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ピクシーダストテクノロジーズは、自社が持つ独自の波動制御技術の応用先として、日本医科大学、そしてアンファーとともに、超音波を用いた「非接触振動圧刺激」による発毛促進の共同研究プロジェクトに取り組んできた。
2017年から始まった共同研究プロジェクトは努力の甲斐もあり、マウスや健康な成人男性に関する下記3つの実験研究で、非接触振動圧刺激による発毛促進の効果が確認されている。非接触振動圧刺激の発毛効果エビデンスを提示する調査レポートとして、これらの実験研究をレビューする。
非接触振動圧刺激について
超音波を用いた非接触振動圧刺激は、空中に伝搬する超音波(40kHz)を皮膚に当てて振動を非接触で与え、その振動の作用で効果を得る物理的刺激である。これは音響放射圧と呼ばれる現象を利用しており、医療に応用する際には接触感染の恐れがないという利点がある。
超音波のパワーの99.9%は皮膚表面で反射され、皮膚内部に浸透する超音波は0.1%にすぎない。このとき皮膚内部に浸透する超音波のパワーは、超音波エコー振動装置の安全基準の700分の1程度しかないなど、安全性にも優れている。
なお、非接触振動圧刺激はもともと創傷治癒の研究のさなかに発見された。2017年には、革新的な医薬品や医療機器、医療技術等の創出を目指す国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)のAMEDーCREST(革新的先端研究開発支援事業、研究開発代表者・日本医科大学 小川令 教授)に採択され、先端研究開発として研究支援を受けている。
研究1 マウスにおける局所的発毛促進(左右比較)
マウスにおける発毛促進(左右比較)では、マウスの右半身だけに超音波による刺激を与えた。具体的な実験条件としては、最初の3日間で1日1時間、超音波を照射した一方、それ以降は照射しなかった。すると、右半身に超音波による刺激を与えた群は4週間後、右半身に発毛の促進が確認された。
マウスの右半身に確認された発毛促進
引用:H. Takada, Y. Osada, T. Hama, T. Koyama, K. Kobayashi, and R. Ogawa: Does hair follicular KATP channel gating by minoxidil- and/or mechano-stimulation contribute to hair growth in vivo?, 11th World Congress Hair Research, 24-27 Apr. 2019.
研究2 マウスにおける発毛促進(超音波、ミノキシジル比較)
マウスにおける発毛促進(ミノキシジルと超音波の比較)では、マウスの背中上部(頭側部1か所)にミノキシジルを塗布した群、超音波を照射した群、何もしない比較群の3群にわけ、発毛の経過を比較した。
施術を実施したのは、最初の3日間であり、いずれも1日1時間ずつ実験体のマウスにミノキシジルを塗布、超音波を照射した。4日目以降は施術しなかった。施術から4週間後に経過を観察したところ、超音波を照射した群は、ミノキシジルと遜色ない発毛効果が広範囲にわたって観察された。
ミノキシジルと超音波により確認された発毛効果
この実験研究で顕著だったのは、発毛効果だけではない。BMP4やFGF12といった発毛関連遺伝子の発現も確認されている。特に発現量が多かったのは、WISP1であり、超音波を照射した群と何もしない比較群で、約4倍の発現量に差が生まれている。
超音波を照射した群は、血流量の増大に関わるATP感受性カリウムイオンチャネル(KATPチャネル)の調節サブユニット「スルホニル尿素受容体(SUR)」の増加も促している。増加が明らかだったのは、SURに存在するSUR2Bと呼ばれる分子種であり、超音波を照射した群のSUR2Bは、ミノキシジルを塗布した群よりも少なかったものの、比較群と比べて、約4倍近く多かった。
なお、SUR2Bは、血管平滑筋や血管内皮細胞で多く発現している分子種であり、同じくATP感受性カリウムイオンチャネルの調節サブユニットであるKir6.1と並んで、発毛促進に重要な物質だと先行研究で証明されている。
この研究成果については、第11回世界毛髪研究会議で発表した。
引用:H. Takada, Y. Osada, T. Hama, T. Koyama, K. Kobayashi, and R. Ogawa: Does hair follicular KATP channel gating by minoxidil- and/or mechano-stimulation contribute to hair growth in vivo?, 11th World Congress Hair Research, 24-27 Apr. 2019.
研究3 健康な成人男性における発毛促進
健康な成人男性における発毛促進では、健康な男性11人(平均年齢25.4歳、標準偏差2.8歳)を対象に、試験内容を被験者に明かさないオープン試験法で、超音波照射部位と非照射部位の発毛度合いを測った。なお1名が途中で辞退した。
試験期間は2019年11月〜2020年3月(16週)に設定し、頭頂部の左右に径2センチの超音波照射部位と非照射部位を設定。照射部位には毎週1回、20分間、超音波を照射した。そのうえで、単位面積当たりの成長期毛割合と休止期毛割合、毛密度、毛径、毛伸長を評価した。
すると、照射群は、成長期毛が非照射群と比べて10.2%多かったほか、休止期毛が32.1%少なかった。さらに、照射群の発毛関連遺伝子の相対発現量も、FGF12とWISP1は、非照射群と比べて有意に多かった。
休止期毛割合と成長期毛割合の試験前後の比較
発毛関連遺伝子の相対発現量
本試験では、被験者11人いずれも、非接触振動圧刺激に起因すると考えられる有害事象および副作用は全期間を通じて確認されなかった。
引用:波間隆則, 高田弘弥, 長田康孝, 小山太郎, 小林一広, 星貴之, 小川令: 非接触集束超音波装置照射による毛髪変化の検討, 第26回日本臨床毛髪会学術集会, O-3, 11月6-7日, 2021.
効果
日本医科大学とアンファー、ピクシーダストテクノロジーズの発毛研究で実験的に観察されたのは、超音波を用いた非接触振動圧刺激が、ミノキシジルと同様の発毛効果を持つ可能性だ。
同様の発毛効果を持つのは、発毛促進につながる毛乳頭組織のATP感受性カリウムイオンチャネルの開口が、超音波による機械的刺激とミノキシジルによる薬剤刺激で同様に起こるためである。
実際、培養細胞は、超音波照射とミノキシジル投与刺激で異なった変形を示すものの、ATP感受性カリウムイオンチャネルはどちらの刺激でも活性化が確認されている。
ミノキシジルと超音波による機械的刺激による効果比較
ATP感受性カリウムイオンチャネルだけでなく、WISP1やFGF12といった発毛関連遺伝子が超音波とミノキシジルどちらでも発現していることも、発毛促進にとって大きい。
これらの現象は上述した「マウスにおける発毛促進(ミノキシジルと超音波の比較)」と「健康な成人男性における発毛促進」の両方の実験において確認されており、発毛促進の機序解明に向けての重要な知見であると考えられる。