頭皮の湿疹は抜け毛に関係がある?湿疹と薄毛の関係、ケア方法について解説!
頭皮には髪の毛が生えているので、湿疹が出ていても気づきにくいかもしれません。ただ、かゆみやフケ、べたつきなどの症状が出ているなら頭皮に湿疹ができている可能性があります。もし頭皮に湿疹が出ているようであれば、それによって頭皮や毛髪のトラブルを引き起こす可能性があるので注意が必要です。
本記事では頭皮の湿疹の症状や原因、薄毛との関係について解説します。頭皮の湿疹による薄毛・抜け毛を防ぐ方法も紹介するので、湿疹や薄毛に悩んでいる人はぜひ参考にしてください。
頭皮の湿疹とはどんな症状?
まずは、頭皮に湿疹が出た場合の症状について解説します。
湿疹とは、主に皮膚の表面に現れる「湿った発疹」のことで、皮膚炎と呼ばれることもあります。日本皮膚科学会の「接触皮膚炎診療ガイドライン2020 1)」では、湿疹について以下のように記述されています。
湿疹とは、外的、内的刺激に対する表皮・真皮上層を場とし、かゆみ、ヒリヒリ感を伴う可逆性の炎症反応で、組織学的に表皮細胞間浮腫、海綿状態から水疱形成に至る特徴をもち、臨床的に湿疹三角に示されるように、紅斑、丘疹、小水疱から苔癬化に至る可変性を有する皮疹から成り立つ皮膚疾患の総称である。
つまり、頭皮に湿疹が出ている場合はかゆみやヒリヒリ感、ぶつぶつ、赤みのある炎症などの症状が見られる可能性があります。このような症状が頭皮に出ている場合は、悪化を防ぐため早めにケアをしたほうがよいでしょう。
1)高山かおる,横関博雄,松永佳世子 他, 接触皮膚炎診療ガイドライン 2020. 日皮会. 2020,130,523-567.頭皮に湿疹が起こる原因とは?
では、なぜ頭皮に湿疹ができてしまうのでしょうか。頭皮の湿疹を引き起こす原因となりうる病気について説明します。
脂漏性皮膚炎
頭皮の湿疹を引き起こす原因のひとつとして、脂漏性皮膚炎があります。脂漏性皮膚炎は、頭皮や顔など皮脂の分泌が盛んな部位に起こりやすい皮膚炎であり、頭皮ではフケや炎症、ニキビ、かゆみ、湿疹などの症状が現れます。
脂漏性皮膚炎の原因は、皮脂を栄養源とするマラセチアという常在菌であると考えられています。頭皮でマラセチア菌が増殖することで刺激を与えてしまい、頭皮の炎症・湿疹を引き起こす可能性があります。
また、清佳浩氏と中林淳浩氏の論文 2)では、脂漏性皮膚炎の発症にはマラセチア菌だけでなくストレスやホルモンバランスの乱れ、皮脂の異常なども関与しているとされています。
2)清 佳浩, 中林 淳浩, 脂漏性皮膚炎. 昭和大学藤が丘病院皮膚科. 1998, 3853, 33-36.接触性皮膚炎
接触性皮膚炎は、ヘアケアアイテムといった刺激物質やアレルギーの原因となる物質が皮膚に直接触れることによって起こる皮膚炎です。発症すると湿疹や水ぶくれ、かゆみ、ヒリヒリとした痛みなどの症状が現れます。
接触性皮膚炎は、大きく「刺激性接触皮膚炎」と「アレルギー性接触皮膚炎」の2つに分類され、それぞれ以下のような特徴があるとされています。
刺激性接触皮膚炎:洗髪剤などの化学物質によって発症し、かゆみよりも痛みが生じる傾向にある
アレルギー性接触皮膚炎:抗菌薬や化粧品など様々な物質によって発症し、重度のかゆみが生じる傾向にある
接触皮膚炎診療ガイドライン 1)では、接触性皮膚炎について「原因を確定し、その原因との接触を断つことができれば根治できる疾患である」と説明されています。つまり、原因になったものと接触することがなくなれば症状が落ち着く可能性があるため、原因が特定して早めに対応することが重要です。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎とは、頭皮や身体にかゆみを伴う湿疹が発生し、悪くなったり良くなったりを繰り返す病気のことです。代表的な症状はかゆみ・湿疹ですが、皮膚のバリア機能低下や乾燥などの症状が現れることもあります。
日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎診療ガイドライン 20183)では、「アトピー性皮膚炎は多病因性の疾患である。アトピー素因(体質)とバリア機能の脆弱性等に起因する」と記載されています。遺伝や皮膚のバリア機能が正常に働かないことなどが原因で発症すると考えられているのです。
慢性的な湿疹やかゆみがあったり、家族にアトピー素因を持つ人がいたりする場合は、アトピー性皮膚炎が原因かもしれません。
3)加藤則人,大矢幸弘,池田政憲 他,アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018. 日皮会.2018.128.2431-2502.尋常性乾癬
尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)とは、皮膚に紅斑や白い発疹が生じる病気です。発疹が乾燥してフケのようにはがれ落ちたり、かゆみが出たりなどの症状が現れることもあります。
東京医科大学の資料では、「肘頭、膝蓋などの四肢伸側や腰・臀部、被髪部、頭髪の生え際などの外的物理的刺激が加わることの多い部位は好発部位となっている」と書かれており、頭皮でも起こる可能性があります。
また、「尋常性乾癬は、遺伝的素因(HLA-Cw6など)を背景に樹状細胞やTh1細胞、Th17細胞などを介した種々の免疫学的異常を呈する慢性炎症性皮膚疾患で、感染やストレスなどの環境因子により増悪することが知られている」という記述もあります。尋常性乾癬は遺伝やストレス、感染などによって起こることもあるのです。
蕁麻疹
蕁麻疹(じんましん)は、皮膚の一部に円形・楕円形などの赤みのある盛り上がり(膨疹)が発生する病気です。膨疹だけでなく、チクチクとした焼けるような違和感やかゆみといった症状が出る場合もあります。
「蕁麻疹診療ガイドライン 2018」4)には、「膨疹は全身のいずれにも出現する」と記載されており、頭皮に蕁麻疹の症状が出る可能性もあります。
蕁麻疹の原因としては、疲労やストレス、食べ物、感染などと考えられています。
4)秀道広,森桶聡,福永淳 他, 蕁麻疹診療ガイドライン 2018. 日皮会.2018.128,2503-2624.頭部白癬
頭部白癬(しらくも)は、毛髪や頭皮に皮膚糸状菌(ひふしじょうきん)という菌が感染することで起こる感染症です。皮膚糸状菌とは、髪の毛や皮膚などに含まれているタンパク質の一種「ケラチン」を養分とする真菌(カビ)のことです。
福田知雄氏の論文5)によると、頭部白癬の原因となるのはトリコフィトン属・ミクロスポーム属の皮膚糸状菌だと考えられており、これらの菌は人から人へ感染するとされています。
頭部白癬を発症すると、うろこ状の発疹やかゆみ、脱毛などの症状が現れることがあります。
5)福田知雄, 頭部白癬. 杏林大学医学部皮膚科. Med. Mycol. J. Vol. 52(No.1), 2011頭皮の湿疹によって薄毛や抜け毛が起こる理由
ここまで、頭皮の湿疹が起こる原因を説明してきましたが、頭皮の湿疹は薄毛や抜け毛の症状を引き起こすことがあります。ここからはその理由を紹介します。
薄毛を引き起こす病気
上で紹介した脂漏性皮膚炎と頭部白癬という病気は、症状が悪化すると薄毛や抜け毛を起こすことがあります。
脂漏性皮膚炎により頭皮の湿疹や炎症が悪化すると、脂漏性脱毛症という病気になり抜け毛が増えてしまうことがあります。また、皮膚糸状菌に感染し頭部白癬が起こると、頭部の脱毛に至る禿瘡(とくそう)という病気になることもあります。これら2つ以外の病気でも、頭皮に湿疹があると二次的に薄毛や抜け毛を起こす可能性があるので注意しましょう。
ホーユー株式会社の発表では、「頭皮の赤みは、乾燥性の異常脱毛につながる頭皮のトラブルの1つである」とされています。このように、湿疹を招く病気によって薄毛につながる恐れがあるため、頭皮の湿疹はしっかりケアをしましょう。
頭皮環境が悪化する
頭皮の湿疹が続くと、頭皮環境が悪化し薄毛や抜け毛が起こる可能性があります。
湿疹ができているということは、頭皮でマラセチア菌などの細菌や皮脂が増加している可能性があります。皮脂や菌が原因で、頭皮環境の悪化や薄毛を招く恐れがあるのです。
大正製薬株式会社と明治薬科大学薬学部教授の共同研究では、AGA患者の頭皮には皮脂成分であるトリグリセリドやアクネ菌、マラセチア属菌が多いことが発見されました。つまり、頭皮の皮脂・細菌による頭皮環境の悪化が、男性型脱毛症(AGA)を進行させる可能性があります。
毛周期の乱れ
湿疹による頭皮環境の悪化は、毛周期の乱れを起こす可能性があります。毛周期が乱れると、髪の毛が正常に成長しにくくなります。それにより髪の毛が細く短くなったり、抜け毛が増えたりして薄毛を進行させてしまうことがあります。
髪の毛は、生えてから抜け落ちるまでに成長期・退行期・休止期のサイクルを繰り返しています。このサイクルが乱れ成長期が短くなってしまうと、髪の毛の成長が不十分な状になってしまい、薄毛が進行してしまいます。
かさぶた
湿疹ができている部分を掻くことで、頭皮が傷つきかさぶたができることがあります。かさぶたを放置すると、薄毛・抜け毛につながる可能性があるため注意しましょう。
というのも、かさぶたができていると髪の毛の成長が阻害されたり、新しい毛髪が生えてこなくなる可能性があるのです。また、皮脂の分泌が活発な位置にかさぶたができた場合、放置することでAGAの原因となりうるマラセチア菌が繁殖する恐れもあります。
ただ、頭皮のかさぶたをはがすと傷口から細菌が侵入し、頭皮環境が悪化する恐れがあるため無理にはがさないようにしましょう。
頭皮の湿疹による薄毛・抜け毛を防ぐには
頭皮の湿疹によって薄毛や抜け毛を起こす可能性があることがわかりましたが、湿疹による薄毛を防ぐにはどのようなケアをすればよいのでしょうか?ここでは、頭皮の湿疹のケア方法について説明します。
医療機関を受診
頭皮に湿疹ができている場合は、皮膚科の病院などの医療機関を受診しましょう。
頭皮の湿疹を改善するには原因に合ったケアが必要ですが、湿疹を起こす原因は様々であり自分で判断するのは困難です。医療機関であれば、医師に頭皮や身体の状態を診察してもらえるので原因が明確になりますし、病状に合った治療も受けられます。
薄毛・抜け毛が気になる場合は、薄毛専門のクリニックを受診するのもよいでしょう。
薬の利用
頭皮の湿疹を改善するには、外用薬・内服薬などの薬を利用するのもよいです。湿疹の原因となっている病気に合った薬を使うことで、症状の改善が期待できます。
論文や日本皮膚科学会のガイドラインなどの資料によると、湿疹の治療には以下のような薬が用いられています。
病名 | 治療薬 |
---|---|
脂漏性皮膚炎 | 抗真菌剤、ステロイド外用薬、ケトコナゾールクリーム2) |
接触性皮膚炎 | ステロイド外用薬・内服薬、抗ヒスタミン薬1) |
アトピー性皮膚炎 | ステロイド外用薬、抗炎症外用薬、抗ヒスタミン薬、保湿外用剤3) |
尋常性乾癬 | ステロイド外用薬、活性型ビタミンD3外用薬 |
蕁麻疹 | 抗ヒスタミン内服薬4) |
頭部白癬 | 抗真菌薬(内服)6) |
洗髪
頭皮の湿疹を防ぐには、洗髪も重要です。
札幌皮膚科クリニックの安部正敏院長によると、湿疹が出ている患者によっては洗髪を行わなかったり、かゆみを軽減するためにトニックシャンプーを過剰に使用したりなどの誤ったケアが見受けられるようです。
頭皮がべたついており、皮脂の過剰分泌によって湿疹ができていると考えられる場合は、洗髪をして頭皮を清潔に保ちましょう。洗髪の際は頭皮や湿疹の箇所を傷つけないよう、指の腹でやさしく洗うことが重要です。
また、界面活性剤が多く使われているシャンプーは洗浄力が高く必要な皮脂も落としてしまい、頭皮環境が悪化する可能性があるので注意が必要です。
ストレス対策
ストレスによって湿疹ができたり悪化したりすることもあるため、ストレス対策も大事です。
脂漏性皮膚炎の発症にはストレスが関与するとされていますし2)、「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2018」では、「アトピー性皮膚炎は、ストレスによって悪化する」と書かれています3)。
ストレスを解消するには、十分な睡眠、ウォーキングやジョギングなどの運動、日光浴、気分転換の時間を設けるなど、自分に合った対策を行いましょう。
食べ物
食べ物によっても頭皮の湿疹が悪化する可能性があるため、食事にも気を配りましょう。
「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2018」3)では、「アトピー性皮膚炎患者ではダニ、ハウスダスト、花粉、真菌、食物など複数以上のアレルゲンに対して感作されていることが多い」とされています。
また、「蕁麻疹診療ガイドライン 2018」4)においても、蕁麻疹の病態に関与する因子に食物が入っているので、蕁麻疹につながる食物を食べるのは避けましょう。
紫外線
頭皮の湿疹や薄毛・抜け毛を防ぐには、外出時の紫外線対策も行いましょう。
アンファー株式会社の発表では、頭皮は紫外線を浴びると炎症や乾燥を起こすとされており、脂漏性皮膚炎にも関与すると書かれています。紫外線は毛根を萎縮させ、髪の毛の成長を妨げる要因ともいわれているため、頭皮の湿疹や薄毛・抜け毛を防ぐには紫外線対策が重要です。
また、紫外線を吸収する化学物質を塗布した後に紫外線を受けると「光アレルギー性接触皮膚炎」による頭皮の炎症を起こす可能性があります。1)
頭皮を紫外線から守るためには、帽子や日傘を使うなどの対策を行いましょう。ただし、帽子は長時間着用していると汗や皮脂汚れが付着し雑菌が繁殖する危険性があるので、清潔に保つようにしましょう。
すでに薄毛や抜け毛が進行している場合には
頭皮の湿疹の症状だけでなく、湿疹とともに薄毛や抜け毛が進行している場合には、薄毛専門のクリニックを受診しましょう。
専門のクリニックでは薄毛専門の医師の診断を受けられるので、湿疹だけでなく薄毛や抜け毛の治療をしてもらえます。血液検査や遺伝子検査などが受けられ、薄毛の原因を調べて自身に合った治療を行ってもらえます。
また、専門クリニックのなかには最新の研究成果や技術を活かした機器で治療を行っているところもあります。 例えば、薄毛·AGA治療を行っているDクリニックでは超音波によって非接触で頭皮に振動圧刺激を与える装置が試験的に導入されています。ピクシーダストテクノロジーズと日本医科大学形成外科教室・Dクリニックが共同で行った研究では、超音波を用いて非接触で頭皮に振動圧刺激を与える技術により発毛を促進することが認められました。
薄毛や抜け毛の対策として、こういった最新の機器が導入されているクリニックの受診も検討するのもよいでしょう。
まとめ:頭皮の湿疹対策をして薄毛・抜け毛予防を
頭皮のかゆみやヒリヒリ感、ぶつぶつ、赤みのある炎症などの症状が見られる場合は、湿疹ができているかもしれません。
頭皮の湿疹が悪化すると頭皮環境や毛周期の乱れを招き、薄毛・抜け毛を起こす可能性があります。そのため、頭皮に湿疹ができたら今回紹介した方法を参考に、早めに対処しましょう。
薄毛や抜け毛の症状が進行していると感じる場合は、薄毛専門のクリニックの受診も検討しましょう。