Pixie Dust Technologies Inc.

AGA対策

20代男性が薄毛対策を行うべき理由。薄毛の原因や対策を解説

/
監修ドクター
高田弘弥
日本医科大学形成外科学教室・抗加齢予防医学講座教授 医学博士・工学博士 【略歴】京都大学大学院工学研究科,名古屋大学大学院医学系研究科修了後,イギリス・ウォーリック大学,フランス国立科学研究所へ留学,日系化粧品会社所長代理・フランス系化粧品会社マネージャを経て,2018年より日本医科大学付属病院形成外科講師,現在同教授 【受賞歴】第11回世界毛髪研究会議(国際毛髪会議)最優秀賞(口頭発表部門),バルセロナ(スペイン),2019年など

20代の男性でも、「最近抜け毛が増えている…」「前頭部・頭頂部の毛髪が薄くなっている気がする…」と感じている人もいるのではないでしょうか。

今はそんなに目立っていないからと対策を始めていないかもしれませんが、薄毛は20代でも発症する可能性がありますし、対策をしないと年々状態が悪化する可能性があります。早い段階で対策を始めておかないと、この先数十年後には毛髪がほとんどないという事態になってしまうかもしれません。

だからこそ、薄毛を改善するためにも早めに原因を理解して、原因にあった対処を行っておく必要があります。

今回の記事では、20代男性の薄毛の原因や若いうちからできる薄毛対策について説明します。20代でも薄毛で悩んでいる方や将来が心配な方はぜひ参考にしてください。

薄毛が気になる20代男性はどれくらい?

株式会社リクルートライフスタイルの調査によると、薄毛を気にしている20代男性は75%となりました。また、アンファー株式会社の調査では、薄毛であることをコンプレックスに感じている20代男性は12%となっています。

このように、20代男性の多くが薄毛を気にしており、中にはコンプレックスに感じる程度にまで薄毛が進行している人もいるのです。

20代男性でも薄毛になる?

薄毛の最大要因は男性型脱毛症(AGA)です。

日本皮膚科学会による「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版」では、男性型脱毛症(AGA)は「日本人男性の場合には20歳代後半から30歳代にかけて著明となり、徐々に進行して40歳代以後に完成される」と説明されています。また、その発症頻度は「20代で約10%」と書かれています。

つまり、20代の男性でも男性型脱毛症による薄毛が起こる可能性があるのです。

20代のうちから薄毛対策を行ったほうがいい?

20s-thinning-hair-male-1

では、20代のうちから薄毛対策は行うべきなのでしょうか?

先ほどのガイドラインによると、男性型脱毛症の発症率は「20代で約10%、30代で20%、40代で30%、50代以降で40数%」と、年齢とともに高くなると説明されています。つまり、20代で発症していないとしても年齢を重ねるほど発症するリスクが高まるのです。

AGAでは、毛が細く短くなってうぶ毛化が進行することで、頭皮が見えるようになり薄毛が起こります。こういった症状が見られた場合は、早めに対策を行い毛を太く長くすることで薄毛の改善が期待できます。 

薄毛が進行しすぎてしまうと、対策を行っても思うような効果を得られないことがあります。早めに薄毛対策を行っておくことで将来発症したときの薄毛の症状を緩和できるので、20代のうちから薄毛対策を始めることが重要です。

20代の薄毛を招く病気

20代の男性が薄毛になるにはいくつかの理由が考えられます。その理由として考えられる病気を紹介します。

1.男性型脱毛症(AGA)

男性型脱毛症(AGA:Androgenetic alopecia)は、毛包がミニチュア化(毛の本数は同じであるが、毛が細く短くなってうぶ毛化が進行)することで前頭部や頭頂部などの毛髪が細く、短くなり脱毛する病気です。

安達健二氏の発表1)によると、AGAは男性の薄毛の95%以上を占めるとのことです。そして、AGAの大部分は男性ホルモンと遺伝的素因によって引き起こされます。

20代に見られるAGAは「若年性脱毛症」と呼ばれることもあります。

1)安達健二,男性型毛―その特性と未来像

2.円形脱毛症

円形脱毛症とは、円形や楕円形など部分的に毛髪が脱毛する後天性の病気です。

大山学氏による論文2)では、円形脱毛症は「境界明瞭な脱毛斑を呈し、病理組織学的には成長期毛包の毛球部周囲のリンパ球主体の炎症性細胞浸潤を特徴とする自己免疫性疾患」と説明されています。つまり、免疫系が正常に機能しなくなり、体が自身の正常な組織を攻撃してしまう自己免疫性疾患により起こるのです。

「日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン2017年版」によると、円形脱毛症は年齢を問わず発症するため、20代でも発症する可能性があります。

ちなみに、同ガイドラインで紹介されている米国ミネソタ州の調査によると、円形脱毛症の発症頻度は1万人あたり20.2 人(0.2%)、平均年齢は33歳で発症頻度に男女差はないということです。

2)大山学,円形脱毛症治療の考え方―毛周期の変調からみた病態と治療理論―(2019年)

3.脂漏性脱毛症

脂漏性脱毛症とは、赤みやかゆみ、フケなどが見られる脂漏性皮膚炎によって生じる脱毛症のことです。皮脂の過剰分泌によって、抜け毛が増えてしまいます。

脂漏性脱毛症は、頭皮に存在するカビの一種であるマラセチア菌が異常に繁殖することで起こると考えられています3)。頭皮の皮脂量が増えることで、マラセチアが増えて脱毛が起こってしまうのです。

皮脂の分泌量や変化の仕方は個人によって差があるので、20代でも皮脂が異常に増えているようであれば注意が必要です。脂漏性脱毛症はホルモンバランスの変化や生活習慣の乱れ、間違ったヘアケアによって起こることもあります。

3)清 佳浩, 中林 淳浩,脂漏性皮膚炎(1999 年)

20代男性が注意したい薄毛を引き起こす要因

20s-thinning-hair-male-2

20代の男性の薄毛の要因となる病気を紹介しましたが、これらの薄毛を引き起こす要因とは何なのでしょうか?

1.遺伝

上でも説明しましたが、薄毛は遺伝によって起こる可能性があります。薄毛になりやすい家系だと薄毛を発症する可能性が高いです。

日本皮膚科学会のガイドラインでは、「遺伝的背景としてはX染色体上に存在する男性ホルモンレセプター遺伝子の多型や常染色体の17q21や20p11に疾患関連遺伝子の存在が知られている」と説明されています。つまり、男性型脱毛症に関係する遺伝子が存在するのです。

先ほどの安達健二氏の論文1)では、「男性型脱毛の二大要素は男性ホルモンと遺伝的素因である」とされており、ヘアメディカルグループの報告書ではAGAの遺伝率は81%とされています。

このように遺伝は男性型脱毛症の大きな要因であるため、家族や親族に薄毛が見られる人は、20代であっても対策を始めるとよいかもしれません。

2.男性ホルモン

男性ホルモンもまた、男性の薄毛を引き起こす大きな要因です。

日本皮膚科学会のガイドラインによると、男性ホルモンの一種であるテストステロンが5αリダクターゼという酵素と結びつくことによって、DHT(ジヒドロテストステロン)が生成され、このDHTが男性ホルモン受容体と結合することで、髪の成長期が短縮され薄毛が起こるとされています。

また、「一般的に男性ホルモンは骨・筋肉の発達を促し、髭や胸毛などの毛を濃くする方向に働く。しかし、前頭部や頭頂部などの男性ホルモン感受性毛包においては逆に軟毛化現象を引き起こす」と説明されています。前頭部や頭頂部では、男性ホルモンが薄毛を引き起こす可能性があるのです。

3.ストレス

ストレスも薄毛を引き起こす原因のひとつです。特に、就職活動や1人暮らし、社会人としてのスタートなど、20代は生活環境が大きく変わりやすく、ストレスを感じやすい時期といえます。

株式会社アドバンテッジ・リスク・マネジメントが実施した調査では、高ストレス者の割合を年代別にみると20代が最も高いという結果になっています。

Ya-Chieh Hsu氏などによる研究4)では、コルチコステロン濃度(ストレスを感じる際に分泌されるホルモン)が上昇すると、毛包は長期間にわたって休止期(髪の毛が生えない期間)にとどまることが明らかにされています。

4)Sekyu Choi, Bing Zhang, Sai Ma, Meryem Gonzalez-Celeiro, Daniel Stein, Xin Jin, Seung Tea Kim, Yuan-Lin Kang, Antoine Besnard, Amelie Rezza, Laura Grisanti, Jason D. Buenrostro, Michael Rendl, Matthias Nahrendorf, Amar Sahay Ya-Chieh Hsu Corticosterone inhibits GAS6 to govern hair follicle stem-cell quiescence(2021年)

4.食生活

食生活も薄毛につながる可能性があります。食生活が乱れると、髪の毛を成長させるのに重要な栄養素が不足してしまいます。

マルハニチロ株式会社の「20代の健康と食生活に関する意識・実態調査 2021」によると、20代の約5割以上が「食生活が乱れている」と感じています。

また、厚生労働省の平成29年国民健康・栄養調査結果の概要では、朝食の欠食率は男女とも20歳代で最も高いことがわかります。

このように食生活の乱れや栄養不足が起こりがちな20代は、薄毛を進行させないためにも健康的な食生活を心がける必要があるのです。

5.喫煙

喫煙は薄毛に対して悪い影響を及ぼす可能性があります。

アメリカの亜東記念医院のLin-Hui Su博士と国立台湾大学のTony Hsiu Chen博士は、アジア系男性の頭部の脱毛に対して喫煙が原因の1つであるとの見解を発表しています5)

また、ハーバード公衆衛生大学院の‪James McKinlay氏らの研究6)によると、喫煙者は非喫煙者と比べて、薄毛の原因となるDHTの数値が14%高いことがわかっています。

20代でタバコを吸っている男性は、薄毛に影響する可能性があるので注意しましょう。

5)Lin-Hui Su,Tony Hsiu Chen Smoking accelerates men’s hair loss: study

6)A E Field,G A Colditz,W C Willett,C Longcope,J B McKinlay The relation of smoking, age, relative weight, and dietary intake to serum adrenal steroids, sex hormones, and sex hormone-binding globulin in middle-aged men(1994年)

6.睡眠

睡眠不足も薄毛につながる可能性があります。

睡眠時には、毛髪の成長に作用する成長ホルモンが分泌されるので、睡眠不足になってしまうと成長ホルモンの分泌量が減少して、毛髪の形成に必要なタンパク質の合成が十分に行われなくなってしまうのです。

20代は仕事や生活の乱れから睡眠不足になる傾向にあります。味の素が実施した調査によると、20~30歳代の7割が睡眠に関する悩みを抱えています。

​​

7.肥満

肥満も薄毛を引き起こす可能性があります。

東京医科歯科大学の研究チームによると、「肥満になると、ある種の炎症シグナルが生じて、毛包幹細胞が枯渇することが分かった。この炎症シグナルは毛包の再生を阻害するため、結果的に毛包が失われる」とされています。つまり、肥満になると結果的に毛包が失われてしまい、薄毛や抜け毛が進行してしまう可能性があるのです。

厚生労働省の「平成29年国民健康・栄養調査結果の概要」によると、運動習慣のある人の割合を年代別にみると、男女ともに20代で最も低くなっています。

8.頭皮環境の悪化

頭皮の洗浄が不十分な場合やシャンプーのすすぎ残しが続く場合などは、頭皮環境が悪化して薄毛が進行する恐れがあります。毛穴が詰まったり細菌が繁殖したりすることによって、脱毛が起こる可能性があるのです。

頭皮は毎日洗浄し清潔な状態を保つようにするとともに、シャンプーなどは丁寧に落とすようにしましょう。

20代男性の薄毛対策

20s-thinning-hair-male-3

薄毛の原因がわかりましたが、これらによる薄毛を防ぐため、20代から始められる薄毛対策の内容を紹介します。

1.薬剤

AGAによる薄毛を予防・改善するためには薬剤が有効です。薬剤には外用薬と内服薬があります。

日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版」でも、特定の薬剤の使用が推奨されています。推奨されている薬剤の効果は以下の通りです。

薬剤

服用方法

効果

フィナステリド

内服

DHTの生成を阻害する

デュタステリド

内服

DHTの生成を阻害する

ミノキシジル

外用

発毛を促進する

アデノシン

外用

発毛を促進する

20代のうちからこういった薬剤を利用することで、AGAの症状の緩和が期待できます。

このような薬剤の個人輸入は、日本で認可されていないものも多く、副作用が発生した時に正しく対処できないなどのリスクがあります。内服薬や外用薬はクリニックで処方してもらいましょう。

2.専門クリニック

薄毛やAGAを専門とするクリニックでは医師によって診断してもらえますし、適切な治療を行ってもらえます。

専門クリニックには豊富な症例データがありますし、遺伝子検査や血液検査、拡大鏡などを利用して、それぞれに合った処置を行ってもらえます。

専門クリニックでは最新の研究をチェックしていますし、最先端の技術を利用した機器の開発を行っているところもあります。最近では、超音波による非接触振動圧刺激やLEDなどの機器を開発しているクリニックもあります。

20代で薄毛がそこまで進行していないとしても、遺伝子検査によって将来の薄毛のリスクを調べられます。早い段階で薄毛対策を行うことで、将来薄毛が起こった時の症状を緩和することができるでしょう。

3.生活習慣の見直し

薄毛を改善するためには、薬剤やクリニックでの治療だけでなく、生活習慣を正すことも重要です。20代で睡眠や食事、運動、喫煙などの生活習慣に問題がある場合、将来的な薄毛につながる可能性があります。

十分な睡眠時間を確保し、健康バランスの整った食生活を心がけ、運動や禁煙を行うなどしましょう。それによって、頭皮や毛髪を正常な状態に保つことができます。

4.ストレス解消

ストレスは薄毛につながる可能性があるのでうまく対処しましょう。

ウォーキングやジョギングなどの運動、ストレッチ、日光浴、読書など、それぞれに合ったストレス解消法を行うのがよいです。

また、ストレス状態が慢性化すると食生活の乱れや不眠にもつながります。これらによって薄毛が起こり、さらにストレスを生むという悪循環を発生させる可能性があるので注意が必要です。

5.頭皮の洗浄

頭皮の洗浄もこまめに行うようにしましょう。20代男性は頭皮の皮脂量が多いので、洗浄を徹底して余分な皮脂を落とし、頭皮環境を正常に保っておくことが大切です。

ただ、洗浄力の強い成分のシャンプーを利用するなどして必要な皮脂まで落としてしまったり、肌に合わないヘアケア用品を使用していたりすると逆効果になる恐れがあります。

必ず正しい方法で頭皮の洗浄を行うようにしましょう。自分で判断できない場合には、専門クリニックや毛髪診断士などに相談するのがよいです。

20代男性の頭皮ケアについては、以下の記事でも紹介しています。

6.頭皮マッサージ

頭皮マッサージは薄毛対策になる可能性があります。マッサージの刺激には薄毛を改善する効果があるかもしれません。

AGA専門クリニックであるDクリニックの発表によると、24週にわたる頭皮マッサージで健常男性の毛径が増大したということです。頭皮マッサージを行うことで毛が細くなることを防げ、薄毛を改善できる可能性があるのです。

頭皮マッサージ機器については、以下で紹介しています。

まとめ:薄毛対策は20代から始めよう

男性は20代でも薄毛が起こる可能性がありますし、まだ始まっていないとしても将来薄毛になってしまうかもしれません。

20代のうちから薄毛対策を行うことで、こういった薄毛の悪化や将来の薄毛を予防することができます。気になる人は20代のうちからクリニックを受診する、薬剤を利用する、生活習慣を改善するなどして薄毛対策を行いましょう。

また、最新の研究では新しい薄毛治療法なども発見されているので、新しい情報なども得て薄毛対策を行うのがよいでしょう。

関連記事