤みを抑える薬の処方なども受けられます。
もし頭皮の赤みだけでなく薄毛や抜け毛の症状が進行している場合は、薄毛やAGA専門のクリニックに相談するのがよいでしょう。専門のクリニックでは、薄毛改善のための内服薬や外用薬、最新の機器などを用いた薄毛治療が受けられます。
皮膚科と薄毛専門のクリニックの違いを知りたい人は、以下の記事もご覧ください。
頭皮洗浄
頭皮が赤いときには、洗浄を行い頭皮を清潔に保ちましょう。
頭皮に皮脂や汚れが残っていると、細菌が繁殖して炎症や脂漏性皮膚炎などを引き起こす可能性があります。1日1回などしっかりと洗浄を行いましょう。
洗髪する際は、爪で刺激を与えないように指の腹で優しく洗うとともに、頭皮に汚れやシャンプーが残らないようしっかりとすすぐことが大切です。1日に何回も洗浄すると、頭皮の潤いを保つのに必要な皮脂も落としてしまい乾燥しやすくなるため注意しましょう。また、界面活性剤が多く使われているシャンプーは洗浄力が強く、皮脂を落としすぎてしまう可能性があります。
生活習慣の見直し
頭皮の赤みを改善するには、食事や睡眠、喫煙などの生活習慣を見直すのもよいでしょう。
糖分や脂質の多い食事を摂りすぎると、頭皮の血行不良や皮脂の過剰分泌を招く恐れがあるので注意が必要です。また、頭皮を健康に保つためにタンパク質やビタミン、ミネラルなどの栄養を摂りましょう。
睡眠が不足すると成長ホルモンの分泌量が低下し、皮膚のターンオーバーが乱れてしまう可能性があります。ターンオーバーの乱れは頭皮の赤みや炎症の原因となりうるので、睡眠時間を確保して質の良い睡眠をとりましょう。
他にも、運動やストレス対策、禁煙などを行うことで頭皮の血行不良の改善が期待できます。
紫外線対策
頭皮が紫外線によるダメージを受けると炎症や赤みが生じてしまうので、紫外線対策を行いましょう。
頭皮は顔の2倍以上の紫外線を浴びているといわれているため、紫外線対策は重要です。
頭皮用の日焼け止めスプレーや、紫外線対策用のシャンプーなどを利用して頭皮を紫外線から守りましょう。帽子や日傘などで紫外線を防ぐのも大事です。
保湿
頭皮が乾燥すると赤みを引き起こす可能性があるので、頭皮の保湿も重要です。頭皮ケア用の保湿液などを利用して、頭皮が乾燥するのを防ぎましょう。保湿液を選ぶ際は、セラミドなどの保湿成分が含まれているものがよいかもしれません。
また、空気の乾燥によって頭皮が乾燥することもあるので、加湿器やルームミストなどを使って部屋の加湿も行いましょう。
頭皮の乾燥をケアする方法に関しては、以下の記事で詳しく紹介しています。
まとめ:抜け毛を防ぐために頭皮が赤い状態を改善しよう
頭皮の赤みは自分では気づきにくいですが、放置すると症状が悪化してしまいますし、薄毛や抜け毛を引き起こす可能性もあります。頭皮のかゆみや炎症、脱毛などの症状が出ている場合は頭皮が赤くなっていないかチェックしてみましょう。
自分では状態や原因がよくわからない場合や、改善できないという場合は、病院の皮膚科などに相談することをおすすめします。
抜け毛や薄毛が進行していると感じる場合は、AGA専門クリニックに相談するのがよいでしょう。