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薄毛治療は保険適用になる?費用相場や自分で薄毛を改善する方法を紹介

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監修ドクター
高田弘弥
日本医科大学形成外科学教室・抗加齢予防医学講座教授 医学博士・工学博士 【略歴】京都大学大学院工学研究科,名古屋大学大学院医学系研究科修了後,イギリス・ウォーリック大学,フランス国立科学研究所へ留学,日系化粧品会社所長代理・フランス系化粧品会社マネージャを経て,2018年より日本医科大学付属病院形成外科講師,現在同教授 【受賞歴】第11回世界毛髪研究会議(国際毛髪会議)最優秀賞(口頭発表部門),バルセロナ(スペイン),2019年など

薄毛の治療や相談をしたいときに、病院を受診しようと思う人は多いと思います。その際には、薄毛治療に保険が適用できるのかどうか、治療費がどの程度かかるのか、治療費を抑える方法はあるのかなどが気になるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、薄毛治療は保険適用になるのか、保険適用になる薄毛治療とはどのようなものか、薄毛治療を病院で行う場合の費用相場を説明します。また、費用を抑えて自分で薄毛治療を行う方法についても解説します。

薄毛治療の費用はある程度かかりますが、費用を抑える方法もあります。今回の記事を参考にして、ぜひ早く開始してみてください。

薄毛治療は保険適用がされるのか?

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病院で薄毛の治療を受けるとき、保険は適用されるのでしょうか?保険適用の可否は、薄毛の症状を引き起こしている原因によって異なります。

男性型脱毛症(AGA)の保険適用

薄毛の原因としてもっとも多いのは「男性型脱毛症(AGA)」です。AGAとは男性ホルモンの関与によって引き起こされる薄毛のことで、毛髪が細く短くなったり、頭髪が頭皮に現れなくなったりといった症状が現れます。AGAは男性の脱毛の9割以上を占めると言われています1 )

薄毛の原因がAGAの場合、薄毛治療に医療保険は適用されません。これはAGAは病気やケガとみなされないからです。AGAは自由診療になり、治療費は全額自己負担となります。

1)安達 健二, 男性型脱毛–その特性と未来像. 順天堂医学. 1992, 37, 572-586.

保険が適用される薄毛治療薬

ただし、AGAの治療においても保険が適用される薬はあります。カルプロニウム塩化物を5%配合した外用薬には保険が適用されます。カルプロニウム塩化物は、血管拡張作用のある成分です。

日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」(以下:ガイドライン)2 )には、次のように記載されています。

カルプロニウム塩化物の外用での有用性は、現段階では十分に実証されていない。しかし、5%カルプロニウム塩化物は長年にわたり保険適応となっており、生薬との合剤を含むわが国での膨大な診療実績を考慮し、行ってもよいことにする。

薄毛治療に用いるカルプロニウム塩化物は十分な評価が得られてはいませんが、推奨度C1(質やエビデンスのレベルは低いが行ってもよい)の治療法なので、他の治療法に比べると効果は期待できないかもしれません。カルプロニウム塩化物には医師の処方箋が必要なので、使用したい場合は皮膚科を受診しましょう。

2)眞鍋求, 坪井良治, 板見智 他, 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版. 日皮会. 2017, 127, 2763–2777.

女性男性型脱毛症(FAGA)の保険適用

FAGAとは「女性男性型脱毛症」のことです。AGAは男性が発症する脱毛症ですが、FAGAは女性が発症します。AGAと同じく男性ホルモンの影響で毛髪が細く短くなり、脱毛を引き起こします。初期症状は髪の分け目が広がったり、抜け毛が増えたりします。

FAGAにも保険は適用されません。理由はAGAと同じで、病気やケガとみなされないからです。

保険が適用される薄毛治療

保険が適用される薄毛治療は、AGAやFAGA以外で薄毛を引き起こす病気の場合が主です。

たとえば、薄毛の原因が円形脱毛症や脂漏性脱毛症、粃糠性脱毛症の場合などには保険が適用される可能性があります。それぞれの症状は以下です。

薄毛の原因

症状

円形脱毛症

後天的に類円形の脱毛を生じる疾患で、全体に広がるケースもある。メカニズムは解明されていないものの、円形脱毛症患者の40%以上がアトピー素因を持つと

言われている

3 )

脂漏(しろう)性脱毛症

皮脂の過剰分泌が原因で起こる脱毛。頭皮環境が悪化し炎症や湿疹、フケなどが発生する。

粃糠(ひこう)性脱毛症

頭全体に乾いた細かいフケが発生して毛髪が薄くなる。皮脂の分泌によって頭皮に炎症を起こすことも。

ただ、治療法によっては保険適用外になる場合もあるので注意が必要です。円形脱毛症を例に挙げると、ステロイドや塩化カルプロニウムを用いた外用療法、アレルギー用薬やセファランチンによる内服療法は保険適用内ですが、円形脱毛症のガイドライン3 )でも推奨されているステロイド局所注射や局所免疫療法は保険適用外となります。

AGAやFAGA以外の病気だとしても、症状に対する治療法によって保険適用の可否が異なる場合があると覚えておきましょう。

3)眞鍋求, 坪井良治, 板見智 他, 円形脱毛症診療ガイドライン2017年版. 日皮会. 2017, 127, 2741-2762.

混合診療は原則禁止

ここで注意しておきたいのが、保険適用の薄毛治療と保険適用外の薄毛治療の併用は原則禁止であるという点です。

日本国内で混合診療が禁止されている理由は、厚生労働省のWebサイトによると下記の通りです。

  • 患者の経済的な負担が拡大する恐れがあるため

  • 科学的根拠のない特殊な医療の実施を助長する恐れがあるため

混合診療を行った場合、全体について自由診療(保険適用外)として整理されます。保険適用の薄毛治療と適用外の薄毛治療は混合しないようにしましょう。

薄毛治療は医療費控除の対象になるか

医療費控除とは、自分や家族のために支払った医療費の一部を課税対象額から差し引ける制度のことです。自由診療は原則として医療費控除の対象外ですが、一部、医療費控除の対象となるものがあります。

AGAやFAGAは、国税庁の「法第73条《医療費控除》関係(控除の対象となる医療費の範囲)」の「容姿を美化」「容ぼうを変える」に該当するため、医療費控除の対象外です。

ですが、AGAなど以外の円形脱毛症、脂漏性脱毛症、粃糠性脱毛症は医療費控除の対象となります。保険が適用されない自由診療も含まれます。

薄毛治療の費用相場

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ここまで、薄毛治療に保険が適用できるかを解説してきましたが、薄毛の治療にはどれくらいの費用がかかるのでしょうか?

保険適用の薄毛治療の相場

まず、保険適用の場合には原則3割の支払いとなります。こういった保険適用の場合には診療報酬に応じて請求がされますので、「別表第一 医科診療報酬点数表」などを確認してください。「皮膚科特定疾患指導管理料(I)」は250点なので2500円、「皮膚科特定疾患指導管理料(II)」は100点なので1000円ということになります(2022年5月6日時点)。

もちろん、それ以外にも治療法によって加算されることがありますし、薬剤などの費用もかかることになります。

保険適用外の薄毛治療の相場

AGAやFAGAなどの保険適用外の薄毛治療の費用の相場についても解説します。これらの治療にはいくつかの種類があり、どの治療を受けるかで費用は異なります。

ここでは、AGAの専門クリニックであるAGAスキンクリニックDクリニックなどに掲載されている費用を参考に相場を解説します。下記はあくまで相場ですので、詳しくは各医療機関にお問い合わせください。

薄毛治療法

費用相場

内服薬

約3,000〜16,000円/月

外用薬

約3,000〜16,000円/月

注入治療

約20,000〜60,000円/回

自毛植毛

300,000〜2,000,000円

LED光治療

約5,000円/回

参考:AGAスキンクリニックDクリニック横浜中央クリニック

これに加えて、病院も専門クリニックも初めて受診する際には初診料がかかります。初回受診時には、血液検査やマイクロスコープによる頭皮のチェック、頭皮撮影、遺伝子検査などを行うことが多いです。これらを行うことで、一人ひとりの薄毛の原因に合わせた治療が可能です。

AGAやFAGAは保険適用がされないので、病院の皮膚科も専門クリニックも自己負担であることに変わりはありません。ただ、専門クリニックは最新の研究をもとにした治療や最新の機器を利用できるなど、病院にはないメリットがあるといえるでしょう。

費用を抑えて自分で薄毛対策をする方法

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AGAやFAGAによる薄毛は自分でケアすることもできます。病院やクリニックでの男性型脱毛症の治療は保険が適用されないため高額になりがちですが、自分でケアすることで費用を抑えられるかもしれません。

ここでは、日本皮膚科学会によるガイドライン2)や研究結果をもとに、薄毛の改善効果が期待できるセルフケア法を紹介します。

市販薬

ドラッグストアなどで販売されている市販薬でも、薄毛を改善できる可能性があります。

薄毛治療の市販薬でよくみられるのは、「ミノキシジル」という成分を配合した外用薬です。ミノキシジルはガイドライン2)でも、「ミノキシジル外用の発毛効果に関して、高い水準の根拠があるので、男性型脱毛症に5%ミノキシジル、また女性型脱毛症に 1%ミノキシジルを外用するよう強く勧める」と記載されており、ミノキシジルを頭皮に直接塗布することで発毛促進効果が期待できます。ミノキシジルを含んだ市販薬の費用目安としては、3,000〜8,000円です。

なお、オンラインのショッピングサイトなどではミノキシジルを含んだ内服薬も販売されていますが、ガイドライン2)には「ミノキシジルの内服を行うべきではない」とあるため、服用しないようにしましょう。

頭皮マッサージ

費用を抑えて薄毛を改善するのであれば、自分で頭皮マッサージを行うのもよいでしょう。

Dクリニックの研究5)では、頭皮マッサージによって毛が太くなることを確認しています。これは、毛髪の成長をコントロールする毛乳頭へ伝わった力学的刺激が、毛周期に関与する遺伝子の発現に影響を及ぼしている可能性があるとされています。

また、アンファー株式会社と日本医科大学形成外科の共同研究では、振動圧刺激が発毛促進につながる可能性があることが示唆されています。

つまり、自分でマッサージを行い頭皮に振動圧刺激を与えることで、薄毛改善の効果が期待できるのです。なお、育毛効果が期待できる頭皮マッサージ方法は以下の記事で紹介しています。

5)Koyama T, Kobayashi K, Hama T, Murakami K, Ogawa R,頭皮マッサージが毛乳頭細胞へ物理刺激を伝え、毛径を増大させる可能性について,2016

頭皮マッサージ器

自分の手でマッサージするだけでなく、市販のマッサージ器を利用するのもよいです。

先述のDクリニックの研究5)では、市販のマッサージ器を利用したところ、マッサージ部位では24週の時点で毛径の有意な増加を確認でき、毛髪の太さが増大する効果がありました。また、マッサージ器では振動圧刺激を与えることもできます。

マッサージ器は、病院やクリニックと比べるとそこまで高額ではないため、費用を抑えたい場合は購入を検討してみてもよいかもしれません。頭皮マッサージができるマッサージ器は、以下の記事で紹介しています。

まとめ:薄毛治療の保険適用の可否で自分にあった対策を

薄毛治療の保険適用の可否は、薄毛の原因によって異なります。

AGAやFAGAによる薄毛を治療する場合は保険が適用されないため、費用は全額自己負担となります。そして、円形脱毛症や脂漏性脱毛症などその他の原因により薄毛となっている場合は、保険適用になる可能性があります。

自分の薄毛治療が保険適用となるのかを確かめるためには、まずは専門クリニックや病院の皮膚科などに相談し、薄毛の原因を突き止めましょう。

また、費用を抑えて薄毛を改善したい場合は、市販薬を利用したり自分で頭皮マッサージしたりといった方法もあります。薄毛の症状や予算を考慮し、自分に合った方法を検討しましょう。

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