【ドクター監修】スカルプケアの効果とは?効果と方法を医学的根拠に基づき解説
親族に薄毛の人がいる人や、最近髪のボリュームが落ちてきているという人は、スカルプケアを行ったほうがよいかもしれません。
頭皮は毛髪に大きな影響を与えるので、頭皮の状態が悪いと髪が細く短くなり、薄毛を招いてしまう可能性があります。スカルプケアを行うことで、こういった症状の予防・改善が期待できます。
この記事では、スカルプケアによって期待できる効果や具体的なスカルプケアの方法、スカルプケアの効果を最大化するためのポイントを紹介します。頭皮トラブルや薄毛に悩んでいる人はぜひ参考にしてください。
スカルプケアとは?
「スカルプ」という言葉は、日本語では「頭皮」という意味です。つまり、「スカルプケア」とは頭皮環境を整えるためのケアのことを指します。
頭皮環境が乱れていると、フケや赤みのある炎症、かゆみなどの頭皮トラブルを引き起こす可能性があります。また、髪の毛は頭皮にある毛根で作られるので、ケアを怠ると毛髪の成長に悪影響を及ぼし、薄毛を促進する恐れもあります。
だからこそ、頭皮トラブルや将来の薄毛を防ぐためにもスカルプケアが重要です。スカルプケアを行うことで、頭皮や毛髪に対して様々な効果が期待できます。
スカルプケアによって期待できる効果
スカルプケアをすることで、具体的にどのような効果が得られるのでしょうか。その効果について詳しく解説します。
血行促進
スカルプケアを行うことで、頭皮の血行促進効果が期待できます。マッサージなどによって頭皮に刺激を与えることで血流が促されるのです。
花王株式会社ヘアケア研究所が発表した「地肌マッサージの頭皮への作用」1)では、独自に創案した方法で約3分間の頭皮マッサージを行ったところ「即時的な血行促進作用が認められ、平均で約120%まで上昇し、20分程度持続」することが確認されており、マッサージによる血行促進作用が確認されています。
頭皮の血行が促進されることで、髪の毛や頭皮の健康維持に必要な栄養が行き渡りやすくなります。
1)曽我 元,森田 康治,新井 賢二,地肌マッサージの頭皮への作用. 日本化粧品技術者会誌/48 巻 (2014) 2 号頭皮トラブルの予防・改善
スカルプケアによって頭皮の乾燥を防げ過剰な皮脂も洗浄できるので、頭皮トラブルの改善・予防の効果も期待できます。
花王株式会社の調査では、かゆみ・フケなどのトラブルが起こっている人の頭皮は、バリア機能や保湿機能が低下し乾燥している傾向にあるといわれています。さらに東京女子医科大学皮膚科名誉教授で現在Dクリニックグループ代表の川島眞先生によると、頭皮は身体の他の部位よりも乾燥しやすいとされています。
また、頭皮に過剰な皮脂が残っていると、赤みのある湿疹や抜け毛の原因となる脂漏性皮膚炎などの病気を引き起こす可能性があります。
このように、頭皮の乾燥や過剰な皮脂は頭皮トラブルの原因となりますが、それらをケアすることで頭皮のトラブルの予防・改善が見込めるのです。
薄毛・抜け毛の予防
スカルプケアによって、抜け毛や薄毛の予防効果が期待できます。
男性における薄毛の95%以上を占めるのは男性型脱毛症(AGA)とされています2)3)が、スカルプケアをすることでAGAの進行を予防できる可能性があります。
大塚製薬と明治薬科大学薬学部教授が共同で行った研究によると、AGA患者の頭皮には皮脂成分であるトリグリセリド、アクネ菌、マラセチア属菌が多いことが明らかになりました。さらに、それらの菌がAGAの進行に影響しているという可能性も示唆されています。
そのため、スカルプケアによってこういった皮脂成分や細菌を洗い流すことで、AGAによる薄毛の進行を食い止められる可能性があるのです。
また、株式会社資生堂の発表では、頭皮トラブルにより毛髪形成が阻害されることが説明されています4)。このことからも、スカルプケアによって頭皮トラブルを防ぐことができ、薄毛対策にもなると考えられます。
2)Paul J. McAndrews, American Hair Loss Association(アメリカ脱毛症協会) 3)安達 健二, 男性型脱毛–その特性と未来像. 順天堂医学. 1992, 37, 572-586 4)江浜律子,島田有紀,仲西城太郎,萩原基文,岩渕徳郎, 頭皮トラブルが毛髪物性に及ぼす影響と植物由来エキスによるその予防. 株式会社資生堂 グローバルイノベーションセンター. 2018.スカルプケアの方法
スカルプケアによって、血行促進や頭皮トラブルの改善、薄毛・抜け毛の予防効果が期待できることがわかりましたが、具体的にどのようにケアすればよいのでしょうか。ここでは、スカルプケアの方法を紹介します。
マッサージ
マッサージによってスカルプケアを行うことができます。頭皮をマッサージをすることで、血行促進だけでなく育毛・発毛促進効果が期待できるのです。
Dクリニックが行った研究では、市販のマシンで毎日4分のスカルプマッサージを24週間行ったところ、毛髪の太さが増大することが確認されました。
さらに、ヘアメディカルグループ・日本医科大学形成外科・アンファー株式会社の共同研究では、振動圧刺激そのものに発毛を促す効果が期待できるとされています。
マッサージによるスカルプケアの方法は、下記の記事で詳しく解説しています。
保湿
頭皮の保湿によるスカルプケアによって、乾燥によるかゆみやフケ、炎症の予防・改善が期待できます。
頭皮を保湿するには、頭皮用の化粧水や美容液を塗布する、洗髪時にブチレングリコールや濃グリセリンなどの保湿成分が入ったシャンプーを使うなどがよいでしょう。株式会社マンダムらの研究では、頭皮用の化粧水を塗布したところ頭皮が潤いフケの改善や皮脂量の低下が確認されています。
頭皮が乾燥すると、不足した水分を補うために皮脂が過剰分泌されることがあります。頭皮の皮脂量が多いと脂性フケや炎症、抜け毛の原因となりうるので、皮脂を抑えるという側面からも保湿は重要です。
頭皮の乾燥のケア方法は、以下の記事でも詳しく解説しています。
頭皮の洗浄
頭皮の洗浄もスカルプケアには有効です。過剰な皮脂や細菌などを洗い流すことで頭皮を正常な状態に保ち、頭皮トラブルを防ぐことができます。
特に、男性は女性の2倍以上の皮脂を分泌しているといわれているため、洗髪は効果的です。
1日1回などの洗髪によって、頭皮に溜まった皮脂や汚れを落とし清潔に保つことができます。洗浄する際はシャンプーを泡立て、指の腹で優しく洗いましょう。皮脂やシャンプーなどが頭皮に残ると、毛穴に詰まり頭皮トラブルを引き起こす可能性があるので、しっかりとすすぐことも大切です。
また、洗髪の際には頭皮をケアするために開発されたスカルプシャンプーを使うのもよいです。一般的にスカルプシャンプーには、頭皮に優しいアミノ酸系の成分が使われているので、頭皮への刺激を抑えながら洗浄できるでしょう。
外用薬
薄毛や抜け毛が気になるなら、外用薬によるスカルプケアも有効です。発毛効果のある成分を含んだ外用薬を使うことで、薄毛や抜け毛の改善が期待できます。
発毛効果が期待できる成分としては、ミノキシジルとアデノシンがあります。これらの成分は日本皮膚科学会のガイドライン4)でも推奨されています。また、大正製薬株式会社の論文5)によると、ミノキシジルには血流改善効果が期待できるとされています。
ミノキシジルが配合されている外用薬はドラッグストアや皮膚科、薄毛専門のクリニックなどで処方してもらえます。
4)眞鍋求, 坪井良治, 板見智 他, 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版. 日皮会. 2017, 127, 2763–2777. 5)小友進, ミノキシジルの発毛作用について. 日薬理誌. 2002.低出力レーザー・LED
低出力レーザー・LEDもスカルプケアになります。
日本皮膚科学会のガイドライン4)では、LEDや低出力レーザーには発毛効果に関する十分な根拠があるとされており、AGA治療での利用を推奨しています。
また、株式会社アデランスとミニョンベルクリニックの発表でも、超狭帯域の赤色LEDを照射することで毛乳頭細胞の活性化や発毛などの効果が期待できるとされています。
LEDは市販の機器で照射することもできますが、より安全で効果的なケアを行いたい場合には専用の機器を導入しているクリニックなどの医療機関を受診するのがよいでしょう。
専門クリニック
より本格的なスカルプケアをしたい場合は、薄毛専門のクリニックを受診するのもよいでしょう。
薄毛専門のクリニックでは、医師によるカウンセリングやマイクロスコープによる頭皮診断などが受けられるため、頭皮の状態をより専門的な見地から調べてもらえます。さらに、血液検査や遺伝子検査によってAGAの発症リスクなども調べてもらえます。
頭皮の状態や薄毛の進行度合いに合ったケアを受けられるため、効果的なスカルプケアができるでしょう。また、専門クリニックでは超音波によって非接触で頭皮に振動圧刺激を与える装置やLED装置を用いたケアなど、最新の装置による治療を行ってもらえるので、より高い薄毛改善効果が期待できます。
スカルプケアの効果を最大化するための生活習慣5つ
スカルプケアには様々な方法がありますが、毎日の生活習慣を見直すことで、その効果をさらに引き出せる可能性があります。ここでは、スカルプケアの効果を最大化するための生活習慣を5つ紹介します。
1.食事
食事はスカルプケアにおいて重要です。栄養バランスの整った食事をすることで、頭皮や毛髪に必要な栄養素を取り入れることができ、毛髪を正常に成長させることができます。
髪の毛や皮膚は主にタンパク質で構成されているため、タンパク質を摂るとともに亜鉛やビタミンB群、ミネラルなどの栄養も摂取しましょう。
また、東京医科歯科大学などによる研究では、高脂肪食の過剰摂取によりマウスの脱毛症を促進することがわかっています。食事においては高脂肪なものを摂りすぎないよう注意しましょう。
2.睡眠
頭皮や髪の毛の健康にとっては睡眠も重要です。
頭皮の新陳代謝や毛髪の成長には、睡眠時に分泌される成長ホルモンが欠かせません。成長ホルモンは、主に深い睡眠中に分泌されるといわれているため、質の良い睡眠を適切にとることが大切です。
睡眠時間が不足したり睡眠の質が低下したりすると、せっかくスカルプケアを行ったとしても成長ホルモンが十分に分泌されず、頭皮環境の悪化を招く恐れがあります。
3.ストレス改善
薄毛対策としてスカルプケアをする場合は、ストレス対策も行いましょう。ストレスも頭皮環境と関連性があります。
株式会社毛髪クリニックリーブ21の研究チームが行った研究では、AGAがストレスや生活習慣にも起因している可能性があることがわかっています。
またハーバード幹細胞研究所などによる研究では、ストレスを感じる時に分泌されるホルモンの働きにより、発毛が抑制されてしまうことが明らかになっています。スカルプケアと同時にストレス対策を行うことで、薄毛改善効果をより高められるでしょう。
4.運動
スカルプケアに取り組む際は、運動も取り入れるとよいでしょう。適度な運動をすることで、全身の血流が増加するため頭皮の血行促進が期待できます。
また、肥満は薄毛の原因になりうるといわれていますが、定期的に運動を行うことで肥満を防ぐことができます。
ウォーキングやジョギングをしたり、外出時に階段を積極的に利用したりなど、日々の生活に運動を取り入れましょう。
5.禁煙
頭皮や髪の毛をケアするには、禁煙をするのもよいです。禁煙により薄毛や血行不良の改善が期待でき、スカルプケアの効果をより高められる可能性があります。
「男性型脱毛症と喫煙との関連及びアジア人男性におけるその有病率」という調査では、喫煙によって髪の毛を作り出す器官である毛包を損傷させる可能性が示唆されています。
また、タバコに含まれるニコチンには、毛細血管を収縮させる作用があります。血管が収縮すると血行が悪くなり、頭皮や髪の毛に栄養が行き渡りにくくなる可能性があります。喫煙の習慣がある人は、禁煙したり少しずつ本数を減らしたりするとよいでしょう。
スカルプケアをしたほうがよい人とは?
スカルプケアの方法やその効果を最大化するための生活習慣などを紹介しましたが、「自分はスカルプケアをすべきなのか」と思っている人も多いと思います。以下で紹介する特徴に当てはまる人は、頭皮環境が乱れていたり将来薄毛を起こしたりする可能性があるので、早めにスカルプケアを行っておくとよいでしょう。
親族に薄毛の人がいる場合
親族に薄毛の人がいる場合は、スカルプケアによる薄毛予防に取り組んでおくのがよいでしょう。
日本皮膚科学会のガイドライン4)では、男性型脱毛症(AGA)の発症には遺伝が関与するとされており、AGAは約80%の割合で遺伝するといわれています。
今は薄毛の症状が出ていなくても親族にAGAの人がいる場合は、将来的に薄毛となるかもしれません。早めにスカルプケアを行い薄毛の予防をしておくことで、AGAとなった場合の症状を抑えられる可能性があります。
フケやかゆみが出やすい
フケやかゆみが出やすい人は、スカルプケアを行いましょう。
フケやかゆみなどの症状が頻発に現れる場合は、皮脂の過剰分泌や乾燥などが起こっている可能性があります。スカルプケアで保湿や皮脂量のコントロールをすることで、これらの症状の改善ができるかもしれません。
また、フケやかゆみを放置しておくと、薄毛が起こる可能性があります。JHMA日本ヘッドセラピーマスター協会の調査では、薄毛の人の頭皮状態を調べたところ、85%が「脂が多い」「乾燥している」など状態が悪化していたという結果が出ています。
頭皮環境の悪化は、抜け毛の原因となりうる脂漏性皮膚炎を招く恐れもあるので、フケ・かゆみなどの症状が出ている場合はスカルプケアに取り組みましょう。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎の人もスカルプケアを行ったほうがよい場合があります。
アトピー性皮膚炎とは、頭皮や身体の皮膚にかゆみを伴う湿疹が発生し、悪化と改善を繰り返す病気のことです。日本皮膚科学会の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018」6)では、皮膚の乾燥やバリア機能の低下などの症状が出ることもあるとされています。
だからこそ、アトピー性皮膚炎が疑われる場合は、スカルプケアによって保湿を行うなどして症状の悪化を防ぐことが重要です。かゆみが強いなど症状の悪化が見られる場合は、皮膚科の病院といった医療機関を受診し適切なケアを行いましょう。
6)加藤則人,大矢幸弘,池田政憲 他,アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018. 日皮会.2018.128.2431-2502.早いうちからスカルプケアをして薄毛を予防しよう
スカルプケアを行うことで、頭皮トラブルの予防や改善、血行促進、薄毛予防などの効果が期待できます。すでに頭皮トラブルや薄毛に悩まされていたり、親族に薄毛の人がいたりという人は、早めにスカルプケアに取り組みましょう。
スカルプケアは自分で行うのもよいですが、専門のクリニックに通うのもおすすめです。医師による診断が受けられますし、自分にあったケアを行ってもらえます。超音波による非接触振動圧の刺激を利用した装置など最新の機器なども開発されており、より効果的にスカルプケアを行うことができます。