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頭皮ケア

頭皮の乾燥はケアすべき?乾燥の原因とケア方法を解説

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監修ドクター
高田弘弥
日本医科大学形成外科学教室・抗加齢予防医学講座教授 医学博士・工学博士 【略歴】京都大学大学院工学研究科,名古屋大学大学院医学系研究科修了後,イギリス・ウォーリック大学,フランス国立科学研究所へ留学,日系化粧品会社所長代理・フランス系化粧品会社マネージャを経て,2018年より日本医科大学付属病院形成外科講師,現在同教授 【受賞歴】第11回世界毛髪研究会議(国際毛髪会議)最優秀賞(口頭発表部門),バルセロナ(スペイン),2019年など

頭皮が乾燥していると感じたことはありませんか?フケやかゆみなどの症状が出ているなら、その原因は頭皮の乾燥かもしれません。頭皮の乾燥は様々な症状を引き起こす可能性があるので、早めにケアをするのがよいでしょう。

しかし、頭皮の乾燥を改善したくても、どのようにケアすべきか分からない方も多いのではないでしょうか。この記事では、頭皮の乾燥をケアすべき理由やその原因、頭皮の乾燥をケアする方法を解説します。

頭皮の乾燥をケアすべき理由

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頭皮が乾燥することで、頭皮や毛髪に様々な悪影響を及ぼす可能性があります。まずは頭皮の乾燥に対するケアがなぜ重要なのか、その理由を解説します。

頭皮は乾燥しやすい

頭皮は顔などの皮膚よりも乾燥しやすい傾向にあります。

東京女子医科大学教授へのインタビュー1)によると、「頭皮は身体の他の部位よりも皮脂や汗の分泌量が多いことに加え、バリア機能や水分保持機能が低く乾燥しやすい状態」とされています。つまり、顔や手などの皮膚が乾燥しなくても、水分保持機能が低い頭皮は気づかぬうちに乾燥している可能性があるのです。

特に、湿度が下がる秋や冬などは頭皮が乾燥しやすくなるため、しっかりとケアをしなくてはなりません。

1)BP-Square インタビュー「頭皮の乾燥を科学する─頭皮用保湿ローションの改善効果」川島眞

乾燥は頭皮のトラブルにつながる

頭皮が乾燥すると、かゆみやフケ、炎症などを引き起こす可能性があります。

花王株式会社の調査によると、フケやかゆみなどのトラブルが起こっている頭皮は、バリア機能や水分量が低くなっていることが明らかになっています。上のインタビュー1)でも、頭皮は「刺激には鈍感であるため、障害を起こしやすく、悪化しやすい部位である」と説明されています。

つまり、頭皮の乾燥は頭皮トラブルにつながるので、乾燥をケアすることが重要なのです。

皮脂の過剰分泌を引き起こすことも

頭皮が乾燥すると皮脂の過剰分泌を引き起こすことがあります。というのも、乾燥により頭皮の水分量が低下すると、不足した水分を補おうとして皮脂が過剰に分泌されてしまうのです。

皮膚に関する研究2)でも、「皮脂腺の細胞は自ら脂質を細胞内に貯め込んで成長し、 やがて細胞は脂の塊に変わって皮膚の表面に分泌される。 皮膚表面を脂質で覆って乾燥から皮膚を守る」とされています。

皮脂が過剰に分泌されると、赤みのある湿疹やベタベタとした脂性フケ、抜け毛の原因となる病気などを招く恐れもあるため注意が必要です。

頭皮はもともと皮脂の分泌量が多い部位だからこそ、乾燥によってさらに過剰分泌されないようケアしましょう。

2)藤田友香、山本 享、田村照子、 福岡義隆「皮膚に及ぼす気象要素の影響-夏季・秋季について-」

薄毛・抜け毛の原因となりうる

頭皮の乾燥は、薄毛・抜け毛の原因となる可能性があります。

JHMA日本ヘッドセラピーマスター協会の調査では、「薄毛の人の頭皮の状態をマイクロスコープで調べたところ、頭皮が正常な状態の人は15%しかおらず、『脂が多い』『乾燥している』など状態が悪い人が85%」という結果が出ています。

また大正製薬株式会社と明治薬科大学薬学部教授の共同研究では、皮脂中のトリグリセリドや常在菌であるアクネ菌、マラセチア属菌がAGAの原因や進行に影響している可能性が示唆されており3)、頭皮が乾燥することでフケや炎症・皮脂の過剰分泌などを引き起こし、それによって男性型脱毛症(AGA)が進行する恐れもあります。

3)大正製薬「男性型脱毛症『AGA』患者の頭皮に粘度の高い皮脂成分(トリグリセリド)が多いことを発見」

頭皮が乾燥する原因は?

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そもそも、頭皮は他の部位と比べて乾燥しやすい部位ですが、それ以外にも頭皮の乾燥を招く行動や原因があります。ここでは、頭皮の乾燥の原因となる要素を紹介します。

加齢

加齢も頭皮の乾燥を引き起こす原因のひとつです。

頭皮を守っている皮脂や天然保湿因子が若い頃よりも減ることにより、頭皮も加齢で乾燥肌になります

また皮脂や天然保湿因子だけでなく、細胞間脂質の一種である「セラミド」も加齢によって減少してしまいます。セラミドは頭皮の水分を保持し、バリア機能を高める働きを持ちますが、加齢により不足すると乾燥などの頭皮トラブルを引き起こしやすくなります。

血行不良

血行不良によっても頭皮の乾燥を引き起こす可能性があります。血行が悪くなると頭皮の潤いを保つための水分や栄養が行き渡りにくくなるため、乾燥しやすくなってしまいます。

ライオン株式会社の男性の毛髪と頭皮に関する研究では、「頭皮の硬さを引き起こしているのは、頭皮の乾燥で、その乾燥は血行不良に由来すると推測されます」と説明されています。また、血行不良は薄毛の直接の原因になるとも言われています。

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎とは、身体や頭部にかゆみを伴う湿疹が発生し、悪化・改善を繰り返す疾患です。かゆみや湿疹だけでなく皮膚の乾燥・バリア機能の低下といった症状も現れることがあるので、頭皮の乾燥につながる可能性があります。

日本皮膚科学会の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021」4)では、「アトピー性皮膚炎は多病因性の疾患である。アトピー素因(体質)とバリア機能の脆弱性等に起因する」と書かれています。つまり、アトピー性皮膚炎は体質もしくはバリア機能の弱さによって起こるのです。

家族にアトピー素因を持っている人がいる場合や外界からの刺激に対して弱い場合は、アトピー性皮膚炎による乾燥も疑いましょう。

4)公益社団法人日本皮膚科学会 一般社団法人日本アレルギー学会 アトピー性皮膚炎診療ガイドライン作成委員会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021」

頭皮の洗いすぎ

頭皮の洗いすぎも、乾燥につながる可能性があります。1日に何度も洗髪すると、頭皮を外的刺激から守るために必要な皮脂まで落としてしまい、乾燥しやすくなってしまうのです。

1日2回以上シャンプーをしているなど過度に洗髪をするのは、頭皮を正常に保っているようで逆効果となる恐れがあるので注意しましょう。

また、洗髪の回数が適切でも洗浄力が強いシャンプーを使っていると、皮脂を落としすぎてしまいバリア機能の低下を招く恐れがあります。

パーマやヘアカラー

パーマやヘアカラーにも注意が必要です。パーマ剤やヘアカラー剤には刺激の強い成分が含まれており、それらが頭皮に付着することで乾燥を引き起こすことがあります。

例えば、「チオグリコール酸アンモニウム」という成分は特に刺激が強く、頭皮につくと炎症やかぶれを引き起こす可能性があります。また、アンモニア系の成分が入っている場合は、付着することで頭皮を溶解させてしまう可能性があり、乾燥やフケなどの原因となります。

パーマやヘアカラーを頻繁に行う人は注意しましょう。

紫外線

紫外線も頭皮の乾燥を引き起こす原因のひとつです。

東京工科大学の研究チームは、紫外線によって皮膚が乾燥するメカニズムを明らかにしています5)で明らかにしています。ここでは、「角層細胞に存在するカルボニルタンパクが、紫外線から活性酸素を生成することでさらに増加し、皮膚の乾燥を誘導する」と書かれています。

つまり、紫外線を浴びることで変性したタンパク質が増加し、それが皮膚の保湿機能を低下させ皮膚が乾燥するのです。

また、頭皮は顔と比べて2倍以上の紫外線を浴びているともいわれており、紫外線による乾燥が起きやすい部位だといえます。

5)東京工科大学応用生物学部「日焼けによる肌乾燥のメカニズムを解明-角層細胞タンパクのカルボニル化と活性酸素生成のループが関与-」

空気の乾燥

空気が乾燥していると、頭皮から水分が蒸発して乾燥します。

夏場や冬場などは室内もエアコンやストーブなどにより空気が乾燥しがちです。そういった環境にいると、頭皮が乾燥した状態が続いてしまうのです。

頭皮が乾燥するとフケやかゆみが出てくることがあるので、しっかりと水分を保てるようにケアをしましょう。

頭皮の乾燥をケアする方法

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頭皮の乾燥をケアするには何を行えばよいのでしょうか?

医療機関を受診

頭皮が乾燥していてフケやかゆみが出ている場合には、自分だけでケアをせず皮膚科や専門クリニックを受診しましょう。

医師や専門家に頭皮の状態を検査してもらうことで症状の原因が乾燥によるものかを調べられますし、原因に合ったケアも受けられ症状の改善が期待できるでしょう。頭皮の乾燥によって抜け毛が増えている場合には、薄毛治療も行ってもらえます。

また、頭皮の乾燥をケアする用品を販売しているクリニックもあります。

保湿液を利用

頭皮用の化粧水や美容液などを使って保湿することで、乾燥の改善が期待できます。

マンダムの調査報告には、「頭皮用モデル化粧水の塗布により、角層水分量が増加して頭皮が潤うこと、頭皮の伸張性が増加して頭皮が柔らかくなることが明らかになりました。また、皮脂量の低下や、フケの改善も確認されました」と記載されています。

頭皮に有効な成分を配合していて頭皮に優しい保湿液を選び、乾燥を防ぎましょう。

生活習慣の見直し

頭皮の乾燥をケアするためには生活習慣の見直しも重要です。

食事によって頭皮の乾燥を防ぐための栄養を送ることができます。植物性タンパク質、亜鉛、ビタミンC、ビタミンB群、ビタミンAなどを摂るよう意識してみてください。また、運動をすると血行が促進されるため、頭皮の乾燥を軽減できる可能性があります。

喫煙習慣のある人は禁煙するのもよいでしょう。タバコに含まれているニコチンには毛細血管を収縮させる作用があるので、禁煙によって頭皮の血行改善ができ、乾燥を軽減できる可能性があります。

質のよい睡眠を十分取ることでも同じ効果が期待できます。

頭皮にやさしいシャンプーを使用

洗浄力の強いシャンプーは頭皮へ刺激を与えてしまいますし、皮脂を落としすぎることで乾燥を起こすことがあります。洗浄力が強すぎない頭皮に優しいシャンプーを利用しましょう。

シャンプーは大まかに分けて、洗浄力が強い順に高級アルコール系、アミノ酸系、石鹸系の3種類あります。乾燥しがちな頭皮には、洗浄力がほどよいアミノ酸系のシャンプーを使用するのがよいでしょう。さらに、濃グリセリンやブチレングリコールといった保湿成分が入っているシャンプーを選ぶことでも頭皮の乾燥に対してケアができます。

頭皮マッサージ

頭皮の乾燥をケアするには、頭皮マッサージも有効です。マッサージをすることで血行促進効果が期待でき、頭皮に栄養や水分が行き渡りやすくなる可能性があります。

花王株式会社ヘアケア研究所が行った研究6)では、約3分間の独自マッサージ方法を実施したところ「即時的な血行促進作用が認められ、平均で約120%まで上昇し、20分程度持続」することが確認されています。

以下の記事では頭皮のマッサージ器を紹介していますので、ぜひご覧ください。

6)花王株式会社ヘアケア研究所 曽我元、森田康治、新井賢二「地肌マッサージの頭皮への作用」

外的刺激を避ける

頭皮の乾燥をケアするには、紫外線やパーマ・ヘアカラーなどの外的刺激を避けることも重要です。

外出時には帽子をかぶったり頭皮ケア用のスプレーを使ったりして、頭皮を守りましょう。また、パーマ・ヘアカラーを頻繁に行うことは避けましょう。

部屋の加湿

空気が乾燥すると頭皮の乾燥を招く可能性もあるため、部屋の加湿も行いましょう。特に、秋や冬などは特に空気が乾燥しがちなので、加湿器を使ったり濡れたタオルを干したりして、部屋の乾燥を防ぐのがよいです。

ただし、部屋の湿度を上げすぎるとマラセチアなどの菌が増殖しやすくなり、頭皮トラブルの原因となる可能性があるので、湿度は50〜60%ほどに保ちましょう。

また、夏にエアコンを使用する際は冷房などの風が頭皮に直接当たらないよう注意しましょう。

これはNG!間違った頭皮の乾燥ケア

頭皮の乾燥をケアするために誤った対策を行うと、乾燥の悪化や頭皮トラブルにつながる可能性があります。ここでは間違いがちな乾燥対策を紹介するので、行わないようにしましょう。

洗髪後の自然乾燥

洗髪後にドライヤーを使わずに自然乾燥させることは避けましょう。洗髪後すぐに乾かさず頭皮が湿った状態が続くと、雑菌が繁殖してかゆみや炎症を引き起こす可能性があります。マラセチア菌が繁殖すると脂漏性皮膚炎を引き起こすリスクもあるので、洗髪後はドライヤーを使って頭皮を乾かしましょう。

熱風を当てることに抵抗がある場合は、冷風を使用するのもよいです。

トリートメントを地肌につける

トリートメントは髪の毛をケアするものなので、頭皮に直接つけることは避けましょう。

トリートメントには髪の毛を保湿する成分などが含まれていますが、地肌に直接つけると刺激を与えてしまったり毛穴が詰まったりする可能性があります。

頭皮トラブルを引き起こす恐れがあるため、トリートメントは地肌ではなく毛先につけるようにし、頭皮に残らないようしっかりとすすぎましょう。

熱いお湯で流す

洗髪時は熱すぎるお湯で流さないように注意しましょう。熱すぎるお湯で頭皮を洗うと頭皮を守るための皮脂まで落としてしまい、乾燥が悪化する可能性があります。

そのため、洗髪する時にはシャワーの温度を37度〜39度などに調整するのがよいでしょう。

まとめ:薄毛を予防するにも頭皮の乾燥に注意

頭皮はもともと乾燥しやすく、乾燥によって皮脂の過剰分泌や頭皮トラブル、薄毛・抜け毛を招く恐れがあるため、早めにケアをするのがよいです。

今回紹介した方法でケアしても乾燥が改善されない場合は、アトピー性皮膚炎などの病気になっているかもしれません。病気が疑われる場合は、自分でケアするのではなく皮膚科や専門クリニックなどの医療機関を受診しましょう。

薄毛を防ぐための頭皮ケアに関しては以下の記事で解説しているので参考にしてください。

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