【ドクター監修】AGA治療はいつまで続けないとダメ?治療期間についても解説
AGAの治療には費用がかかるので、現在AGA治療を検討している人、もしくはすでに治療中の方は、いつまで治療を続ければよいのか気になっているのではないでしょうか。さらに、AGAが完治する可能性についても知りたいのではないかと思います。
また、AGAの治療は開始してからすぐに効果が出るものではないので、事前にどのくらいで効果が出るのかの目安を知っておくと安心です。
この記事では、AGA治療をいつまで続ければよいのか説明するとともに、効果が出るまでの治療期間についても解説します。
AGA治療はいつまで続く?
AGA専門のクリニックでは、治療に薬やLED照射器などが使われます。薬を利用しなくてはなりませんし定期的に通院する必要があるので、費用がかかることになります。では、このように費用が必要な治療はいつまで続くのでしょうか。
AGAは完治しない
まず知っておいていただきたいのが、AGAは完治することはなく治療をずっと続けないといけないということです。
AGAは一度発症すると完治しない進行性の病気です。治療によって脱毛の進行を抑え、発毛を促すことで薄毛の症状を緩和する必要があります。治療をやめてしまえば再び髪の毛は減り始め、薄毛が目立つようになってしまいます。
他にも、AGAが完治しないのはAGA治療が対症療法であるからです。病気の治療には、以下のように対症療法と根本療法の2つがあります。
対症療法:根本的な解決ではなく、症状を抑える治療法
根本療法:病気の原因を根本的に取り除くことを目標とする治療法
AGAは体内の酵素や男性ホルモンの影響で起こります。ですので、AGAの治療は薄毛や脱毛の発生の原因を根治できるものではなく、常に脱毛を引き起こす要因を抑えるための対症療法が必要なのです。
減薬は可能
AGAの治療はずっと続きますが、治療薬の服用量の調整、減薬は可能です。AGA治療には内服薬や外用薬などの薬が用いられることが多いですが、治療の進展によってその量や種類を減らすことができます。
市販薬を利用することもでき、継続的にかかる治療費を抑えることができます。減薬のタイミングについて知るには、AGAのメカニズムを理解する必要があります。
AGAのメカニズム
AGAとは髪の毛が十分成長せずに脱毛してしまう病気であり、思春期後の薄毛を意識する男性の少なくとも95%に影響を及ぼしているとされています1)。AGAの主な原因は、髪が生み出され成長し抜け落ちるまでのヘアサイクルが乱れることであり、それには男性ホルモンのテストステロンが大きく関与します。AGAを発症するメカニズムは以下です。
テストステロンと酵素である5αリダクターゼが結合
男性ホルモンのジヒドロテストステロン(DHT)が発生
男性ホルモンレセプターがDHTをキャッチ
脱毛因子のTGF-βが増加
TGF-βが毛乳頭細胞に退行期のシグナルを出す
このように、AGAによる脱毛にはテストステロンと結びつく5αリダクターゼという酵素の活性度と、ジヒドロテストステロンをキャッチする男性ホルモンレセプターの感受性が影響を与えています。
1)Paul J. McAndrews, American Hair Loss Association(アメリカ脱毛症協会)AGAの治療方法
AGAのメカニズムがわかれば、どのように治療すべきなのかがわかります。
AGAによる脱毛を抑えるためには、5αリダクターゼの活性度や男性ホルモンレセプターの感受性の対策をすべきですが、これらは遺伝によって受け継がれます。5αリダクターゼを除去する、男性ホルモンレセプターの感受性をゼロにするなどはできません。
できるのは5αリダクターゼの働きを阻害して、脱毛の進行を抑えるということです。また、脱毛を抑えるとともに発毛を促すことで、AGAによる薄毛を改善することができます。
ここからは、日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」2)で推奨されているAGAの治療方法について説明します。
2)眞鍋求, 坪井良治, 板見智 他, 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版. 日皮会. 2017, 127, 2763–2777.内服薬
ガイドライン2)では、内服薬による脱毛の抑制が推奨されています。内服薬を利用することでAGAの進行を抑えるとともに、発毛を促します。
推奨されている内服薬の成分は、フィナステリドとデュタステリドです。どちらも5αリダクターゼを阻害する働きがあります。ガイドライン2)でも、男性型脱毛症に対するフィナステリド、デュタステリドの内服の発毛効果に関して高い水準の根拠があるので、内服療法を行うよう強く勧めると推奨されています。
ちなみに、ミノキシジルには内服薬が存在しますが、こちらはガイドライン2)の推奨度はD(行うべきではない)であり、AGA治療薬としてミノキシジルの内服を許可している国はないので使用は避けましょう。
外用薬
ガイドライン2)では、外用薬による発毛促進も推奨されています。有効とされている成分はミノキシジルとアデノシンです。
これらの成分には発毛を促進する作用が認められており、ガイドラインでも以下のように推奨されています。
「ミノキシジル外用の発毛効果に関して、高い水準の根拠があるので、男性型脱毛症に 5%ミノキシジル、また女性型脱毛症に1%ミノキシジルを外用するよう強く勧める」
「アデノシンの発毛効果に関しては、男性に対する有効性を示す十分な根拠があるため、外用療法を行うよう勧める」
これらの成分を含む外用薬を頭皮に直接塗布することで、毛母細胞を刺激し細胞分裂が活発になることで発毛や髪の成長が促されます。
これらの成分を含む外用薬は市販されていますが、ミノキシジルには1〜5%という濃度制限があります。5%以上のミノキシジルを含む医療用医薬品などもありますが、医師による診断や処方が必要となります。
LED・低出力レーザー照射
ガイドライン2)で推奨されている治療法としては、LEDや低出力レーザーの照射というものがあります。頭皮に照射することで毛乳頭細胞の活性化や成長因子の増加につながり、発毛を促すことができます。LED・低出力レーザー照射はほかの治療と併用してもその働きを阻害せず、副作用のリスクも低いです。
ガイドライン2)では、「LED および低出力レーザーの発毛効果に関しては、有用性を示す十分な根拠があり、副作用も比較的軽微であることから、適切な機材を使用して行うよう勧めることにする」とされています。
LEDや低出力レーザーはどちらもクリニックで治療を受けることができますし、家庭用の製品なども販売されています。
減薬できるタイミングとは
薬によるAGA治療を行う場合は治療の進み具合によって薬の量や種類を減らすことができます。では、一体いつから減薬できるのでしょうか。
一定の発毛が見られたら
一般的に、減薬をするタイミングは一定の発毛が見られるようになり、イメージする毛量が得られるようになってからです。自身が毛を生やしたいと思っていた箇所に十分な毛量が得られたら、その後は脱毛への対処を行うことになります。
このタイミングでは、発毛を促進するための治療薬を減らすことができます。例えば、ミノキシジル外用薬とフィナステリド内服薬を併用して抜け毛抑制+発毛の治療をしていた場合、一定の発毛が見られた後にフィナステリドのみの治療に変更して抜け毛の抑制だけを行うなどです。
薄毛・AGA治療を行うDクリニックによると、AGA治療は開始から約1年で発毛量が最大になり、そこから維持療法を行うケースが多いとされています。
減薬・治療の中止を選択するときは医師に相談
減薬や治療の中止を選択するなどは、医師に相談するようにしましょう。医師に相談することにより適切なタイミングで減薬できますし、どのタイミングでどこまで薬を減らすべきかというアドバイスがもらえます。
自己判断で減薬などをしてしまうと、再び抜け毛が増加し薄毛が進行するリスクがあります。場合によっては治療前の状態に戻ってしまい、これまで行ってきた治療が無駄になってしまう恐れもあります。
治療で増えた髪の毛を維持したまま減薬するためにも、必ず医師のアドバイスのもと減薬を行いましょう。
AGA治療法の効果を実感できるまでの期間
AGAは完治することがないので治療を続ける必要がありますが、効果を実感できるまでにはどれくらいの期間がかかるのでしょうか。ここではAGAの治療法ごとに、効果を実感できるまでの期間の目安を紹介します。
フィナステリド(内服薬)
フィナステリドには5αリダクターゼII型の働きを阻害し、短縮されたヘアサイクルを正常に戻す働きがあります。この成分が含まれている内服薬としては「フィナステリド錠」や「プロペシア錠」などがあります。
フィナステリド錠の添付文書には、効果を実感できるまでの期間について「3ヵ月の連日投与により効果が発現する場合もあるが、効果が確認できるまで通常6ヵ月の連日投与が必要である」と記載されています。早くて3ヵ月、通常は6ヵ月ほどはかかると考えておくとよいでしょう。
デュタステリド(内服薬)
デュタステリドは、5αリダクターゼI型とII型の両方に働きかけジヒドロテストステロンの生成を抑える働きを持つ成分です。この成分は「デュタステリドカプセル」や「ザガーロ」などの内服薬に含まれています。
効果が見られるまでの期間について、デュタステリドカプセル0.5mgZA「サワイ」の添付文書には「投与開始後12週間で改善が認められる場合もあるが、治療効果を評価するためには、通常6ヵ月間の治療が必要である」と記載されています。
また、こちらの添付文書には「投与開始初期に改善が認められる場合もあるが、治療効果を評価するためには、通常6ヵ月間の治療が必要である」と書かれています。こちらもフィナステリドと同じくらいの期間が必要となるでしょう。
ミノキシジル(外用薬)
ミノキシジルは、血管拡張作用や発毛・育毛促進などの効果があるとされている成分です。ミノキシジルを配合した外用薬としては市販品である「リアップ」など様々なものがあります。
大正製薬が「リアップ」シリーズの外用薬を使って実施した臨床試験では、ミノキシジル1%では6ヵ月以上、 5%では4ヵ月以上の使用で効果がみられたとのことです。
ミノキシジルの濃度が高いほうが、より早く効果を実感できる可能性があります。
アデノシン(外用ローション)
アデノシンは、発毛促進因子であるFGF-7の産生を高めることにより発毛を促すと考えられている成分です。育毛・発毛促進成分としてのアデノシンは資生堂が研究・開発しており、外用薬への利用に関しては資生堂が特許を取得しています。そのため、アデノシンを配合した外用薬は資生堂から販売されています。
ガイドライン2)には、AGAに対する効果について「101名の男性被験者を対象とした観察期間6ヵ月のランダム化比較試験において、毛髪径・軟毛率・太毛率の中等度改善以上の改善率は、アデノシン配合ローション群は51名中41名(80.4%)、対照群は 50 名中 16 名(32.0%)であった」と記載されています。
上記のことから、アデノシンの外用ローションを6ヵ月間は使用することで、毛髪を太くするなどの効果を実感できる可能性があります。
LEDおよび低出力レーザー(赤色LED)
AGA治療では赤色LEDが用いられます。この赤色LEDを一定期間、定期的に頭皮に照射することで、発毛効果が得られるとされています。
株式会社アデランスとミニョンベルクリニックの発表では「赤色LEDを男性モニター患者10人の頭皮に20分間、週1〜3回、3〜8ヶ月行ったところ、育毛の効果では有効率が100%」という結果が出ています。また、ほとんどの人の抜け毛が減少し、長い間照射し続けることでかなりの確率で毛が生えてきたという結果も得られたようです。
早くても3ヵ月、長くても8ヶ月くらいは続けるのがよいでしょう。
AGA治療の負担を軽減する方法とは?
AGAの治療は数年から数十年など長期的に続きます。治療は保険適用外のため費用は全額自己負担となりますし、クリニックへの通院が必要なケースもあるため治療が長引くほど経済的・身体的な負担がかかるでしょう。
そこでここでは、そういったAGA治療の負担を軽減する方法を紹介します。
オンライン診療
クリニックに通う負担を軽減したい場合は、AGAのオンライン診療を利用しましょう。オンライン診療とは、スマートフォンやパソコンなどを通して自宅にいながらAGAの診察・治療を行ってもらえるサービスです。
オンライン診療を活用すれば移動する手間がかからないので、近くにクリニックがない場合や忙しくて通院する時間が取れない場合でも手軽に診察・治療を受けられます。
また、AGAの治療薬は自宅や最寄りの薬局などに郵送してもらえるので、薬を受け取るために来院する必要もありません。AGAのオンライン診療については以下の記事で詳しく解説しています。
自宅でのケア
自宅で頭皮ケアやヘアケアをすることで、AGAによる薄毛を改善できる可能性があります。自宅でできるAGA対策としては、LEDの照射や頭皮マッサージなどがあります。
LEDによるAGA治療はクリニックで受けられますが、家庭用の赤色LED照射器などを購入すれば、自宅にいながらいつでも好きな時間にケアできます。
また、自宅で頭皮マッサージをすることで髪の毛を太くする効果が期待でき、薄毛を改善できる可能性があります。Dクリニックの研究では、市販の頭皮マッサージ器を使って24週間マッサージしたところ毛髪の太さが増大することが確認されました。
頭皮マッサージの方法や効果については、以下の記事で詳しく解説しています。
生活の見直し
AGA治療の負担を軽減するには、食事や睡眠、ストレス、喫煙などの生活習慣を見直しましょう。抜け毛や薄毛が進行する原因は、男性ホルモンや遺伝以外にもあります。生活習慣を見直すことで症状を改善できる可能性があります。
例えば、食事の栄養バランスが偏っていると髪の毛の成長に必要な栄養が不足してしまいますし、睡眠時間が不足していると毛髪の成長に欠かせない成長ホルモンの分泌量が低下する恐れがあります。
その他にも、ストレスを溜めたり喫煙したりすることでAGAの進行や頭皮環境の悪化などを引き起こす可能性があります。髪の毛や頭皮環境が悪化しないように注意しましょう。
薬の効果を高める
AGA治療の負担を軽減するには、治療薬の効果を高めることも有効です。AGA治療の技術は日々進化しており、薬の効果を高める装置などが開発されています。
例えば、薄毛・AGA治療を行っているDクリニックでは「非接触振動圧刺激装置」が試験的に導入されています。この装置は、超音波によって非接触で頭皮に振動圧刺激を与える装置です。発毛治療に使用する塗り薬と併用することで、通常よりも速いスピードでの発毛が期待できます。
より早く発毛効果を実感して減薬したい人などは、こういった装置の利用も検討してみましょう。
まとめ:AGAの治療は負担を小さくしながら継続するのがカギ
AGAは進行性の病気であり、一度発症すると治療をしても完治することはないので治療を続けなくてはなりません。
ただし、いつまでも発毛や予防両方の治療を続けなくてはいけないというわけではありません。一定の発毛が見られた後には減薬するなど治療を抑えることができます。まずは効果が見えるまでしっかりと治療を行いましょう。
その際にはより効果を高めるように工夫をするのがおすすめです。AGA治療の効果を高める方法については、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてください。