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超音波

【超音波ってなに?Vol.1】いま最新の薄毛ケアは超音波!?発毛メカニズムを研究者にインタビュー

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監修ドクター
星 貴之
1980年生まれ。東京大学大学院博士課程修了。博士(情報理工学)。物理と数理を駆使する、波動制御技術の専門家。超音波技術の研究開発と応用探索に取り組み続け、非接触触覚、三次元音響浮遊、人工授粉、創傷治癒、発毛促進など超音波技術の新たな地平を切り拓く。

薄毛に悩む人が多いなか、「超音波」による発毛技術に注目が集まっています。発毛についての研究開発は今までも多くなされてきましたが、それらとは何が違うのでしょうか。

今回は、工学博士で超音波技術研究の第一人者である星貴之さんに、超音波による発毛のメカニズムや最新の研究結果、研究進捗をうかがいました。

頭皮の血流改善に薄毛対策のカギがある

ーまず、薄毛が引き起こされる一番の原因を教えていただけますか?

男性型脱毛症、いわゆるAGAはみなさんご存知ですよね? これは男性ホルモンの過剰分泌によって発毛が抑制されることが原因といわれています。そして、円形脱毛症は自己免疫疾患と呼ばれ、一般的に何か精神的なストレスによって局所的に血管が収縮し、血流が悪くなることで起こるとされています。

いろいろな考え方がありますが、私たちのチームではAGAも円形脱毛症も「最終的に血流の悪化が薄毛を引き起こしている」という仮説を支持して、研究を進めています。

実際、毛髪の1本1本には毛細血管が必ず1本ずつつながっているのです。血流のめぐりが悪いと、酸素や栄養が毛髪に届きません。酸素や栄養が届かなければ、抜け毛が起こりやすくなり発毛は滞るため、結果として薄毛になると分析できます。

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ーつまり血液の流れをよくすれば、薄毛は改善されるのですか?

そう言えると思います。ある研究で健常な人の頭皮とAGA罹患者の頭皮を比較したところ、AGA罹患者の頭皮はコラーゲン層が薄いことが判明しています。この研究からは、下地となるコラーゲン層が薄ければ血管が細くなっている可能性があるとともに、血流も悪い状態にあるのではないか、ということも読み取れるのです。

実際、薄毛の方の血管を観察すると血管が固くなって、血管を覆う皮膚もパチンと張った状態になっていることがわかるのです。血流が改善されれば、コラーゲン層も厚くなり、頭皮が緩む。これが髪にとってはいい状態であると考えるのが自然でしょう。

今注目される「超音波による発毛促進効果」

ー血流改善のためにはどんなことをすればいいのでしょうか?

一般的に言われるのは、やはり規則正しい生活ですね。バランスのよい食事を摂り、しっかりと睡眠をとること。しかし、現代社会で規則正しい生活を送るのはなかなか難しいことですから、頭皮のコンディションを整えるためのセルフケアが現実的な解決手段だと思います。

特に「超音波」を活用したスカルプ(頭皮)ケアは、私たちの研究から血流改善や発毛に大きな効果があることがわかってきました。

ー超音波でのスカルプケアですか?

そう、超音波です。そもそもの発端は、細胞が傷ついた際に元の状態へ戻ろうとする創傷治癒の促進に関わる研究でした。

これは超音波を使って血管新生と血流改善を図る点がポイントなのですが、実際に研究を進めてみると傷が早く治るだけでなく、偶然にも傷の周りから発毛が確認されました。そして、コラーゲンの生成もしっかり見られました。そこで、超音波による発毛促進の研究にも取り組むことにしたのです。

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超音波が頭髪に良い効果をもたらすメカニズム

ーなぜ超音波が発毛に良い影響をもたらすのでしょう。

超音波による1g程度の弱い刺激が、毛乳頭組織のカリウムチャネルを開口し、毛細血管を拡張して血流を改善するからです。

このカリウムチャネルは細胞膜に存在し、開閉することでカリウムイオンの移動を制御し、細胞の機能を維持しています。毛乳頭細胞の表面に存在する「KATPチャネル」というカリウムチャネルが、超音波スカルプケアのポイントです。

・頭皮にソフトな圧力刺激を与える

・KATPチャネルが開く

・毛細血管が拡がる

・毛細血管の血流がよくなり、毛乳頭に多くの栄養が届く

・毛母細胞が活性化する

このような流れで超音波での圧力が、髪を元気にしてくれます。

下図)毛乳頭細胞にあるKATPチャネル

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このメカニズムは、発毛剤外用薬のミノキシジルと変わりません。非接触で与える弱い超音波刺激とミノキシジルによって開口するカリウムイオンチャネルが、発毛促進に関わるKATPチャネルだったのです。

ーその弱い超音波刺激はどのように与えているのですか?

空中を経由して40kHzの超音波を非接触で皮膚表面に与え、反射される際に生じる圧力で皮膚を押すという原理で刺激を与えます。皮膚に超音波機器を直接当てて皮膚内部に刺激を与える美顔器などの超音波と異なり、刺激がマイルドであり、いわば「揉み刺激を非接触で与える」技術と呼べるものです。

作用の仕方が異なりますので、薄毛治療にミノキシジルの効果が実感できない方でも非接触振動圧刺激で効果を得られる可能性はあります。

ーすでに研究結果で裏付けがあるのですか?

あります。マウスだけではなく、健康な成人男性を対象に行った実験で、非接触振動圧刺激はBMP4やFGF7、FGF12といった発毛関連遺伝子の発現を促すことが確認されています。また遺伝子発現だけでなく、実際に発毛が促進される様子も観察されています。

下図)健康な成人男性における発毛関連遺伝子の相対発現量

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下図)休止期毛割合と成長期毛割合の試験前後の比較

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副作用の心配がない超音波でのスカルプケア

ーAGAの治療は投薬治療がメインだと思っていました。

その認識は正しくて、現在でもそれがメインだとは思います。ただ、薬というものは局所的に効果を狙うものなので、どうしても副作用のリスクというものは生じるのです。

しかもAGAは完治するものではないので、ずっと治療を続ける必要があります。クリニック通いは、お金の面でも時間の面でもコストがかかります。これは植毛でも同様です。頭皮のコンディションが悪ければすぐ抜けてしまうので、早いサイクルで続けなければいけません。

ー頭皮マッサージなどは超音波によるスカルプケアと同様の有効性がありそうですね。

普通の頭皮マッサージは直接振動を与えるので、細胞を壊してしまう可能性がありますね。この超音波は非接触であることがポイントです。先ほどお話したように、発毛に有効な圧力刺激は1g程度というごく微弱な力です。頭皮マッサージで正確にその力を再現するのは困難ですし、人によって力加減にバラツキもでます。

一方、超音波は発毛に効果のある弱い力を正確に与え続けることができます。その点で、より確実で再現性の高いスカルプケアが期待できます。

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ー誰が使っても同じように使えるということですね。

そうです。再現性が重要なのは、実用の場面だけでなく、非接触振動圧刺激による発毛効果を証明するための実験でも同様です。過去のマウスの実験では、時間と周波数を一定にすると、個体が違っても、ほぼ同じ発毛の成果が得られています。エビデンスの確実性も高いと考えられることができます。

細胞が備える回復機能を活性化させる超音波のスカルプケア

ー弱い刺激、という点も安心感があります。

これは私たちのチーム内でよく話題になるのですが、KATPチャネルを開口する圧力刺激はお母さんが子どもに触れる時と同じぐらいの弱い刺激と考えることができます。「手当」という言葉がありますよね。不思議なことに手をそっと当てることで細胞にそもそも備わっている回復機能が活性化するんです。細胞の活性化に必要なのは、みなさんが思っているよりも、ずっと弱い力なのではないかという仮説です。

微弱な圧力を与えるスカルプケアは、この「手当」の力を細胞に正確かつ継続して与えるのに最適だと考えられています。

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