【ドクター監修】30代男性は薄毛になりやすい?その原因と対策方法を紹介
30代の男性で、薄毛が気になっている方も多いのではないでしょうか。30代は20代よりも薄毛になりやすく、薄毛は個人差はありますが加速的に悪化していく傾向が生じるため、早めの対策が重要です。
薄毛を改善するには、原因や症状に合った最適な処置を行う必要があります。また、人によって適切な改善方法が異なるので、自分がどのような症状なのか、何が原因なのかを把握することが重要です。
今回の記事では、30代男性が薄毛になる原因や、薄毛の前兆と考えられる症状などについて解説します。30代男性の薄毛対策方法も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
30代男性の薄毛についての基礎知識
男性は20代後半から薄毛が気になり始め、30代で薄毛がさらに進む傾向にあります。
日本皮膚科学会のガイドラインによると、薄毛の日本人男性は20代後半から30代にかけて薄毛の症状が現れ始め、徐々に進行していくようです。さらに、40代以降には薄毛の範囲が一気に拡大していくとされています。
では、30代男性のうちどれくらいの人が薄毛に悩んでおり、その発症率は何%なのでしょうか?まずは、30代男性の薄毛についての基礎知識を紹介します。
30代男性の4割以上が薄毛で悩んでいる
ゴリラクリニック池袋本院が実施した「頭髪・薄毛に関するアンケート調査」では、「薄毛の症状があり悩んでいる」と回答した男性は3割以上いました。さらに、そのなかで30代男性の割合が42.3%でした。
また、薄毛に悩んでいる30代男性の中には、すでに対策を始めている人が多いというデータもあります。
株式会社アデランスが30〜70代の薄毛に悩む男性に対して行ったアンケートによると、30代男性の72.8%が日頃から薄毛の改善に取り組んでいるようです。
30代男性の薄毛の発症率
ガイドラインでは、30代男性のAGA(男性型脱毛症)発症率は20%と記載されています。年代別のAGA発症頻度は以下となっており、加齢とともに高くなる傾向にあります。
20代:約10%
30代:20%
40代:30%
50代以降:40数%
さらに、西村栄美教授1)ら東京医科歯科大学の研究グループは、毛髪の成長に欠かせない「毛包」が加齢によって矮小し、それによって薄毛を引き起こすことを国際科学誌Science(サイエンス)2)で発表しています。
つまり、30代男性はAGAによる薄毛を発症する可能性があり、年齢を重ねるにつれて薄毛のリスクも高まるといえるのです。さらに、AGA以外にも薄毛になる原因はあります。それらは以下で説明します。
1) 「組織幹細胞の運命制御と皮膚毛包の再生老化機構の研究」において、令和3年度 文部科学大臣表彰 科学技術賞を受賞。2) H. Matsumura, Y. Mohri, NT Binh. Hair follicle aging is driven by transepidermal elimination of stem cells via COL17A1 proteolysis, Science 2016, 351, aad4395.30代男性が薄毛になる3つの病気
ここでは、30代男性の薄毛の原因となる病気を紹介します。男性の脱毛はこれらの病気から起こることが多いです。
1.男性型脱毛症(AGA)
AGAは、遺伝的背景および男性ホルモンが原因で男性に現れる病態です。頭頂部や前頭部の毛髪が細く、短くなる症状が見られ、脱毛により薄毛になっていきます。
薄毛の9割以上がAGAによるものであり、30代男性の薄毛を引き起こす最大要因といえるでしょう。30代〜50代に見られるAGAは、「壮年性脱毛症」と呼ばれることがあります。
前頭部から薄毛が進行するM型や、頭頂部より薄毛が広がるO型、この2種類が組み合わさったパターンなど、AGAによる薄毛の進行パターンは個人によって異なります。
2.円形脱毛症
日本皮膚科学会の円形脱毛症ガイドライン(男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)によると、円形脱毛症は「後天性に類円形の脱毛斑を生じる疾患で、重症例では増悪・軽快を繰り返しながら脱毛斑が拡大することが多い」とされています。
円形脱毛症になると、頭髪が部分的に円形に近い形で脱毛します。脱毛した部分の面積が大きいほど重症とみなされます。
円形脱毛症は30代のみならず全年齢で発症する可能性がありますが、米国ミネソタ州オルムステッド郡での年齢と性別を合わせた調査では、円形脱毛症を発症するのは1万人あたり20.2 人(0.2%)であり、平均年齢は33歳といわれています3,4)。
部分的に脱毛が見られる方や薄毛の部分が円形になっている方は、円形脱毛症の可能性を疑いましょう。
3) 日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版 4) Safavi KH, Muller SA, Suman VJ, Moshell AN, Melton LJ 3rd: Incidence of alopecia areata in Olmsted County, Minnesota, 1975 through 1989, Mayo Clin Proc, 1995, 70, 628-633.3.脂漏性脱毛症
脂漏性脱毛症とは、脂漏性皮膚炎に起因する脱毛症のことです。鼻の周辺や頭皮など、皮脂の分泌が多いところに見られやすく、炎症や湿疹などを引き起こします。脂漏性脱毛症が悪化すると、健康的な髪の毛が生えにくくなり、脱毛を招くことがあります。
脂漏性皮膚炎は、「原因の詳細は不明だが、皮脂の異常、内分泌異常、ビタミン代謝異常、癜風菌などの感染、環境因子、ストレスなど多くの因子が関係する疾患」とされています。
本記事では主にAGAについて取り扱いますが、薄毛を引き起こすAGA以外の要因についてより詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
30代男性の薄毛を引き起こす6つの要因
薄毛になる病気を紹介しましたが、これらの病気やその他の薄毛を引き起こす要因は何でしょうか?30代男性の薄毛を引き起こす6つの要因を紹介します。
1.遺伝
AGA(男性型脱毛症)の要因の二大要素は「男性ホルモン」と「遺伝的素因」であるといわれています。それほど遺伝は薄毛に深く関与しているのです。AGAの8割は遺伝によるものという研究者もいるくらいです。
だからこそ、薄毛になりやすい家系だと薄毛を発症する可能性が高いので注意しましょう。毛成長や毛髪に関する男性ホルモン作用を専門とする皮膚科医で、後に資生堂に招かれ皮膚科学研究をリードした安達健二氏による論文では、「家系にハゲる傾向が多い人では頻繁に男性型脱毛が起きる」と説明されています。
日本皮膚科学会ガイドラインでも、X染色体上に存在する男性ホルモンレセプター遺伝子の多型や、常染色体の一部に疾患関連遺伝子が見られると、薄毛が発症するといわれています。
2.男性ホルモン
遺伝以外にも男性ホルモンもAGAを引き起こす最大要因のひとつです。男性ホルモンは骨や筋肉の発達を促進する働きがありますが、一方で前頭部や頭頂部においては薄毛を引き起こす働きがあります。
テストステロンが5αリダクターゼ(とくに5αリダクターゼII型)という酵素と結びつくことによって、ジヒドロテストステロン(DHT)が生成されます。DHTは、毛母細胞の増殖を抑制し髪の成長を短縮する男性ホルモンです。このDHTによって、髪の毛が生え変わるプロセスが乱されます。
通常、髪の毛は2年〜6年間持続する成長期、数週間続く退行期、2ヶ月〜4ヶ月間続く休止期のサイクルで成り立っています。DHTは成長期の期間をより早く、退行期・休止期に移行させるため、髪の毛が十分に成長せずに、薄毛が進行してしまうのです。
3.食事
食事は健康的な髪の毛を生み出すために重要な要素です。食事で摂取する栄養素が不十分だと、健康的な毛髪を作り出すことができません。
例えば、ミネラルの一種である亜鉛は、髪の毛に栄養を運ぶ重要な役割を担います。また、ビタミンは亜鉛の働きをサポートしますが、体内で生成されないので食事で摂取する必要があります。
普段の食事をコンビニや外食で済ませてしまう、ジャンクフードを好んで食べるという人などは注意が必要です。
4.生活習慣
生活習慣の乱れは薄毛を加速させる恐れがあります。30代は仕事や家庭などによって生活が忙しくなりやすい年代です。喫煙や睡眠不足、運動不足など、生活習慣の乱れが起こりやすい傾向にあります。
髪の毛の成長に欠かせない成長ホルモンは就寝時に分泌されるため、睡眠時間が不足していると十分に髪が成長しません。
また、喫煙や運動不足は血行不良を招くことがあります。血行不良だと髪の毛の成長に必要な栄養素が運ばれずに、髪の毛の生成が行われにくくなるのです。
5.ストレス
ストレスは髪の毛や頭皮に悪い影響を及ぼす可能性があります。株式会社マンダムのレポートによると、ストレス傾向が強い人ほど、後頭部の毛経が細く、毛穴あたりの毛髪本数が少ない、もしくは頭皮の状態が硬いそうです。
ストレスは年齢問わず生じるものですが、30代は仕事の責任が大きくなることが多いですし、子育てなどによるストレスも生じやすいといえます。30代男性の薄毛予防にはストレス対策も有効かもしれません。
6.頭皮環境
健康な頭皮環境が保てていないと、薄毛を進めてしまうかもしれません。20〜30代は、地肌の健康状態が急激に低下するといわれている年代です。30代は積み重ねてきたダメージが表面化しやすいのです。
毎日のドライヤー、紫外線など、頭皮に刺激を与え続けると、頭皮はダメージを受けて不健康な状態になります。
さらに、シャンプーや帽子、ヘルメットなどの外的要因も頭皮環境を悪化させる可能性があります。
30代男性の薄毛の前兆。こんな症状があったら要注意!
男性の薄毛を起こす可能性のある病気を解説しましたが、ではどのような症状が見られたら薄毛を疑えばよいでしょうか?ここでは、30代男性の薄毛の前兆を紹介します。
抜け毛
以前と比較して抜け毛の量が増えたという人は、薄毛が進行している可能性があります。
エスエス製薬株式会社の北史男氏らによる臨床試験によると、 AGAの40歳以下の男性(15名)を対象にした試験では、AGAを発症している男性の抜け毛の数が明らかに正常者(5名)よりも多いことがわかっています。
毎日自然に抜ける抜け毛は1日当たり50〜100本ですが、これ以上の場合には脱毛を疑いましょう。朝、枕に多くの抜け毛がついている、シャンプー時に多くの毛が抜けているなど、体感として抜け毛が増えたと感じる人は注意が必要です。
髪質の変化
髪の毛の細さや硬さなど、髪質の変化を感じている方は薄毛の進行を疑いましょう。
AGAを発症すると、毛髪が成長する期間が短くなるので、髪質が変化する傾向にあります。しっかりと成長していない髪の毛は、細くなったり、柔らかくなったりします。
日々毛髪を手で触って、毛が細くなっていないか、柔らかくなっていないか変化をチェックしましょう。
頭皮のトラブル
頭皮のトラブルは薄毛の前兆のひとつです。かゆみや赤み、フケなど、頭皮のトラブルが見られる方は、頭皮環境に問題があるかもしれず、薄毛が悪化する可能性があります。
皮脂の過剰分泌のほかに、シャンプーのすすぎ残しや紫外線、乾燥、アレルギーなど、頭皮トラブルが起きる要因は様々です。例えば、頭皮に炎症が生じると粃糠性脱毛症が起こり、大量のフケが発生し脱毛を引き起こしてしまうこともあります。
健康的な髪の毛を生み出すためには、頭皮環境を整えることが重要です。頭皮トラブルの要因に応じて、適切な対応をしましょう。
男性の頭皮ケアについては以下の記事で解説しているので、参考にしてください。
30代男性の薄毛対策
薄毛の進行を抑制するにはどうすればいいのでしょうか。ここでは、30代男性の薄毛対策方法を紹介します。
1.薬剤
男性の薄毛の要因の大きな割合であるAGAの治療では、薬剤が用いられることが多いです。内服療法と外用療法に分けられますが、これらを組み合わせることもあります。
日本皮膚科学会のガイドライン(男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)で推奨されている薬剤としては、フィナステリド・デュタステリド・ミノキシジル・アデノシンなどが挙げられます。それぞれの特徴は以下の表でご確認ください。
薬剤 | 服用方法 | ガイドラインの推奨 |
フィナステリド | 内服 | 男性型脱毛症に対する発毛効果に関して、高い水準の根拠があるので内服療法を行うよう強く勧める。 |
デュタステリド | 内服 | フィナステリドと同じく男性型脱毛症に対する発毛効果の有効性が認められ、内服療法を行うよう強く勧める。 |
ミノキシジル | 外用 | 発毛効果に関して高い水準の根拠があるので、男性型脱毛症に5%ミノキシジル、また女性型脱毛症に1%ミノキシジル を外用するよう強く勧める。 |
アデノシン | 外用 | 0.75%アデノシン配合ローションの発毛効果に関しては、 男性に対する有効性を示す十分な根拠があるため、外用療法を行うよう勧める。 |
なお、このような薬剤を個人輸入することは危険性を伴うので、内服薬や外用薬による治療を受けたい方はクリニックで検診をしましょう。
2.専門クリニック
信頼できる薄毛対策をしたい場合は、専門クリニックで治療を受けるとよいでしょう。遺伝子や頭皮、血液の検査、医師によるカウンセリングと治療薬の処方をしてもらえるので安心です。
専門知識を有するクリニックでは、症状や原因に合った治療や最先端の薄毛治療が受けられます。
例えば、薄毛・AGA治療を行っているDクリニックでは、超音波によって非接触で頭皮に振動圧刺激を与える装置が試験的に導入されています。発毛治療に使用する塗り薬と併用することで、通常よりも早いスピードでの発毛が期待できます。研究によって証明されているからこそ、高い発毛効果が期待できます。
3.栄養バランス
健康的な髪の毛を成長させるには、栄養バランスのとれた食生活が重要です。
特に髪の毛の主成分であるタンパク質、成長を促すミネラルやビタミンを摂るように心がけましょう。もちろん、一部の栄養素ばかりを摂取するのではなく、幅広い栄養素をバランス良く摂取することが大切です。
また、健康的な食生活は腸内環境の正常化や自律神経の安定化、睡眠改善やストレスの軽減など、様々なポジティブな効果をもたらします。30代の男性は栄養が偏りがちな年代だからこそ注意しましょう。
4.生活習慣
薄毛を改善するためにも、ライフスタイルを見直しましょう。睡眠不足や運動不足、喫煙、ストレスなどの不摂生な生活習慣を改めることで、薄毛を改善できるかもしれません。
また、運動を定期的に行うことで、血行促進の効果を得られますし、ストレス解消にもつながります。
生活習慣を改善するためには毎日の積み重ねが重要なので、普段から意識しましょう。
5.頭皮環境
健康的な髪の毛を生やすには、頭皮環境の改善が欠かせません。マッサージや正しい方法でのシャンプー、保湿など、頭皮状態に合わせた適切なケアを行うことが重要です。
例えば、シャンプーをしっかりと行えていないと、汚れや皮脂が十分に落ちないため、抜け毛や薄毛を引き起こす可能性があります。また、洗浄力の強すぎるシャンプーを使用すると、頭皮の潤いを保つのに必要な皮脂まで落ちてしまうため注意が必要です。
まとめ:薄毛対策は30代から!
この記事では、30代男性の薄毛の原因や対策、前兆などを解説してきました。
男性は30代になると、抜け毛が増えたり髪質が変化したりなど、薄毛の前兆が見られやすくなります。こういった前兆が見えた場合には、早めの対策を行いましょう。早めに対応することで、薄毛を改善したり薄毛の進行を抑えたりできる可能性があります。
その際には、定かでない情報を参照するのでなく、専門クリニックなどで信頼性の高い治療を受けましょう。効果の証明された内服薬や外服薬を処方してもらえますし、専門的な知識や最新技術をベースにした治療を受けられます。