イソフラボンで薄毛が治る?男性ホルモンとの関連は?ドクターが解説
大豆に含まれるイソフラボンは、体にいい成分として広く知られています。薄毛に効果があるという話もあります。しかし、このイソフラボンが薄毛にも効果があるという話には根拠があるのでしょうか?
日本医科大学形成外科学教室の高田弘弥先生にお話をお聞きしました。
イソフラボンで薄毛が治るという事実はない
ー イソフラボンを摂ると薄毛が治るということがありますか?
高田先生「特に科学的な根拠はないです。
イソフラボンが代謝されると、エクオールという女性ホルモンに似た物質に変換されます。イソフラボンが男性ホルモンを抑える作用があるという意味で『薄毛が治る』と言われていると思いますが、実はそのようなデータはありません。
そもそも、食べた大豆に含まれるイソフラボンを、腸内細菌によって体の中でエクオールに変換できる人は、日本人の50%ほどしかいないと言われています」
ー 薄毛予防で大豆を食べることは、あまり意味がなさそうですね。
高田先生「そうですね。大豆は比較的カロリーが高い食品ですから、摂取しすぎるのはあまり良くないと思います。日々の食事では、カロリーを摂取しすぎないよう、バランス良く食べることが大事です」
ー イソフラボンではなく、エクオール自体をサプリメントで摂取すれば、薄毛に効果がありますか?
高田先生「エクオールが薄毛そのものに効果があるという話は、一度も聞いたことがありません。まだ研究がそこまで追いついておらずデータはありませんが、実例がないので、効果はあまり期待できなさそうです。
エクオールは女性ホルモンに似た働きをするため、エクオールのサプリメントは更年期を迎える年代の女性向けに出ているものかと思います。エクオールは、更年期障害にはそれなりに効果があると聞きます。薄毛に悩む男性より、そうした年代の女性が摂取すると良いでしょう」
男性ホルモンを抑える薄毛治療について
ー そもそも、男性ホルモンを抑えると薄毛が治るという事実はありますか?
高田先生「男性ホルモンの活性化を抑えることにより、女性ホルモンに似た働きが活発になると一般的に言われています。元々のホルモンバランスにもよりますが、体毛の量が若干変わってくるというのはあり得ますね。
男性ホルモンの活性化を抑えることによって薄毛の人がいきなり発毛するとは考えにくいですが、ホルモンバランスの変化によって体や体毛は変化します。極端な例ですと、男性でも女性ホルモンの働きが強くなると乳房が膨らんでくることもあるんですよ」
ー では、薄毛治療で男性ホルモンを抑える場合もありますか?
高田先生「フィナステリドとデュタステリドという内服薬は、AGA治療で使用される男性ホルモンの活性化を抑える薬で、薄毛に効果があると言われています。日本や韓国では、薄毛治療にこの薬を使用することがあります。
しかし、薬によって男性ホルモンを抑えると、弊害も出てきます。薄毛治療で男性ホルモンの活性化を抑える際には薬を6ヶ月ほど毎日内服するのですが、人によってはED(勃起不全)になってしまう副作用が出る場合があります。
そのため、AGAのクリニックでは、薄毛治療とEDの治療を一緒にやっていくことが多いですね」
ー ED治療というのは具体的にどういったことをするのでしょ?
高田先生「レノーヴァという装置を使って刺激を与え、陰茎部の血管拡張をする治療を行うことが多いです。このような治療を薄毛治療と平行して行い、副作用を回避します」
男性ホルモンは全身に影響することを理解しましょう
ーホルモン治療は副作用についてもよく理解した上で選択するべきですね。
高田先生「ホルモンは頭髪だけではなく、全身に影響するものです。ホルモンが過剰にバランスを崩すと別の疾患が出てしまうことは少なくありません。AGAでホルモン治療をする場合、医師や看護師から、ホルモンバランスについての説明が必ずあるはずです。患者さんは、影響をよく理解した上で治療を受けていると思います」ー男性ホルモンの働きを抑える治療があるということは、男性ホルモンが多い人は薄毛になりやすいということですか?
高田先生「男性ホルモンが多いからといって必ず薄毛になるかというと、そうでもありません。男性ホルモンが多いと、薄毛に関わる酵素に影響が出やすいということはあります。そもそもこの「酵素」が少ないか多いかは、男性ホルモンとは別の話です。
男性ホルモンは、例えば筋力にはかなり大きく影響していますね。男性ホルモンが増えると筋肉が増強され、疲れにくくなることがあります。また、胸毛などの体毛が濃く生えてくるという話も聞いたりします。
日本人や欧米の男性はもともと胸毛や体毛が濃い人が多いのですが、韓国や中国の男性は体毛が薄い人が多いです。
また、元々体毛が薄いスポーツ選手がドーピング剤を使用すると、体毛が一気に濃くなってすぐにわかってしまうという話があります。もちろん、ドーピング剤の使用は日本医科大学も断固として反対していますし、世界的にも推奨されていないのですが」
ー男性ホルモンが色々な部分に影響しているとわかりました。奥深いですね。
高田先生「そうですね。ホルモンは多くても少なくても弊害がありますから、バランスが大事です」
まとめ
イソフラボンを摂ったからといって、男性ホルモンを抑える効果はあまり期待できません。そのため、薄毛の予防や治療として大豆製品を食べることに意味はなさそうです。
男性ホルモンを抑えること自体には薄毛改善効果が見込めますが、EDなどの副作用が出ることがあります。男性ホルモンを抑える薄毛治療は、専門機関にてしっかり治療方針を理解した上で選択しましょう。