Pixie Dust Technologies Inc.

AGA

10代でも薄毛になる?AGAのリスクとその対策方法を紹介

/
監修ドクター
高田弘弥
日本医科大学形成外科学教室・抗加齢予防医学講座教授 医学博士・工学博士 【略歴】京都大学大学院工学研究科,名古屋大学大学院医学系研究科修了後,イギリス・ウォーリック大学,フランス国立科学研究所へ留学,日系化粧品会社所長代理・フランス系化粧品会社マネージャを経て,2018年より日本医科大学付属病院形成外科講師,現在同教授 【受賞歴】第11回世界毛髪研究会議(国際毛髪会議)最優秀賞(口頭発表部門),バルセロナ(スペイン),2019年など

10代のうちからおでこが広がってきた、抜け毛の量が増えてきたと感じている方は、薄毛が進行しているのかもしれないと考えているかもしれません。

薄毛・抜け毛が進行する疾患には男性型脱毛症(AGA)がありますが、これは一般的には中年以降の男性がなるものと思われがちですが、10代でもなるのでしょうか?

この記事では、10代がAGAになる可能性について説明するとともに、対策方法や生活習慣の改善方法などについて解説します。

10代でも薄毛になる?

まず、10代でも薄毛になるのかという点ですが、結論から述べると10代でも薄毛が進行する可能性はあります。

20代、30代の薄毛男性に行ったアンケート調査によると、「実際に薄毛が進行しはじめたのはいつ頃でしたか?」という質問に対し、103名中5名(4.9%)が10代から薄毛が進行したと回答しています。

薄毛の原因はいくつか考えられますが、中でも男性型脱毛症(AGA)が大きな割合を占めています。AGAとは、髪の毛が十分成長せず脱毛してしまう病気であり、思春期後の薄毛を意識する男性の少なくとも95%に影響を及ぼしているとされています1,2)

1)Paul J. McAndrews, American Hair Loss Association(アメリカ脱毛症協会) 2)安達健二, 男性型脱毛–その特性と未来像. 順天堂医学. 1992, 37, 572-586.

10代でもAGAになる可能性

では、男性の薄毛に大きな影響を与えるAGAは、10代でも発症するのでしょうか?

日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」3)によると、日本人男性のAGA発症率は平均で約30%であり、年代別の発症率は20代で10%、30代で20%、40代で30%、50代以上で40数%と年齢とともに高くなるとあります。

10代についての表記はないですが、20代で10%とあるので、10代でも数%は発症する可能性があると考えられるかもしれません。前章の4.9%という割合があることからも、数%はAGAが発症すると思われます。

3)眞鍋求, 坪井良治, 板見智 他, 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版. 日皮会. 2017, 127, 2763–2777.

10代がAGAになる理由とは?

では、なぜ10代の若いうちからAGAを発症するのでしょうか?ここでは、AGAが発症するメカニズムからその原因を解説します。

AGAのメカニズム

AGAは、髪が成長した後に脱毛し新しい髪が生えるというヘアサイクル(毛周期)が乱れることで起こります。

髪の毛のヘアサイクルでは約3〜5年で毛包の成長が止まり、髪が抜け落ちます。その後、同じ毛穴から約2〜3ヶ月ほどで新しい髪の毛が生えてきます。AGAではこの成長期が短くなることで髪が細く短くなるとともに、休止期に留まる毛包が多くなることで薄毛になってしまいます。

このヘアサイクルの乱れには男性ホルモンが深く関係しています。皮膚科医の坪井良治先生は、「男性ホルモンは骨・筋肉の発達を促し、髭や胸毛などの毛を濃くする方向に働く。しかし、前頭部と頭頂部などの男性ホルモン感受性毛包においては、逆に軟毛化現象を引き起こす」と説明しています4)

10代になると、ひげの濃さや筋肉質な体を形作る男性ホルモンのテストステロンが分泌されます。このテストステロンが5αリダクターゼと呼ばれる還元酵素と結びつくと、AGAに影響を与えるジヒドロテストステロン(DHT)という男性ホルモンに変化します。

ジヒドロテストステロンは毛母細胞にある男性ホルモンレセプター(ホルモンを受け取る受け皿のようなもの)と結合して、髪の成長を抑制します。ヘアサイクルの成長期が短縮して髪が細く短くなってしまうのです。

このように、テストステロンの分泌が増える10代の頃から、AGAを発症する可能性があるのです。

4)坪井良治, 男性型脱毛症治療の現状と今後の展望, 日薬理誌 (Folia Pharmacol. Jpn.) 2009, 133, 78-81.

AGAは遺伝する

さらに、10代がAGAを発症する理由としては「遺伝」があります。

というのも、AGAは遺伝する可能性が高いからです。AGAの遺伝率は81%であるという研究も存在します5)

遺伝が起こる理由としては、AGAを引き起こす要因となる酵素である5αリダクターゼの活性度と男性ホルモンレセプターの感受性は遺伝による影響が大きいです。

5αリダクターゼの遺伝子情報は優性遺伝で引き継がれるため、両親のどちらか一方の5αリダクターゼの活性度が高ければ遺伝することになります。また、男性ホルモンレセプターに関する遺伝子情報は母親が持つX染色体上に存在するので、母方の祖父が薄毛だと隔世遺伝する可能性が高いです。

このようなことから、親族に薄毛の人がいると遺伝によってAGAを発症する可能性が高いといえます。

5)Nyholt DR, Gillespie NA, Heath AC, Martin NG, Genetic Basis of Male Pattern Baldness, J Invest Dermatol. 2003, 121, 1561–1564.

AGAの傾向があるか自分で確認する方法

aga-10s-1

10代でAGAを発症する確率は低いですが、可能性はゼロではありません。AGAの傾向があるか自分で確かめる方法を解説します。

髪の太さと長さをチェック

AGAかどうか自分で確かめるためには、髪の太さと長さをチェックするのがよいです。以前に比べて細く短い毛が増えていないか確認しましょう。こういった髪の毛が増えているということは、髪の成長期が短縮しているということであり、AGAを発症している可能性があります。

また、柔らかい毛が増えていないか、髪のハリやコシもチェックします。AGAでは髪質も変化することがあります。

抜け毛をチェック

AGAでは成長期が短くなることで脱毛が増えることになります。1日に抜けている毛が増えていないか確認しましょう。

髪の毛は一定の周期で生え変わるため、正常な状態でも1日に50〜100本程度は抜けることになります。これ以上抜けているという場合には、AGAが起こっているかもしれません。 起床時の枕や洗髪時など、1日の抜け毛の量を確認するのがよいです。

M字・O字の薄毛かチェック

薄毛が進んでいる箇所がM字やO字の部分かどうか、鏡などで確認をしましょう。

というのも、AGAはM字・O字から薄毛になります。これは、前頭部やつむじの部分において、脱毛を引き起こす酵素である5αリダクターゼが多く存在するからです。だからこそ、後頭部や側頭部が薄毛の人が少ないのです。

薄毛になった人の症例を集めた「ハミルトン・ノーウッド分類」6,7)によると、AGAの初期段階においても前頭部のM字・頭頂部のO字・M字とO字どちらも同時に進行する3つのパターンが報告されています。

M字やO字部分で薄毛が進行していないか確認しましょう。

6)Hamilton JB. Patterned loss of hair of hair in man. Type and incidence. Ann NY Acad Sci. 53:708-728 7)Norwood OT. Male pattern baldness : classification and incidence. South Med J 68:1359-1365

AGAの確認には医師の診察が大事

aga-10s-2

自分で確認してAGAの傾向があった場合や親族に薄毛の人がいる場合には、医師の診断を受けることが重要です。10代で薄毛が起こっている場合は様々な原因が考えられ、その原因がAGAではない場合もあります。自分で判断するのは難しいですが、医師に診断してもらうことでAGAかどうか正確にわかります。

間違った判断をしないためにも、皮膚科やAGA専門のクリニックで薄毛の原因を診断してもらいましょう。AGA専門のクリニックであれば、頭髪専門の医師による診察や遺伝子検査、血液検査を受けられます。薄毛を改善するためのアドバイスをもらえる可能性もあるので、AGAや薄毛が進行していると感じる場合は相談するのがよいでしょう。

10代のAGAの治療

もしAGAだった場合には治療が必要になります。ここからは、10代でも行えるAGAの治療方法について解説します。

10代にはAGA治療薬は処方されない?

AGAと診断されても、10代の場合は治療薬の多くが使用できません。

一般的にAGAの治療では、発毛促進効果が期待できるミノキシジルや、5αリダクターゼの働きを阻害するフィナステリドなどの成分が含まれた薬が使われますが、これらは20歳以下の人には処方できません。その理由は、国内におけるAGA治療薬の臨床試験は20代以上の男性を対象に実施されており、10代が使用した場合の安全性が確立されていないからです。

10代では薬を使った治療はできませんが、AGA専門のクリニックではこういった治療薬以外の方法で治療してもらえる可能性があります。

薬以外の治療法

AGAによる薄毛は、薬以外の方法で改善できる可能性があります。薬以外の方法としては、頭皮へのLED照射や頭皮マッサージなどがあります。

LEDには育毛や発毛促進などの効果があるとされており、ガイドライン3)でもAGAに対して適切な機材を使用して行う場合に推奨されています。

また、頭皮マッサージをすることで薄毛を改善できる可能性があります。薄毛・AGA治療を行っているDクリニックの研究8)では、市販の頭皮ケア用のマッサージ機を利用して6ヵ月間頭皮マッサージを行ったところ、24週の時点で毛径に有意な増加を確認できました。つまり、頭皮マッサージをすることで、細くなった髪の毛を太くできる可能性があるのです。

頭皮マッサージの方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

8)Koyama T, Kobayashi K, Hama T, Murakami K, Ogawa R, Standardized Scalp Massage Results in Increased Hair Thickness by Inducing Stretching Forces to Dermal Papilla Cells in the Subcutaneous Tissue, Eplasty. 2016 , 16:, e8. eCollection 2016.

市販の育毛剤を利用

AGAによる10代の薄毛を改善するには、市販の育毛剤を利用する方法もあります。

ドラッグストアなどで市販されている医薬部外品の育毛剤には、10代では使用できないミノキシジルが含まれていないため利用することができます。育毛剤を使うことで、抜け毛の予防や毛髪の成長促進などの効果が得られるかもしれません。

医療用医薬品や第一類医薬品の発毛剤には、ミノキシジルなどの成分が含まれており20歳未満の人は使えないので注意しましょう。

10代の薄毛の原因はAGAだけではない

aga-10s-3

10代においては、AGAだけでなく様々な原因によって薄毛や抜け毛が起こりえます。ここでは、AGA以外で薄毛を引き起こす原因を6つ紹介します。

ストレス

ストレスをため込むと、薄毛を引き起こす可能性があります。

株式会社マンダムの調査では、ストレス指標の高い人ほど後頭部の毛経が細く、毛穴あたりの毛髪本数が少ないことがわかっています。また、ストレスが毛髪に与える影響を研究したところ、ストレスを感じた際に分泌されるコルチゾールというホルモンが多い人ほど、後頭部の毛経が細いことが明らかになりました。

10代で薄毛が進行していると感じる場合は、運動や音楽鑑賞、趣味の時間を増やすなどしてストレスを解消するのがよいかもしれません。

睡眠不足

睡眠不足によっても、薄毛になることがあります。

睡眠時間が短いと交感神経が優位になり、血行が悪くなります。血行が悪くなると頭皮の細胞に栄養が行き渡りにくくなり毛髪の成長をさまたげてしまう可能性があります。

また、睡眠中には髪の毛の成長に必要な成長ホルモンが分泌されます。睡眠が不足すると成長ホルモンの分泌量が低下し、髪の毛が十分に成長できなくなってしまいます。

睡眠時間について株式会社C2が行った調査では、10代男性の平均睡眠時間が5時間53分であり、最も短いという結果が出ています。薄毛対策を行うためにも、しっかりと睡眠をとるようにしましょう。

頭皮環境

頭皮環境が悪化すると、10代でも薄毛を引き起こす可能性があります。

大正製薬株式会社と明治薬科大学薬学部教授の共同研究では、皮脂成分であるトリグリセリドや細菌のアクネ菌、真菌のマラセチア属菌が、AGAの原因や進行に影響している可能性があることが発表されています。

また、大正製薬の発表では、「炎症や酸化ストレスによる頭皮環境の悪化が、毛髪の成長や発毛剤の効果に影響を及ぼす可能性が示唆されました」という記述もあります。

10代のうちは洗髪をしないまま眠ってしまったり、整髪料を使いすぎたりすることも多いと思います。しかし、そういった生活を送っていると頭皮環境が悪化し、AGAや薄毛が進行する可能性があるので注意しましょう。

頭皮環境を改善する方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

生活習慣

食事などの生活習慣の乱れによっても薄毛になることがあります。食事の栄養バランスが偏っていると、髪の毛を成長させるために栄養が不足してしまいます。

10代のうちはダイエットに取り組んだり、食事をコンビニやジャンクフードなどですませたりする人も多いかもしれません。しかし、無理なダイエットをすると栄養不足を招きますし、ジャンクフードなどばかりでは脂質や糖質を多く摂ってしまい、髪の毛にとって重要なビタミンや亜鉛、タンパク質が不足してしまいます。

脂質の多い食事を摂りすぎると脱毛が促進される可能性があるため、バランスのよい食事を心がけましょう。

頭部白癬

10代で薄毛が起こっている場合は、頭部白癬(しらくも)という病気が原因かもしれません。頭部白癬(しらくも)は、頭皮や髪の毛に真菌(カビ)が感染することで起こる感染症の一種です。

頭部白癬が起こると、かゆみを伴ううろこ状の斑(はん)や斑状の脱毛、かゆみなどの症状が現れます。薄毛や抜け毛だけでなく、うろこ状の斑やかゆみなどの症状が見られる場合は、頭部白癬も疑いましょう。

頭部白癬では、病院の皮膚科で抗真菌薬の内服薬やクリームなどを処方してもらう必要があります。

脱毛症

10代で薄毛や抜け毛が進行している場合は、なんらかの脱毛症が起こっている可能性があります。10代でも起こりうる脱毛症としては、以下などがあります。

脱毛症

主な症状

脂漏性脱毛症

脂漏性皮膚炎から起こる脱毛症。脱毛だけでなく皮膚の炎症やフケなどの症状が現れる。

円形脱毛症

円形や楕円形の脱毛が生じる。頭部の一部だけでなく全体に広がる場合もある。

粃糠(ひこう)性脱毛症

脱毛や頭皮の炎症、かゆみとともに、乾燥したフケが発生する。頭皮にかさぶたが付着していることもある。

抜け毛とあわせて上記のような症状が出ている場合には、脱毛症が起こっている可能性があります。皮膚科などの病院を受診しましょう。

AGA以外の脱毛症については、以下の記事で詳しく解説しています。

まとめ:10代でAGAが疑われる場合は早めに受診しよう

AGAは高い確率で遺伝するので、10代でもAGAを発症する可能性があります。

AGAを発症すると髪が細く短くなったり、前頭部や頭頂部の抜け毛が増えたりなどの症状が見られるようになります。そのため、AGAかどうかを確かめるには髪の太さや長さ、抜け毛の本数、M字・O字の薄毛になっていないかなどをチェックしましょう。

ただ、10代で起こる薄毛には様々な原因が考えられます。自分で判断するのは難しいので、薄毛が気になり始めたら早めに皮膚科やAGA専門のクリニックで診察してもらうのがよいかもしれません。医師に診断してもらうことで、自分がAGAかどうか正確にわかりますし、薄毛の症状に合った治療も受けられるはずです。

関連記事